「学ぶ姿を隠さない」–フライヤーCEOに聞く、リスキリングの極意
今回は「「学ぶ姿を隠さない」–フライヤーCEOに聞く、リスキリングの極意」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、トップインタビュー等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
「リスキリング」という言葉が浸透して久しいが、実際に取り組んでいる個人や企業は多くない。ベネッセホールディングスが2023年7月に発表した調査によると、リスキリングの必要性を感じている⼈は全体の約56%である一方、実際に取り組んでいる⼈は約10%にとどまっているという。
個人や企業に新たな可能性をもたらすリスキリングだが、「言うは易く行うは難し」ともいえる。ビジネス書を要約する法人向けサービス「flier business」などを展開するフライヤーで代表取締役CEO(最高経営責任者)を務める大賀康史氏に、リスキリングに必要なマインドセットや現在主流の研修プログラムがはらむ危うさ、学び続ける極意を聞いた。
–日本におけるリスキリングの課題を教えてください。
問題の本質として「変化する就業環境に多くの個人や企業が追い付いていない」ということがあります。従来日本では「学生時代まではしっかり勉強し、社会人になったら入社時や昇格時に研修を受け、それ以外の期間は仕事に集中する」というスタイルが一般的でした。その背景には、離職率がそこまで高くなく、一度入社したら長く勤められたことがあります。
しかし近年、こうした就業環境は変わってきています。企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化しており、「リスキリング」という言葉がはやり始めました。一方、リスキリングやアップスキリングに対する個人や企業の姿勢はあまり変化していないといえます。
日本の経営者の方々は「人こそが全てです」「人が競争力の源泉です」などと言いますが、人材育成への投資規模は海外の主要な国々と比べると依然として小さいです。多くの企業では、社会人の学習を「余暇にやるもの」と見なしており、「仕事をしながらやり続けなければいけないもの」という感覚をあまり持っていません。企業のバックアップがないと、従業員が自律的に学ぶのは難しいでしょう。
–リスキリングを浸透させるには、どのようなマインドセットが必要なのでしょうか。
個人と企業それぞれに、求められるマインドセットがあります。個人に関しては、何を学ぶかの正解を探すのではなく「学び続けること」が重要だといえます。現代社会では、出題傾向を踏まえて学習単元を一通り学べば、ある程度の合格点が取れるわけではありません。
そのため、個人がその時々で必要性を感じたり、興味を持ったりする領域に点を打っていく(アプローチしていく)ことをおすすめします。社会人として役立つ知識やスキルにはつながりがあるので、打っていった点はいずれ面になるでしょう。
一方企業は、従業員が自身の興味関心を追求できる環境を提供すべきです。現在は「DX」など一つのテーマで人材育成を行う動きがありますが、個人的には危ない傾向だと思っています。もちろんデジタルに関するスキルは大事であり、当社もディープラーニングの資格取得支援制度を実施していますが、イノベーションを起こす上では不十分だといえます。
「イノベーションは個々の強みの掛け合わせで生まれる」といった近年の考えには多くの企業が同意していますが、人材育成の取り組みとなると依然として“金太郎あめ”のようなものを作っている印象があります。自身の興味関心を深掘りする方が固有の人材になれるので、結果として本人が輝くはずです。企業はそうしたことができる場を提供することが重要でしょう。
–企業にとって、従業員が各自の興味関心を深掘りする研修は、型の決まった研修と比べて効果を実感しづらいのではないでしょうか。
人材育成への投資における難しさは効果が表れないことではなく、効果が表れるまでに時間がかかることです。何かを学んで無駄になることはないですよね。ただ、学んだことを生かして仕事で成果を上げる瞬間が訪れるまでには、場合によっては2~3年かかります。
企業側には、その期間を長引かせない工夫が求められます。研修を行った時、最初に変わるのは「心の持ちよう」だと言われています。心の持ちようが変わり、自律的な活動や創造的な思考が促され、成果につながっていく――。企業はこの中間指標を押さえることが大事です。
先に述べた通り、投資への効果を実感するには3年ほどかかるケースがありますが、3年後の準備ができない企業に長期的な発展は見込まれません。人材育成は、それぐらいの時間軸で取り組まなければいけないと思います。