「物流の2024年問題」迫るも、帳票類の授受は紙多数–インフォマート調査

今回は「「物流の2024年問題」迫るも、帳票類の授受は紙多数–インフォマート調査」についてご紹介します。

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 インフォマートは12月12日、物流業界で働く人々を対象に実施した「物流の2024年問題」に関する実態調査の結果を発表した。これによると、帳票類の受け渡しについて約半数が「全て紙」と回答し、紙文化が根強く残っていると分かったという。

 同調査は2023年11月2~9日、総合物流/道路貨物運送/倉庫業の従事者を対象に、インターネットリサーチで実施した。回答者は404人。

 2024年4月から「自動車運転業務」の時間外労働時間の上限が年間960時間に制限される。加えて、改善基準告示の改正への対応により、ドライバーの拘束時間や休憩時間の基準がより厳しく制限されることになった。こうした問題は「物流の2024年問題」と呼ばれており、運送業界は運賃交渉や労務管理への対応に追われている。そこでインフォマートは、IoTや運行システムなどに埋もれて見過ごされがちな物流業界における紙の書類の現状などについて調査を実施した。

 同調査では、物流の2024年問題について聞いたところ、「知っており、内容を十分理解している」と回答した人は、運送業(総合物流と道路貨物輸送)で33.9%、倉庫業(総合物流と倉庫)で34.8%だった。「知っており、ある程度の内容は理解している」までを含めると業界全体で7割以上が「物流の2024年問題について内容を理解している」という結果となった。

 2024年4月から適用される「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(通称:改善基準告示)については、「知っており、内容を十分理解している」と「知っており、ある程度の内容は理解している」を合わせた数字は、運送業が47.2%、倉庫業が45.7%にとどまっており、過半数の回答者が内容を十分に把握していないと分かった。

 物流の2024年問題において抱えている課題について、運送業では「労働時間の管理方法の見直し」(49.7%)、「従業員の収入減少」(40.6%)、「従業員の離職」(37.4%)の順に多かった(図1)。倉庫業では、「運賃の値上げ・配送コストの増加」(47.1%)、「荷役作業など、倉庫内作業負担の増加」(31.1%)、「運送会社との交渉・契約の見直し」(30.6%)、「燃料や資材高騰などのコストアップ」(同)だった。

 物流の2024年問題に関連する対策について現在取り組んでいるものについて聞くと、運送業では「値上げ交渉」(33.5%)、「荷役・荷待ち時間の交渉」(22.6%)、「給与形態の見直し」(21.3%)、「輸送方法そのものの見直しや変更(モーダルシフト)」(21.3%)の順に多かった(図2)。ドライバーの稼働時間が短縮され、2023年4月から時間外労働の割増賃金率が一律50%になったことなど、人件費の増加により物流コストが上がることへの対策に焦点が当たっているとインフォマートは推察する。

 一方、倉庫業での対策は「荷役・荷待ち時間の見直し」(34.5%)、「荷主や運送業者との料金交渉」(28.6%)、「輸送方法そのものの見直しや変更(モーダルシフト)」(22.8%)だった。

 倉庫業は、基本的にドライバーを抱えるのではなく倉庫貸しによって稼ぎを得るビジネスモデルのため、いかに物流を効率化するかに焦点が当たっていると考えられる。物流企業のコスト増を見込み、荷主や運送業者との料金交渉を始めている様子もうかがえたという。

 各帳票の受け渡し方法について聞いたところ、運送業は請求書の47.7%、納品書の52.9%が「全て紙」と回答した。倉庫業は、請求書の41.7%、納品書の43.9%が「全て紙」だった。業界内で根強く紙文化が残っており、現場業務を圧迫しているとインフォマートは指摘する。

 紙の書類を電子化している企業に対して効果を聞くと、運送/倉庫業ともに約8割の回答者が電子化による何らかの効果を実感していると分かった(図3)。運送業では「現場業務の効率化」(32.9%)、「セキュリティの強化」(31.4%)と「事務業務の効率化」(30%)の順に多かった。

 倉庫業では「印紙や郵送代などのコスト削減」(40.2%)、「事務業務の効率化」(38.2%)、「残業時間の削減」(31.4%)と続く。業務が効率化するだけでなく、印紙代や郵送代といったコスト削減にも貢献していると分かったという。

 インフォマートは調査結果を振り返り、運送業の帳票類の受け渡しは半数近くが「全て紙」で、「紙と電子化が半々程度」も併せると7割近くになると指摘する。バックオフィス部門だけでなく店舗配送(SD)や倉庫管理などの現場も書類作成業務に時間を取られており、現場業務の非効率につながっているといえる。

 同社は、帳票類を電子化できない主な理由として、取引先やパートナー企業が紙で行っていることを挙げ、小規模な事業者ほど対応が難しいのが現実だとする。しかし、電子化を進めた企業の多くは効果を得ており、中でも「現場業務の効率化」「残業時間の削減」「コスト削減」という効果を実感していた。

 帳票の電子化は、物流の2024年問題への対応策の中でも、比較的取り組みやすいテーマだとする。今後、大きな課題になると世の中で叫ばれる「輸送能力の減少」も、帳票電子化による業務効率化で解決につながることが期待される。

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