インテルのニューロモーフィックシステム「Hala Point」–1秒間に2京回の演算処理
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第2世代の「ニューロモーフィック」コンピューターチップの発表から3年後、Intelは米国時間4月17日、このチップを1152基内蔵した単一の並列処理システム「Hala Point」を、米エネルギー省のサンディア国立研究所と協力して構築したと発表した。
Intelは、Hala Pointシステムの1152基の「Loihi 2」チップにより、合計11億5000万個の人工ニューロンと、「14万544個のニューロモーフィックプロセッシングコアに分散された1280億個のシナプス」が実現するとしている。その数はIntelの以前のマルチチップLoihiシステムから増加しており、2020年登場の「Pohoiki Springs」に使われていた「Loihi 1」チップはわずか768基だった。
サンディア国立研究所が意図しているこのシステムの用途は、同研究所が「ブレインスケールコンピューティングの研究」と呼ぶものであり、デバイス物理学、コンピューターアーキテクチャー、コンピューターサイエンス、インフォマティクスの分野の問題解決に役立てたい考えだ。
「標準的なディープニューラルネットワークをマッピングして、ニューロモーフィックシステムにおいてこれだけの規模で実行可能な形式に変換できることを、今回初めて示した」。IntelのNeuromorphic Computing Labを統括するMike Davies氏は米ZDNETにこう語った。「標準的なディープニューラルネットワークが、多少の注意点はあるものの、現在製造されている最高のGPUやASIC(特定用途向け集積回路)に比肩する効率で実際に実行できることを示すというのは、誰にとっても初めてのことだ」
ニューロモーフィックコンピューティングとは、脳の構造の一部を再現したコンピューティングの構築を目指す多様な取り組みの総称だ。この用語の起源は、コンピューティングの先駆者として名高いCarver Mead氏の1980年代初頭の研究にまで遡る。Mead氏は、チップ上のトランジスターの高密度化が進む中で、どのような方法での情報伝達が最適かという点に関心を持ち、トランジスター間の配線が脳の神経配線の効率をある程度再現する必要がある、と考えた。
それ以来、多数のプロジェクトが実施されている。たとえば、サンノゼにあるIBMのAlmaden Research CenterのWinfried Wilcke氏による研究や、IBMの「TrueNorth」チップへの取り組み、そしてIntelのLoihiプロジェクトだ。米ZDNETに寄稿するScott Fulton III氏が、ニューロモーフィックコンピューティングにおける非常に興味深い進展を素晴らしい記事にまとめている。
多くのニューロモーフィックチップは、脳のニューロンの非同期「スパイク」を再現する方が、何十億ものニューラルネットの「重み」または「パラメーター」を使用してすべてのデータポイントを繰り返し変換するアプローチよりも効率的である、ということを前提としている。
Intelはニューロモーフィックコンピューティングで主に「エッジ」コンピューティングデバイスに力を入れてきた。これは、「Xeon」クラスのマシンではなく、組み込みプロセッサーを搭載した軽装のサーバーコンピューターなどのことだ。
Hala PointマシンはDavies氏とチームによる取り組みであり、ニューロモーフィックをどこまで拡張できるか探ることを目的としている。
「基礎科学レベルでは、スケールアップに関して非常に興味深い長期的ビジョンがある」とDavies氏。「誰もが思い浮かべるのは、人間の脳のスケールだ。その大きさのシステムを構築して、人間の脳に近いことを実行できると示せるなら、素晴らしいと思う」。人間の脳には1兆個のニューロンがあると考えられているが、必ずしもそのすべてが同時に機能しているわけではない。
規模の拡大は、ニューロモーフィックコンピューティングの可能性を明らかにするうえで重要かもしれない。OpenAIの「ChatGPT」などの大規模言語モデルが、ニューラルネットモデルの規模拡大やコンピューティング予算の増加に伴い、いわゆる「創発的」能力を獲得するように、「同様のスケールメリットとトレンドがニューロモーフィックシステムでも見られるようになると考えている」とDavies氏は述べた。