サプライチェーンのデジタル化を促進するSAP–ビジネスやAIの展開
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SAPは、2022年に開催した年次イベント「SAP Sapphire」で、最高経営責任者(CEO)のChristian Klein氏がサプライチェーンを同社の重点領域の1つに位置付けた。デジタルサプライチェーンの最高収益責任者を務めるDarcy MacClaren氏に戦略などを聞いた。
同社は、サプライチェーン領域において2012年から購買・調達プラットフォーム「SAP Ariba」を展開し、2022年のSapphireでは、Aribaを中核に物流や設備資産などのソリューションを統合した「SAP Business Network」や、Appleとの協業によるサプライチェーンアプリケーションの開発などの取り組みを発表した。2023年のSapphireでは、昨今注目を集める生成AIへの取り組みも表明している。
MacClaren氏は、SAPに約13年在籍し、サプライチェーン領域を担当して6年ほどという。SAPの前は約25年にわたりサプライチェーンの構築や計画、調達、供給、製造、物流などに携わってきた。SAPでは、主にサプライチェーンのカスタマーサクセスをけん引し、ソフトウェア開発やマーケティングの責任者らと共にデジタルサプライチェーンの戦略を推進している。
同社がサプライチェーンを重点領域に位置付けるのは、コロナ禍や地政学的リスクなどによって世界中の企業のサプライチェーンが混乱に陥り、さらには、サステナビリティー(持続可能性)への対応も求められるようになったからだという。
MacClaren氏は、「サプライチェーンでは30年近く前から効率性の最適化とコスト削減が大きなテーマであり、長年の取り組みで改善が進んだ結果、委託先や調達先を1社に絞り込むまでになった。しかし、コロナ禍で(従来の委託先や調達先と取り引きできなくなるなどの)新たな課題が生じた。コストを最適化しつつも調達先を複数確保するなど1カ所に依存することのリスクを回避しなければいけない。また、温室効果ガス排出量の多くをサプライチェーンが占めている状況にも対処しなければならない」と指摘する。
加えて日本では、運輸・物流業界における「2024年問題」が目前に迫り、為替の円安基調に起因する海外からの調達コストも増加しているなど、サプライチェーンのさまざまな部分で解決の難しい課題が発生している。
MacClaren氏は、こうしたサプライチェーンの各種課題に対してデジタル化のアプローチが鍵になると述べる。「レジリエント(回復力に優れた)なサプライチェーンでは、顧客や調達先、供給先といったエコシステムのあらゆるものが接続されている必要があり、そこでの商慣習やビジネスプロセスといったものをデジタル化し、現実世界の環境を完全に複製した環境をデジタル空間に構築する。例えば、ある機械で障害が起きた時の対処方法といったシナリオをデジタル空間で実行することにより、実際の対応を迅速にできる。つまり、コネクテッドとデジタルツインがキーワードになる」
SAPは、デジタルサプライチェーンの戦略を「Designed to Operate」と表現する。MacClaren氏によれば、ここでは(1)サプライチェーン全体が接続された「コネクテッドプロセス」、(2)「S/4HANA」を活用した情報のコンテキスト化、(3)コラボレーション――の3つによって、計画、調達、設計、製造、物流、供給、現場オペレーションのプロセスを高度化する。