中小企業もカスタムソフトを構築–クラリスのフライターグCEOが語る、ローコード開発の強み
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Claris Internationalは5月23日、ローコード開発プラットフォームの最新版「Claris FileMaker 2023」の国内提供を開始した。それに伴い来日した同社 最高経営責任者(CEO)のBrad Freitag(ブラッド・フライターグ)氏に最新のビジネス状況や技術トレンドなどについて聞いた。
同氏はまず、直近の事業概況について「期待を上回った部分と課題の大きかった部分の両方があった」と振り返る。同氏がCEOに就任したのは2019年でコロナ禍の直前だった。コロナ禍では在宅勤務やそれに伴うデジタル化が迅速に進み、需要が急上昇していた。ただ、現在は世界の経済見通しが不透明なこともあり、「より短期的な契約を選択する企業が増えている」という。
ただ、「新規顧客の獲得は順調に進んでいる」といい、プラットフォームの高度化や新しい世代のユーザーの取り込みもうまくいっていると話す。
コロナ禍は人々の生活や企業の活動に大きな変化と混乱をもたらしたが、同社の顧客はどのようなところに課題を抱えていたのだろうか。Freitag氏によると、「コロナ禍前はデジタル戦略の重要性を認識しつつも、着手できていない企業も多くあった。それが、コロナ禍での事業継続力を高めるためデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が必須となった。これは非常に大きな出来事であると考えている。その一方で、DX推進に伴う組織文化の変革や従業員の意識改革などチェンジマネジメントに大きな課題を感じているようだ」
例えば、Fortune 500に選ばれるような大企業は自社でエンジニアやデベロッパーを採用したり、専門のコンサルティング企業に外注したりするなどして、自社の要件にあったカスタムソフトを開発・構築してきた。中小企業でもそうしたカスタムソフトを手に入れることができるという気付きを得られた点がとても大きいと話す。
「われわれはローコード/ノーコードで業務アプリケーションを開発するプラットフォームを提供してきた。この数年でローコード/ノーコード開発の重要性に対する認識が高まってきた」(同氏)
経済産業省の試算によると、2030年までにおよそ80万人のIT人材が不足するといわれている。企業のデジタル活用が急速に進む一方で、それを担うIT人材の確保が喫緊の課題となっている。その解決策の一つとして、リスキリング(学び直し)というキーワードに注目が集まっている。
Freitag氏は「コンピューターサイエンスなどのバックグラウンドを持った人材であれば、自分でシステムを構築することができるが、そうでない人もリスキリングによって(デジタル活用などを通じた)組織全体の成功に貢献できるということに気付き、その可能性に取り組んでいってもらいたい」と話す。
また、リスキリングは事業に好影響を与えるだけでなく、若い世代の育成や採用にも寄与するだろうとも指摘する。
FileMakerの導入企業として、Freitag氏は日本航空(JAL)を事例を挙げた。同社は2012年にFileMakerでパイロット訓練評価システムを構築した。パイロット自身がシステムを開発し、ほぼ1年に1回のペースで大幅なアップデートを重ねながら訓練の質を上げているという。
冒頭の通り、同社製品の最新版となるFileMaker 2023が5月23日に日本で発売された。さまざまな点で機能強化が図られているが、Freitag氏はその中でも「スケーラビリティーの強化」を強調した。
FileMaker 2023は、ウェブブラウザーから利用する「FileMaker WebDirect」で最大1000ユーザーの同時接続に対応している。コロナ禍では、さまざまな自治体がFileMakerで新型コロナウイルス感染症の陽性者の管理システムを構築したが、WebDirectの同時接続数では処理し切れないケースがあったという。今後はそうしたニーズに対応できるようになる。
近年、ローコード/ノーコード開発ツールを提供するIT企業が増えている。Clarisは「問題解決に取り組む人たち、疑問を投げかける人たち、解決策を探し求める人たちのために製品を提供する」という使命を掲げており、「大企業から中小企業に至るまで安心・満足して使ってもらえる製品を今後も提供していく」とFreitag氏は力を込めた。
OpenAIの対話型AI「ChatGPT」をはじめとする生成AIが話題を呼んでおり、多くの企業や官公庁が導入を検討している。ChatGPTがローコード/ノーコード開発ツールに与える影響について、Freitag氏は「これはいわゆる大規模言語モデル(LLM)と呼ばれるAI技術であり、非常に大きな可能性を秘めている。こうした技術を使うことによって、スクリプトやコードの生成が容易になり、開発者の生産性を飛躍的に高めることができる」と話す。
加えて、「こういった技術の存在自体は受け入れているが、信頼性や説明性の面でまだ懸念も多く、注意深く評価しているところだ。ただ、経営に携わる者はこういった新しく出てきた技術によってどれだけ生産性が高まるのかということから目を背けてはいけないと思っている」との見解を示した。
最後に、日本の中小企業のDXは今後どのように進むのか、Freitag氏に展望を聞いた。
「日本の中小企業は、紙ベースの業務がとても多く残っており、DXが秘める可能性は非常に大きいと思っている。ビジネスリーダーは新しい考え方を受け入れ、パラダイムを転換する組織文化を醸成していく必要がある。特に現場の人々にはFileMakerのようなプラットフォームの存在を広く知ってもらいたいと考えている。われわれは単にプラットフォームを提供しているだけでなく、さまざまなトレーニング教材も用意している。また、日本にはおよそ170社のパートナーがおり、彼らと共にサポートしていくことも可能だ」