日本IBMのAIビジネス責任者が語る「生成AI活用における日米のギャップ」とは
今回は「日本IBMのAIビジネス責任者が語る「生成AI活用における日米のギャップ」とは」についてご紹介します。
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本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本IBM 常務執行役員 テクノロジー事業本部長 兼 AIビジネス責任者の村田将輝氏と、日立製作所 クラウドサービスプラットフォームビジネスユニット マネージドサービス事業部 事業部長の吉田貴宏氏の発言を紹介する。
日本IBMは先頃、世界の最高経営責任者(CEO)を対象とした調査「CEOスタディ~AI時代の到来で変わるCEOの意思決定」の日本語版を公開した。村田氏の冒頭の発言は、その調査結果におけるオンライン記者説明会で、日本企業の生成AI活用における課題について述べたものである。
同調査は、IBMが世界30カ国を超える24業種3000人(うち日本は165人)のCEOを対象に、2023年2月から5月にかけてインタビュー形式で行ったものだ。その内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは村田氏の冒頭の発言に注目したい。
今回の調査の生成AIに関する内容については、北米のCEO200人を対象に別途行われたものだ。そうした限定版ではあるものの、興味深い結果が2つあったので取り上げておこう。
1つは、生成AIがもたらすと思われる潜在的な利益について。すなわち、生成AIを何に生かすかだ。結果は、図1のようになった。
「売上あるいは収益の改善」が57%でトップなのは、やはりCEOの期待はまず業績に直結するので当然だ。それにも増して興味深かったのは、最後を除いたほぼ全ての項目に対して、CEOが高い期待を寄せていることだ。それだけ生成AIに高いポテンシャルを感じているのだろう。
もう1つは、生成AIの導入によって期待される意思決定の改善点について。生成AIによって意思決定にどんな影響があるかだ。結果は、図2のようになった。
「適応性」「実行可能性」「スピード」「インサイト」といった点で、CEOは非常に高い期待を寄せているということだ。この結果に驚きはないが、生成AIによる意思決定への影響については、筆者は強い懸念がある。これについては、本サイトでの筆者のもう1つの連載「一言もの申す」の2023年6月22日掲載記事「生成AIの最大のリスクは『意思決定を委ねてしまうこと』ではないか」をご覧いただきたい。
村田氏は会見の質疑応答で「生成AIの活用における日米のギャップをどう見ているか」と問われて、次のように答えた。
「生成AIの活用に向けた姿勢については日本も大変前向きで、盛り上がっている。ただ、経営の視点から、生成AIの生産性を向上させていくために必要となるデータガバナンスや、組織として生成AIを利用する上での役割や権限の設定といった整備の面では、米国の方が進んでいるとの印象がある。私たちとしては、そうした面でもお役に立てるように尽力していきたい」
同氏は特にデータガバナンスについて幾度か言及していたので、抜粋して冒頭の発言として取り上げた次第である。
ちなみに、村田氏が常務執行役員としてテクノロジー事業本部長に就任したのは2023年初め。さらにAIビジネス責任者に就いたのは同年5月とのこと。テクノロジー事業本部は「営業、製品、ソリューションについて責任を持つ」(村田氏)という部隊で、さらにAIビジネスの責任者も兼務となれば、今後、日本IBMを率いるリーダーの一人としてメディアに登場する機会も増えそうだ。その手腕に注目していきたい。