新時代の採用プロセス–AIで変わる求職者の最適行動
今回は「新時代の採用プロセス–AIで変わる求職者の最適行動」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
人工知能(AI)の時代になるよりずっと前、筆者がまだ若かった頃は、求職活動は比較的単純だった。美しく作った履歴書をプリントアウトして、スマートな服装で面接に臨めばよかった。
しかし、そのような昔のルールはもう通用しない。
この20年間で、デジタル技術が求人のあり方を根本的に変えた。今では、自動化されたソフトウェア、プロフェッショナルの巨大なデータベース、ワンクリックで求人に応募できる仕組みなどが、求人と採用のプロセスを支配している。
最近就職活動を経験した人であれば、おそらく「採用管理システム」(ATS)に接したことがあるだろう。最も基本的な形態のATSは、採用担当者が職務記述書を作成し、履歴書をスキャンし、面接のスケジュールを管理するのを手助けするオンラインアシスタントとして機能する。AIが進歩したことで、雇用側は予測分析、機械学習、複雑なアルゴリズムを組み合わせて利用して、候補者を選別したり、スキルを評価したり、パフォーマンスを予想したりするようになった。今では、応募者が人事部門の人間と接触する前にATSによって不採用になることも珍しくない。
求人市場では近い将来、AIを使った採用支援ツールの利用が爆発的に増えるだろう。採用担当者は、人事予算の縮小と格闘しながら、景気の悪化やコロナ禍でリモートワークが増えたことで生じた応募者の増加に対処しようとしている。また、自動化されたソフトウェアが(多くの場合人間の監督なしに)私たちの雇用に関して重大な決定を行うようになったことで、プライバシーや、説明責任や、透明性に関する根本的な疑問が生じている。
求職者にとっては、AIを使用した採用支援ソフトウェアはブラックボックスだ。
時間がかかるオンラインでの応募プロセスに参加したのに、そのまま企業から連絡が来なくなったり、型通りの「お祈りメール」が届くこともある。テクノロジーと公平性に関する活動を行っている非営利団体Upternで、公正経済担当シニアプロジェクトディレクターを務めるMitra Ebadolahi氏は、「そのプロセスで、自分に何が起こっているかを理解している人はいない」と話す。また同氏は、それによって求職者は無力感を感じているとした。
しかし、テクノロジーが呪いになるか福音になるかは、使う人や使われ方によって変わる。キーワードの一致率を上げる履歴書作成支援ソフトウェアや、カバーレターの作成を手助けしてくれる生成AIプラットフォームなどのオンラインツールは、求職者が、自分の履歴書が人事部に積まれる「不採用」の山に回されてしまうのを避けるのに役立ってくれる。また、LinkedInやZipRecruiter、Indeedのようなアルゴリズムベースの求人プラットフォームによって、求人情報へのアクセスも容易になった。サイバー空間には、この「すばらしい新世界」に対処するための手段が溢れている。
筆者は、今後採用プロセスは完全に自動化されるのかと専門家に尋ねて回ったが、ほとんどの人は、採用活動は人間主導のプロセスであり続けると述べていた。履歴書を最適化するオンラインツールである「Jobscan」の製品責任者Ankur Chaudhari氏は、ATSに合わせて応募書類をあつらえても、入口にたどり付けるだけにすぎないと話す。同氏は、選考プロセスを、GMAT(MBAを取得できるビジネススクールに入学するための試験)のような入学試験に例えた。たとえGMATで高得点を取れたとしても、最高のビジネススクールに入学するには、そこからさらにほかの学生たちとの競争に勝ち残らなくてはならない。しかし点数が低ければ、そもそも自分の実力をアピールする機会も得られないのだ。
採用プロセスにおける求職者は、AIの有無にかかわらず常に弱者の立場にあり、ゲームのルールを知ることができたとしても、その事実を変えることはできない。しかし、有利に立ち回れる可能性はある。