生成AIでクラウド基盤サービスの拡大を目論むGoogle Cloudの戦略とは

今回は「生成AIでクラウド基盤サービスの拡大を目論むGoogle Cloudの戦略とは」についてご紹介します。

関連ワード (CIO/経営、松岡功の「今週の明言」等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、グーグル・クラウド・ジャパン 日本代表の平手智行氏と、Mendix, a Siemens business CEOのRaymond Kok氏の「明言」を紹介する。

 米Google Cloudの日本法人グーグル・クラウド・ジャパンは8月1~2日、年次イベント「Google Cloud Next Tokyo ’24」をパシフィコ横浜で開催した。平手氏の冒頭の発言はその初日の基調講演で、ビジネスの現場でのAIの利用形態が変化していることを述べたものである。

 「ビジネスの現場でAIの活用が進み、今後もこの動きは加速していく。その中心にある生成AIは日々進化しており、その最新機能をフルに使うためにはそれにふさわしいインフラが必要だ。Google Cloudのリージョンは世界中に着実に広がっており、現在40拠点に拡大している。そして、それらをつなぐ全長320万kmを超える巨大なネットワークにより、高性能で高信頼のクラウド基盤を実現している。このクラウド基盤によって、皆さまの大切なデータを安全かつ最短の遅延時間でリージョン間を伝送させることができる。これにより、リージョン間をまたがってデータを統合するという大きなメリットを享受していただくことができる」

 平手氏は、基調講演でこう切り出した。そして、次のように続けた。

 「Googleは日本をデータのハブと位置付け、日本と北米、アジアを結ぶ5本の海底ケーブルの開通を計画している。さらに、約1500億円を投資して新たに2つの海底ケーブルを構築することも発表している。これによって、日本が世界のデジタル経済とますます高速につながることが可能になる」

 同氏は、Google Cloudのビジネススケールの大きさについてこう紹介した。つまりは、「生成AIをフル活用するならGoogle Cloudのクラウド基盤で」とのアピールだが、久しぶりにスケール感を聞いたので、書き記しておきたい。

 生成AIについては、「2023年末に大規模で高性能な生成AIの基盤モデル『Gemini』を発表した。最新版の『Gemini 1.5 Pro』は大容量のコンテキストを扱えるのに加え、画像、動画、テキスト、コードなどマルチモーダルな機能を備えており、ビジネスの現場で実際に必要となる大量かつ多角的な情報を取り扱うことができる。これにより、皆さまが直面するビジネスの課題をトータルに解決できるようになる」と話した。

 その上で、同社が現在注力している生成AIソリューションのユースケース別支援パートナーについて図1に示し、「ぜひご活用いただきたい」(平手氏)と呼び掛けた。

 さらに、「ビジネスの現場でのAIは、基盤モデルの活用に注力する段階から、AIエージェントを活用する段階へと移行しつつある。AIエージェントは、特定の目標を達成するために複数のタスクを組み合わせて行動を起こすインテリジェントな存在だ。このAIエージェントを既存のアプリケーションと連携させることで業務全体をカバーでき、業務の効率化や自動化を図り、結果として新たな顧客体験を提供できるようになる。Googleは『大胆かつ責任あるAI』という理念の下、テクノロジーを開発し、提供することに努めている。具体的には、Geminiをはじめとしてビジネスの現場で信頼して使えるAIアプリケーションを開発し運用するためのフルスタックのサービスラインアップを取りそろえている」

 図2が、そのサービスラインアップだ。ちなみに、「AIハイパーコンピュータ」はインフラ、「Vertex AI」はAIエージェントを開発し運用するための統合プラットフォームである。

 最後に、平手氏のスピーチを聞いて筆者が気付いたことを述べておきたい。同氏のスピーチでは「お客さま」という言葉がほとんどなく、「皆さま」と表現していた。「来場された皆さま」との意図かもしれないが、世界中に数十億人のユーザーを持つGoogleならではの感覚が、皆さまという表現に凝縮されているように、筆者は感じた。それがGoogleの比類のない強みではあるが、法人向け(BtoB)のビジネスでは課題になるところもあるのかもしれない。

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