第2回:オブザーバビリティが示す「共通指標」「共通言語」

今回は「第2回:オブザーバビリティが示す「共通指標」「共通言語」」についてご紹介します。

関連ワード (組織のデジタル競争力向上にオブザーバビリティが果たす役割、開発等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 前回は、日本企業のデジタルサービスやDXが大きな成果を生み出せていない現状とその背景を解説しました。第2回では、エンジニア(IT部門)と非エンジニア(経営者・業務部門)が緊密に協力し、開発エンジニアと運用エンジニアが優れたチームプレイを発揮するために、「オブザーバビリティ」がどのように貢献できるのか事例を交えて紹介します。

 オブザーバビリティは「可観測性」と訳される通り、システムを構成するインフラやアプリケーションの詳細な状態、加えてユーザーによるデジタルサービスの体験までをも網羅的にリアルタイムに可視化できるテクノロジーです。もし、ユーザー体験に悪影響を及ぼすような不具合や遅延が発生したり、その予兆があったりすれば即時に検知して原因を特定できます。

 ここまで読んで「システム監視ツールか」と思う方もいらっしゃるかと思いますが、オブザーバビリティにはさらに大きな役割・ポテンシャルがあります。エンジニアではない経営者や業務部門にも、非常に有益な情報を提供できるのです。

 オブザーバビリティから得られるビジネスデータとテレメトリーデータ(メトリクス、イベント、ログ、トレースから成る観測データ)の相互関係は、エンジニア(IT部門)と非エンジニア(経営者・業務部門)が、自社のデジタルサービスについて理解を深めるための「共通指標」として活用できるものです。ユーザー体験を定量的に評価し、サービス品質の改善を議論するための「共通言語」さえあれば、エンジニアと非エンジニアの境界を越えたコミュニケーションは難しくありません。

 例えば、デジタルサービスを主管する事業部門は、「もっとレスポンスを良くしたい」「より安定したシステムにしたい」といった感覚論でなく、「95%のユーザーが1秒未満で画面を表示」「レスポンスのエラー率0.1%未満」のように、具体的なシステム改善目標をIT部門と議論できるようになります。

 ぐるなびでは、月間4100万のユニークユーザーが利用する「ぐるなび」のサービス基盤を2022年に刷新しました。これと歩調を合わせてDevOpsを強化するとともに、開発チームが中心となって事業部門との連携をリードする体制に移行。非エンジニアを含む全従業員1600人(2022年時点)が、オブザーバビリティの観測データを参照できるようにしました。

 サービス機能の強化や性能改善を重視する事業部門と、システム運用を安定化したいIT部門では意見の相違が起こりがちです。ぐるなびでは、オブザーバビリティが示した観測データを共通指標・共通言語として利用することでBizDevOps三者の相互理解を図り、顧客目線に立った問題解決やサービス改善への取り組みを進めています。

 一方、エンジニア/IT部門の立場では、オブザーバビリティから得られるシステム稼働率やレスポンスの観測データ、サービスレベル指標/サービスレベル目標(SLI/SLO)のスコアなどを評価し、根拠を持って事業部門と共にシステム投資計画を検討できます。また、デジタルサービスに追加された機能の利用頻度や、機能追加によるパフォーマンス影響などを把握しつつ、顧客サービスを改善するための議論も可能になります。

 家具・インテリアのECサイト「LOWYA」を展開するベガコーポレーションでは、バックエンド、フロントエンド、アプリ、インフラの各エンジニアが参加する「パフォーマンス定点観測会」を実施しています。ここでは、LOWYAでの流通取引総額などビジネス重要目標達成指標/重要業績評価指標(KGI/KPI)の達成に向けて、オブザーバビリティによる観測データを活用したユーザー体験の改善策が活発に議論されています。

 これらの事例からも分かる通り、「非エンジニア(経営者・事業部門)がITから得られる情報の価値を正しく捉えてIT部門と連携」すること、「エンジニア(IT部門)が顧客視点を持ってサービス改善とシステム最適化に臨む」ことには、極めて大きな意義があります。オブザーバビリティが示す観測データが共通指標・共通言語となり、エンジニアと非エンジニアのコミュニケーションを円滑化することで、デジタルサービスの成長、DXの成功という目標に向けて一丸となって取り組むことができるのです。

 次回は、オブザーバビリティが、エンジニア/IT部門の変革と価値向上にどのように寄与するのか、ここでも事例を交えて紹介していきたいと思います。

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