CIOやIT部門が直面しているITの拡張、役割と変化とは–ガートナー・長谷島氏
今回は「CIOやIT部門が直面しているITの拡張、役割と変化とは–ガートナー・長谷島氏」についてご紹介します。
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企業が対応すべき課題がビジネス以外にも広がり、そこでもテクノロジーが必要とされる現在。CIO(最高情報責任者)やIT部門の役割や期待も大きく変わってきている。これからの時代にCIOやIT部門はどうしていくべきだろうか。ZDNET Japanの人気連載「ITアナリストが知る日本企業のITの盲点」でアナリストとの対談を重ねてきたガートナージャパン エグゼクティブ プログラム シニアアドバイザー エグゼクティブパートナーの長谷島眞時氏に尋ねた。
ソニーのCIOからガートナーのキーマンとして長年にわたり日本企業のITのリーダーたちをサポートしている長谷島氏は、現在と将来におけるCIOやIT部門の姿、ITマネジメントの在り方を語ってくれた。前編の本稿では、CIOやIT部門を取り巻く変化を深掘りする。
–IT業界に関するガートナーの将来予測は、常に一貫性があると思います。業界の現在地を捉まえ、数年先、数十年先に向けてどう変化していくのかという“指針”を提示しています。
長谷島:私もそう思います。アナリストに聞くと、同じ領域を長く定点観測していれば、将来がだいたい分かると。ガートナーは、相当にインテリジェンスをつぎ込んでいますから、将来予測の精度が高いのです。私も長らくそうしてきましたが、ガートナーの見解を受け取る側がその情報を得てどうするのかがポイントです。つまり、どういうアクションにつなげるのか、知識だけが増えても何もなりません。見解を基にアクションを起こし、何かしらの成果を生み出していくことが価値だと思います。
私はいま、「知る」ことと「アクションをする」ことの間に大きな障壁があると感じます。企業は、漠然とテクノロジーの進化に圧倒されて体が硬直し、身動きがなかなかとれない、あるいは現状の足かせがあまりに重く、アクションを取ろうにもリソースが足りないといった状況に置かれているように見えます。
–CIOは、自社の最適化といった「守りのIT」や収益などのための「攻めのIT」に加え、生成AIのようなテクノロジーがもたらす世界や社会の大きな変化にも目を向けなければならず大変です。
長谷島:最近まで、デジタル化には「最適化とイノベーション」があると言われ、この2つは、ビジネスのパフォーマンスや競争力の問題といった領域を軸に捉えられてきたように思います。しかし、デジタル化の話がウェルビーイングや幸福、サステナビリティー(持続可能性)、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出の実質ゼロ化)、働き方といった領域にもどんどん拡張し、従来の分かりやすいビジネスの目標を超えたところも視野に入れなくてはならなくなって来ていると思います。
企業にとって、そうしたこれまであまり注力してこなかった領域がより重要性を増してきているということです。「良い会社とは何ですか?」と問われれば、売り上げや利益を出しているところが必ずしも良い会社というわけではなく、その会社の事業の正当性や方法の妥当性、働いている人々のウェルビーイングなども大切にしていく、こういった課題に“or”、つまり、選択の問題として取り組むのではなく、“and”としてどちらにも取り組んでいかなくてはならない。幸か不幸か、その両方にテクノロジーが密接に関わってきています。では、そのテクノロジーの担い手が誰なのかとなれば、CIOは「ビジネスの方は該当しますが、それ以外は関係ありません」とは言えないわけですよね。まさに、そのようなCIOの役割の変化に対応していく明確な戦略や方向性を打ち出す時代が到来したといえますね。