AIによって発想の転換を迫られる企業、コストカットだけでは不十分
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企業が今後も競争力を維持していくためには、人工知能(AI)を単なるコストカットのための道具だと捉えるのではなく、AIでビジネスのあり方をどう変えられるかを考える必要がある。
ITコンサルティング企業であるTomorrowの最高経営責任者(CEO)であり、未来学者でもあるMike Walsh氏は、21世紀の企業は製品やサービスの品質や価格ではなく、AIの使い方によってそのあり方が決まると述べている。Walsh氏は現地時間9月5日、シンガポールで開催されたST Engineering主催のイベント「InnoTech Conference」で講演した。
同氏はその講演の中で、未来志向の企業は、製品やサービスの構築から、データを活用した隣接する市場にも適用可能なプラットフォームの開発へと重心を移していくだろうと語った。例として挙がったのはTeslaだ。同社は、自動車の製造だけにとどまらず保険サービスの提供にも事業を拡大し、ドライバーの振る舞いに関するリアルタイム情報を活用することでサービスを差別化している。
生成AIへの関心の高まりをきっかけに、多くの企業が、データ資産の活用や、独自の大規模言語モデルの構築へと向かっている。Walsh氏は、それによって、新しいタイプの製品やサービスを支える独自のデータプラットフォームが生まれてくると付け加えた。
すでにやっていることをAIでどう速く、安くできるようになるかではなく、AIによって物事のやり方をどう変えられるかを考える必要があると同氏は言う。
AIは、スケール、スピード、持続可能性、スコープという4つの重要な分野に広く変化をもたらす。企業が事業運営を加速し、市場機会に迅速に対応できるようになるためには、そのための適切な「人材密度」やスタッフを把握しなければならない。
しかし、Google、Meta、OpenAIなどのAIベンダーが構築しているような大規模な言語モデルを動かすには、莫大なコンピューティング能力が必要になる。このような需要の増加は、データセンターが持続可能で、再生可能なエネルギー源でだけで電力を賄えるようにならなければならないことを意味している。
中でも最も重要なのは、スコープを広げることだ。もし、今やっていることを安くやれるようにすることしか考えていないようなら、可能性を見逃していることになるとWalsh氏は言う。
AIがうまく活用されればビジネスも経済も活性化するが、それによって大きな混乱が起きるはずであり、その混乱を乗り切る必要がある。
AIは、今後10年間で世界のGDPを7%(推定7兆ドル、約1040兆円)増加させると予想されている。シンガポールのJanil Puthuceary情報通信担当上級国務大臣は、Goldman Sachsのレポートを引用して、その過程では、あらゆる仕事の3分の2が何らかの形でAIによる自動化の影響を受ける可能性があると指摘した。
Puthucheary氏は、同カンファレンスの講演で、デジタル化の加速に伴ってサイバーセキュリティ攻撃も増加しており、シンガポールでは2022年に132件のランサムウェア被害が報告されたと述べている。