児童・生徒主体の学びを大切に、「iPad」で高度な学びを実現–大阪府枚方市教育委員会

今回は「児童・生徒主体の学びを大切に、「iPad」で高度な学びを実現–大阪府枚方市教育委員会」についてご紹介します。

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 全国ICT教育首長協議会が主催する「第7回日本ICT教育アワード」において、デジタル大臣賞を受賞した大阪府枚方市では「枚方版ICT教育モデル」を2021年3月に策定し、ICTを効果的に活用した教育に取り組んでいる。特にユニークなのは、「iPad」を活用した授業の展開だ。枚方市教育委員会事務局 学校教育部 教育研修課 課長の永山宜佑氏と同課 ICT推進係 主幹の浦谷亮佑氏に話を聞いた。

 枚方市は、2019年度に「未来学習研究事業」を通して、一部の小・中学校で1人1台端末の整備や活用を検証。iPadのLTEモデルと「Windows」のWi-Fiモデルを使用し、利便性などを確認した結果、直感的な操作ができることや挙動がなめらかであるといった点が評価され、iPadの導入を決定した。もともと4年で1人1台端末を順次導入する計画だったが、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、2020年度にはiPad第7世代のWi-Fi+セルラーモデルを児童・生徒、教職員に対して1人1台を貸与する結果となった。

 「GIGAスクール構想 第2期」(NEXTGIGA)における端末更新では、教職員や児童・生徒、保護者にアンケートを行うほか、情報教育や支援教育、不登校支援の専門家や現場の教職員らで構成される意見聴取会を実施した結果、同市の独自調達によりiPad第10世代のWi-Fi+セルラーモデルを採用するに至った。都道府県単位による共同調達が進む中、同市は高度な教育を実施することからオプトアウトを行い独自での調達を決めたという。

 浦谷氏は「Windowsや『Chromebook』は学校教育で使うのに必要なスペックを備えているが、その中でもiPadは特に性能が非常に高い。もちろんインターネットを使って調べ学習をしたり、スライドを共同編集したりという学びのみであればiPadでなくてもいいと思っているが、本市では授業で学んだことを動画にして表現したり、生徒がBGMを作って音楽にしたりと表現活動が幅広いため、端末の処理能力が必要になってくる」と話す。

 またソフトウェアの面でも同市は検討を重ね続けている。iOSに搭載されるアプリケーションを使うほか、校務や授業では「Google Workspace」を活用していたが、NEXT GIGAからは「Microsoft Teams」を利用する。Googleのソリューションはコロナ禍で迅速に教職員と児童・生徒をつなげるためのツールとして導入し、直感的な使い勝手やシンプルなレイアウトが良く利用を続けていた。しかし、校務においては「Microsoft 365 Education A3」も活用している状況であったため、今回の端末更新に当たりMicrosoftアカウントに集約することになった。

 今後、校務でのやりとりは「Teams」や「One Drive」を中心に行う。また、セキュリティにおいてはゼロトラストを意識して学習用と校務用のネットワークを一本化する中で、オンプレミスで扱う機微な情報を、セキュリティを担保した上でクラウドに移行できるように準備していくという。

 2021年に策定された枚方版ICT教育モデルは、「Society5.0時代」の中で子どもたちに必要な資質・能力を育成するため、端末の効果的な活用を示したもの。同モデルを教育委員会だけでなく、教職員や児童・生徒、保護者、市民に広く発信することで、同じ目標に向かって進むことを目的にしている。

 浦谷氏は、「単純に端末を導入しただけでは授業での活用が難しいだろうということで、まずはビジョンとなる方針が必要になると考え、当時統括指導主事だった永山課長を中心に枚方版ICT教育モデルを作成した」と背景を語る。

 同モデルには「5C」というキーワードがある。学習指導要領では「生きる力」を育むために、「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」と「カリキュラム・マネジメント」により、各教科で「学びに向かう力、人間性」「知識および技能」「思考力、判断力、表現力」の3つの資質・能力を育成することが示されている。同市では、これらの資質・能力を育成するために「Challenge(挑戦)」「Communication(意思伝達)」「Collaboration(協働)」「Creativity(創造)」「Critical thinking(思考・判断)」――の5つのCの視点を重視する。

 小学校で3年間教頭に従事していたという永山氏は、5つのCの中で特にクリエイティビティを意識していたという。「(クリエイティビティは)まさにiPadで実現できるところの強みであったので、iPadの特徴を生かした、クリエイティビティを発揮できる授業作りをしてきた」と振り返る。

 例えば、社会科の授業で大阪府の調べ学習を行った際に、グリーンバックを用いて大阪の町を紹介する合成映像を作成した。ほかにも算数科のかけ算の授業では、Apple純正アプリケーションの「GarageBand」を使い、自分で好きなBGMを作曲してから、九九をラップ調にして何度も歌うことで、勉強が苦手な子どもたちも楽しみながら、自然と九九を覚えていった。

 他の学校では、拡張現実(AR)を活用したアプリケーションでの学びも進めているという。理科の授業では、カブトムシやクワガタなどの昆虫の違いを比較する際にiPadを通して目の前に出現させ、カメラを動かしながらさまざまな角度から昆虫を観察できるようにした。

 先進的なICT活用を進める枚方市。教職員や児童・生徒が積極的に端末を利用する環境づくりに重要なことを聞くと、「最初は使うことを目的にしていたところもあった。どのように使えるか模索しながらのスタートだったが、今はいろいろな選択肢がある中の一つのツールとして、一人一台端末がどのように効果的に使えるかをあらゆるところでアピールしているところ」と永山氏は語る。

 全てをデジタル端末に置き換えるのではなく、児童・生徒が「紙」「デジタル端末」など、さまざまな選択肢の中から自分自身で選ぶという学びが見えてきているという。「児童・生徒が主体の学習ということを枚方市は大切にしているので、5Cなどを意識しながら教職員の方には伝えていっている」(永山氏)

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