「われわれが保護しているのはコンピューターでなく社会」–ウィズセキュアのヒッポネン氏
今回は「「われわれが保護しているのはコンピューターでなく社会」–ウィズセキュアのヒッポネン氏」についてご紹介します。
関連ワード (セキュリティ等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
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フィンランドのセキュリティ企業WithSecureで最高リサーチ責任者(CRO)を務めるMikko Hypponen氏は、同社の年次カンファレンス「SPHERE23」で「State of the Net」と題して講演した。インターネットによって生じた変化や現在話題となっているAIについて語った。
Hypponen氏は、セキュリティ従事者としての自分の原点を忘れないようにするため、どこへ行くにも持ち歩いているというフロッピーディスクを今回も上着の内ポケットから取り出し、マルウェアの広がり方は現在と異なっていたと振り返る。
かつてのマルウェアの拡散速度は、人が感染デバイスを持って移動する速度によって決まっていた。インフルエンザや新型コロナウイルス感染症といった病気は人の移動で広がるが、1990年代初頭はマルウェアも同じで、人が移動する速度で広がっていた。しかし、その後にインターネットによる革命が起こり、全てが変わったとHypponen氏。
Hypponen氏は、2023年4月に米国で開催された「RSA Conference 2023」で9年ぶりに講演した。実は、Hypponen氏は2014~2022年のRSA Conferenceをボイコットしていたという。その理由は、当時に報じられた米国家安全保障局(NSA)と旧RSA Securityをめぐる関係性からで、2014年のカンファレンスで「マルウェアライターとしての政府」というテーマで講演を予定していた同氏は、抗議の意を示すため参加をボイコットした。
Hypponen氏は、今回のRSA Conferenceの主催者側から先日出版された同氏の著書「If It’s Smart, It’s Vulnerable」についての講演を打診されたという。RSA Securityは、EMCによる買収、DellとEMCの経営統合、その後のスピンアウトによって現在では当時と違う会社になっており、今回登壇に踏み切ったという。
同著のメインテーマは、われわれの世界を形作る技術革命で、インターネット網が電力網よりも社会にとって重要になりつつある様子について書いていた。しかし、「このメインテーマは既に時代遅れになりつつあるようだ」とHypponen氏。
「われわれは、人類史上初めてオンライン化した世代として永遠に記憶される」と同著には記されているが、それは誤りとなる可能性があるとHypponen氏は自ら指摘した。それは、急速に普及するAIのためであり、「AIはインターネット以上の技術革命であることに間違いない」(同氏)
インターネットが普及し始めた1994年当時、人々は楽観的で、「ビジネスがグローバルに展開できるようになる」「地球全体がオンラインになり、自分と同じ考えを持つ人を国境に関係なく見つけられるようになる」などの意見が大半を占めた。逆に、「インターネットが国境を超えた犯罪を可能にする」「プライバシーが失われる」「サイバー兵器やサイバー戦争が生まれるか」といったマイナス面が語られることはなかった。
そのような状況を踏まえた上で、「史上最も暑いAIの夏」を迎えている現在はどうか。同氏が読んだ記事は、新しい技術が可能性を広げるということだけでなく、多くの人を失業させる、新しいツールを犯罪者のために作り出すといったことにいずれも触れており、明確な違いがあるという。
Hypponen氏は、「OpenAIのような企業がわれわれを連れていこうとする場所にわれわれが向かうなら、プラス面は非常に大きい。他の技術革命が生み出したものよりもはるかに大きい」としながらも「技術革命は世界を形作る。良い方向にも悪い方向にも」と強調する。