NTT-AT都筑氏が語る「SAP S/4HANA Cloud」への移行と「SaaSマインド」の重要性

今回は「NTT-AT都筑氏が語る「SAP S/4HANA Cloud」への移行と「SaaSマインド」の重要性」についてご紹介します。

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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 NTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)は、基幹システムとして長年利用してきた「SAP ERP Central Component」(SAP ECC)の複雑化や老朽化、そして2025年問題への対応といった課題を背景に、「SAP S/4HANA Cloud, public edition」への移行を決断した。当時のシステムは、約800本ものアドオンによって維持管理が困難になっており、多大な労力とコストを費やす要因となっていた。また、システム老朽化は業務効率の低下を引き起こし、日常業務に支障をきたすケースも増えていた。SAP ECCの保守サポート終了が迫り、システムのリプレースが急務となっていた。

 これらの課題を解決するため、NTT-ATはわずか6カ月という短期間での新システム導入を決定した。導入に当たっては、業務プロセスをシステムに合わせる「Fit to Standard」のアプローチを採用し、社内のプロセス改革と意識改革を促すためのチェンジマネジメントを実施した。そして、新システムは2019年4月から稼働を開始した。

 プロジェクトを成功させる鍵は「SaaSマインド」を持つことであると、経営戦略室 経営企画部門の都筑純氏は語る。従来のシステム開発のように、システムを業務に合わせてカスタマイズするのではなく、業務をシステムの標準機能に合わせるという発想の転換が求められた。また、完璧なシステムを目指すのではなく、まずは60点の完成度で導入し、その後も継続的に改善していくというアプローチが採用された。従来のシステム開発の考え方から脱却し、SaaSの特徴を最大限に生かすSaaSマインドへの変革が、プロジェクト成功の重要な要素となった。

 既存業務の標準化は、現場担当者にとって大きな変化であり、当初は戸惑いや抵抗感があったようだ。特に、安全性や個別対応を重視する現場の声に対しては、丁寧に説明を重ね、標準化のメリットを理解してもらうための努力が続けられた。最終的には、800ものアドオンを完全廃止した上で、S/4HANA Cloudの標準機能で対応できない一部業務については、「SAP Business Technology Platform」(SAP BTP)などの拡張機能も検討しながら、最適な方法を模索し、ロボティックプロセスオートメーション(RPA)ツール「WinActor」で補完することで解決を図った。

 また、長年の運用で蓄積された膨大なデータを新システムに移行する作業も大きな課題だった。どのデータを移行するのか、どのように移行するのか、綿密な議論と検証が行われた。こちらでも、SAPの標準的なデータ移行ツールに加えて、WinActorを活用することで、柔軟かつ効率的なデータ移行を実現した。事前に複数回のリハーサルを実施することで、本番でのスムーズな移行と切り替えを成功させた。データ移行と切り替えは、プロジェクト全体の中でも最も困難な作業だったが、関係者の努力と協力によって乗り越えることができたとのことだ。

 「費用対効果(ROI)の議論はもちろん重要だが、それ以上に『変化』そのものを重視し、現状維持を打破することを優先した。SaaSのようなシステムでは、ROIよりも『在るべき姿』を追求するべきで、 ROIにとらわれすぎると本質的な議論を見失い、適切な投資判断ができなくなる可能性がある」と都筑氏は述べている。オフィスソフトのような必須のものにROIを問う人はいない。ERPも社員にとって「紙と鉛筆」のように必須なものなので、ROIを問わない。その上で、自社にとって最適なものを選んでいけばよいというのが都筑氏の考えだ。

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