HashiCorpのライセンス変更–意図や影響を製品マーケティング担当幹部に聞く

今回は「HashiCorpのライセンス変更–意図や影響を製品マーケティング担当幹部に聞く」についてご紹介します。

関連ワード (ソフトウェア等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 HashiCorpの共同創業者で最高技術責任者(CTO)を務めるArmon Dadgar氏は8月、今後リリースされる同社製品で適用されるライセンスを「Mozilla Public License v2.0(MPL 2.0)」から「Business Source License(BSLまたはBUSL)v1.1」に変更するとブログ投稿で発表した。今回の変更について、同社で製品マーケティング担当バイスプレジデントを務めるMeghan Liese氏に話を聞いた。

 変更理由について、Liese氏は、「われわれにとって重要なことが2つある。オープンな開発によりコミュニティーに参加している人たちがHashiCorp製品で使われているコードを見られるようにすること。そして、個人的または組織内での使用のためにダウンロード可能にすること」と前置きした上で、「このような方法で継続的に提供するサービスと自社の企業としての現状を評価したとき、ある種の人たちに対してガードレールをある程度の設ける必要があることに気づいた」と説明する。

 Liese氏の指す人たちは意図しない方法でコードを利用しており、その行為の典型例として、HashiCorpのコミュニティープロジェクトの上に製品を構築するが、サポートやバグ修正、メンテナンスについて責任を負わず、その一方で利益を得ているという。「彼らは巨大なコードベースを手に入れることになるが、それを管理するようなコミットメントをすることはない。開発やメンテナンス、バグ修正の必要がなく、サポートする必要もない。HashiCorpが書いたドキュメントをコピーすることもある。基本的に、HashiCorpが行ってきた仕事の多くを利用している」(同氏)

 このような傾向を見た上で、事業の将来を守り、コミュニティーへの投資を可能にするため、今回の変更に踏み切ったという。

 BSLを選んだ理由としては、他のライセンスに比べて許可上の制約が少ないためだという。BSLはユースケースに多くの柔軟性を与えていることから、コミュニティーやパートナー、顧客にとって大半のユースケースで問題ないとLiese氏。

 これについて、HashiCorpは「個人の愛好家や技術者なら誰でも利用可能で、好きなことができる。われわれの顧客やパートナーなら誰でも社内で好きなように使うことができる」と説明する。ただし、それをパッケージ化して自分たちのものとして販売はできない。とはいえ、「入手したものをベースに構築するといった使用例の99%は、今でも可能。そのため、オープンソースでなくても、オープンソースに最も近い」(同社)。

 例えば、年次カンファレンス「HashiConf 2023」の基調講演に登壇して事例を紹介したThe Home DepotやUnity Technologiesはオープンソース版の利用から始め、その後、「Terraform Enterprise」などの商用版へと移行している。両社は、小規模なサービスをTerraform上で幾つか構築し、社内向けに提供していたと考えられるとLiese氏は述べ、今後も同じことを継続できるとする。

 変更を発表するブログ投稿では、HashiCorpが懸念する行為について、「ベンダーによっては、純粋なOSSモデルやOSSプロジェクトに関するコミュニティーの取り組みを自社の商業的目標のために利用する一方で貢献をしないという場合もあり、これはオープンソースの精神に反する」とするものの、具体的な例を示す記述がなかった。これについて、そこに焦点を当てることが投稿の目的ではなかったためとLiese氏は述べる。

 コミュニティーメンバーや顧客、パートナーに対し、今回の変更から受ける影響は何もないことを知ってもらうことが目的だったという。「これは、われわれが成長して規模を拡大するにつれて、会社としてやらなければならないことではある。しかし、われわれがコミュニティーメンバーやみんなにとって正しいことを続けていることを知ってほしかった」とし、それがコミュニケーションにおける焦点だったと同氏は強調する。

 その一方で、コミュニティーの多くのは影響を受けないことについて、同ブログ投稿やそれに付随するFAQによって説明されているにもかかわらず、懸念を示す声もある。

 「変化というのは誰にとっても混乱するもの」とLiese氏。多くの顧客は、同社に連絡を取り、使用方法を明確にすることで、影響がないことを確認しているという。また、顧客は事態が飲み込めれば、何も影響がないことを理解するという話もアナリストから聞いていると続ける。

 コミュニティーは協力的だという。HashiCorpにはコミュニティーチームがあり、さまざまな組織と連携しているが、今回の変更について否定的なフィードバックを受けることはあまりないとLiese氏は明かす。「全体的に見れば、われわれはパートナーと協力しており、概ね同意を得ている。顧客は影響を受けておらず、コミュニティーメンバーも影響を受けていない」(同氏)

 今回の変更が他のサービスへの乗り換えを検討させるきっかけとなった可能性について、Liese氏は、ダウンロード数の伸びについて言及する。9月にはTerraform史上最高のダウンロード数を記録したことから、開発者やプラクティショナーのコミュニティーへの影響はないとの見方を示した。

 コミュニティー版のダウンロードが与える経験がものを言うとLiese氏は指摘する。「ダウンロードすれば、いつものように機能し、新機能を手に入れることができる。『これは素晴らしい』とユーザーは思うだろう。『ライセンス変更は自分たちには無関係だった。素晴らしい機能をHashiCorpから今後も得られる』と考えるだろう。これは彼らにとっての勝利だ」(同氏)

(取材協力:HashiCorp)

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