日本の行政や企業は「AIのガバナンス欠如」に目を配れ
今回は「日本の行政や企業は「AIのガバナンス欠如」に目を配れ」についてご紹介します。
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生成AIをはじめとしたAIの動向は、2023年に続いて2024年も大きな注目を集めそうだ。だが、メリットや可能性だけでなくリスクもしっかり捉える必要がある。そうした観点から、興味深い調査レポートを目にしたので、今回はその内容を基にAIのリスクについて考察する。
その調査レポートとは、国際政治学者のIan Bremmer(イアン・ブレマー)氏が率いる米調査会社Eurasia Group(ユーラシア・グループ)が1月8日に発表した2024年の世界の「10大リスク」のことだ。その内容は以下の通りである。
本稿では4番目にランキングされた「AIのガバナンス欠如」に注目した。同レポートではこのテーマをランキングした理由について、次のように述べている。
「AIのガバナンス欠如の問題が2024年には明らかになるだろう。規制当局の取り組みが頓挫し、ハイテク企業はほとんど制約を受けないままであり、はるかに強力なAIモデルやツールが政府のコントロールを超えて普及するだろう」
そして、2024年におけるAIガバナンスの不足をもたらす要因として、「政治」「惰性」「離脱」「技術スピード」の4つを挙げ、それぞれ以下のように説明している。
まず、政治については、「ガバナンス体制が構築されるにつれ、政策や制度上の意見の相違によって、達成できるものが低く抑えられることになる。各国政府が政治的に合意でき、しかもテック企業が自社のビジネスモデルの制約とみなさないものであることから、AIのリスクに対処するのに十分なものは策定できないだろう」との見方を示した。
すなわち、各国の政策や制度上の意見の相違がAIガバナンスの足かせになるということだ。
惰性については、「政府の関心には限りがあり、AIが現在の話題でなくなれば、ほとんどの指導者は戦争や世界経済など、政治的にもっと重要な他の優先課題に移るだろう。その結果、AIガバナンスの取り組みでどれが緊急を要してどれが優先されるべきかという決定の多くは、道半ばで頓挫してしまうだろう」とのことだ。
これは、AIガバナンスへの取り組みが中途半端なまま、その取り組みへの関心が低くなっていくことを憂慮したものと見て取れる。
離脱については、「AIの最大のステークホルダーたちはこれまでAIガバナンスに協力してきた。テック企業が自主的な基準やガードレールをつくることを約束してきたのだ。しかし、テクノロジーが進歩し、その莫大な利益が明白になるにつれ、地政学的な利点や商業的利益の誘惑が強まり、政府や企業は、自らの利益を最大化するために参加した拘束力のない協定や体制から離脱する、あるいはそもそも参加しないようになる」と見ている。
これは、AIを制することの影響力の大きさが明らかになってくればガバナンスは一層難しくなることを示唆した指摘だと受け取れる。
技術スピードについては、「AIはムーアの法則の3倍の速さで、およそ半年ごとに能力を倍増させ、急速な進歩を続けるだろう。OpenAIの次世代大規模言語モデル(LLM)である『GPT-5』は今年登場する予定だが、何カ月か経てば、まだ想像もできない次のブレークスルーによって陳腐化するだろう」との見方を示した。
この点については、技術革新の速さに人間が追いつけなくなることを危惧したものと、筆者は受け取った。