「GIGAスクール構想」の成果と3つの課題–文科省の担当者が講演、「教育DX推進フォーラム」
今回は「「GIGAスクール構想」の成果と3つの課題–文科省の担当者が講演、「教育DX推進フォーラム」」についてご紹介します。
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日本教育情報化振興会(JAPET&CEC)は2月27~28日に、国立オリンピック記念青少年総合センターで「教育DX推進フォーラム」を開催した。基調講演では、文部科学省 初等中等教育局 学校情報基盤・教材課長の寺島史朗氏が「GIGAスクール構想が拓く教育の未来」をテーマに、「GIGAスクール構想」のこれまでの成果と今後の課題について説明した。
寺島氏は冒頭、人口減少やグローバル化、社会の急速なデジタル化など教育を取り巻く環境の変化とともに、人生100年時代をこれから生きていく子どもたちに触れ「われわれ世代ではなく、これから子どもたちが生きていく社会を考えながら議論しなければならない。そして、それはわれわれの世代が責任を持って取り組まなければならない」とし、「私がGIGAスクール構想を推進する中で、やはりデジタルかアナログかと議論したがる人がいるが、これから生きる子どもたちのことを考えた時にこういった(デジタル)社会を前提にして、抽象的ではない議論をしなければいけない」と、教育の未来を語る前段として説明した。
学習指導要領の改訂に向けた議論が始まる中、小・中学校においては「主体的に学びに向かうことができていない子どもの存在」「学習指導要領の理念や趣旨の浸透が道半ば」「デジタル学習基盤の効果的な活用」が顕在化している課題として挙げられている。
特に「デジタル学習基盤の効果的な活用」に焦点を当てると、GIGAスクール構想による1人1台端末やクラウド環境などのデジタル学習基盤の効果的な活用に着手したばかりであることや、日本のデジタル競争力が国際比較でも低位であり、デジタル人材育成の強化が喫緊の課題であることが要因だとしている。
一方で、1人1台端末や無線LANなどのデジタル学習基盤が整備されたことで、全国学力・学習状況調査においてもICT機器を活用し、主体的・対話的で深い学びに取り組むほど平均正答率が高い結果も出ている。また、端末を利用してプログラミングを学ぶ子どもが増加していることで、GIGAスクール構想は単なる教育施策ではなく、デジタル人材育成の基盤にもなり得るとしている。
しかし課題も見えてきた。ICT機器の活用率の自治体間格差や授業での活用方法に学校間での格差があり、早急に是正が必要になっている。また、クラウドの活用を前提とするGIGA端末の利用において、ネットワーク環境が不十分な学校が少なくないという。加えて、校務DXの推進においても改善の余地が多々ある。文科省はこれらの課題に対して、共同調達スキームの下での着実な端末更新や地域間でのICT活用格差の解消に向けた好事例の創出、ICT運用支援を含む伴走支援の強化。また、ネットワークアセスメントの徹底とその結果を踏まえた通信ネットワークの着実な改善や、クラウド環境の活用による校務DXの加速といった教育DXのさらなる進化について方向性を示した。
2024年度の「全国学力・学習状況調査」の児童・生徒への質問紙調査によると約9割の児童・生徒が、ICT機器は「分からないことがあった時に、すぐ調べることができる」「画像や動画、音声などを活用することで、学習内容がよく分かる」など肯定的に捉えていることが明らかになった。
また、端末の活用と学習の関係も調査している。ICT活用の単純な頻度と平均正答率に直接的な相関は見られなかったが、「主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改革」をキーワードに関係をひもとくと、課題解決に取り組む学習活動を行っている学校ほど、考えをまとめ、発表・表現する場面でICTを活用している。さらに、その両方に取り組んだ学校グループの児童・生徒は、それ以外のグループよりも各教科の正答率が高いことが明らかになった。
しかし、端末の活用方法については地域や学校間で差が出ている。69.1%の公立小学校の生徒が授業でほぼ毎日端末を活用しているが、「自分の考えをまとめ、発表・表現する場面」や「自分の特性や理解度・進路に合わせて取り組む場面」「児童同士がやりとりする場面」など主体的・対話的で深い学びの授業における場面では、ほぼ毎日活用している児童が2割以下になった。寺島氏は「端末活用の差が出始めているという課題は、こういったところで明らかになってきているのではないか。主体的・対話的で深い学びの授業でどのように(端末を)使っていくかが課題になる」と述べる。
文科省は、デジタル学習基盤が教員の意図的な指導と合わせ、自律した学習者を育成していく上で大いに役立つものだとした上で、デジタル学習基盤による情報活用の充実は、それ自体が子どもたちの資質・能力に直結すると考えるのは早計だと指摘している。子どもたち一人一人の主体的・対話的で深い学びの実現を通して子どもたちの資質・能力の育成につながっていくように、適切な指導計画や学習環境の設定、子どもの丁寧なみとりと支援といった、“学びの専門職”としての教員の役割が極めて重要で不可欠であるとしている。