5G活用に期待する企業–顧客体験の向上や作業の効率化に向けた取り組み

今回は「5G活用に期待する企業–顧客体験の向上や作業の効率化に向けた取り組み」についてご紹介します。

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 現在進行中の5Gネットワークの展開によって、少なくとも一部の消費者がすでにネットワークの高速化を体験している一方で、企業も5Gを利用して、より良い新サービスを顧客に提供する方法を模索し始めている。

 テクノロジーアナリストらによると、5Gはスマートフォンの通信速度を向上させて、より高速な動画ストリーミングを可能にするだけでなく、今後数年にわたって、人工知能やエッジコンピューティング、モノのインターネット(Internet of Things:IoT)といった新興テクノロジーの可能性を引き出す助けになるという。

 ゴルフのヨーロピアンツアーとライダーカップで最高技術責任者(CTO)を務めるMichael Cole氏は、テクノロジー対応のゴルフコースを開設し、データ、センサー、モビリティーを組み合わせて、選手や観客、報道関係者が常につながった状態で情報を得られるようにしたいと考えている。そのビジョンの重要な要素が5Gネットワークだ。

 「私はコネクテッドコースを作り出すことを究極の目標としている。ここで重要なのは、ゴルフコースの多種多様なインフラストラクチャーを1つの共通のバックボーンに統合するにはどうすればよいかということだ」。Cole氏はこのように語る。

 同氏のIT組織は、マドリードで先頃開催された「Open de Espana」で、通信大手のTelefonicaと協力し、ヨーロピアンツアーで5Gを活用する方法を探った。

 そのプロセスでは、ブロードキャスト機能、メディアサービス、Wi-Fiの提供など、大量のデータを使用する幅広いユースケースに重点が置かれた。これらの調査の主な目的は、コネクテッドコースが運用効率の向上にどう役立つかを突き止めることだが、Cole氏は、他にも持続可能性という大きな利点を得られる可能性がある、と述べている。

 同氏の試算によると、ヨーロピアンツアーは今でもトーナメントのたびに30~40km以上の光ファイバーケーブルと銅ケーブルを展開しているという。Cole氏は、5Gによってコネクションレス型ネットワーク環境の構築が可能になり、リソースを大量に消費するインフラストラクチャーの必要性を低減できる、と述べた。

 「5Gなどのテクノロジーを活用したリモートプロダクションの手法によって、そのフットプリントを削減できれば、フライトの本数、現場の人員、ホテルの数を抑えることができる。それらすべてが二酸化炭素排出量の削減につながり、われわれのビジネスにとって根本的に重要な持続可能性の戦略を支えることになる」(Cole氏)

 ジョージ・ベスト・ベルファスト・シティ空港の情報技術担当ディレクターを務めるBrian Roche氏も、5Gの潜在的な用途の探求を開始しているIT責任者だ。Roche氏は、安全な5Gプライベートネットワークを構築して、手荷物処理、乗客の移動、その他のさまざまなタスクを空港全体で自動化しようと計画している。

 Roche氏には、同空港でデータ主導のビジネストランスフォーメーションを推進する5カ年計画がある。同氏が目指しているのは、5Gネットワーク、センサー、多様なコネクテッドアプリケーションを使用して、空港の運用効率を高め、乗客の流れを改善することだ。

 同空港はすでにデータ主導のプラットフォームを配備した。1つはカメラとビジョン分析用で、もう1つはリスク管理と空港内の人やデバイスの移動をサポートするものだ。同空港は40件のデジタルトランスフォーメーションプロジェクトに取り組んでいる。

 Roche氏はさらなる取り組みに意欲的で、特に5G、モビリティー、そして顧客体験を向上させるデータを使用した取り組みに熱心だ。「自動車から飛行機まで非接触でシームレスに移動できる未来を思い描いている」と同氏は述べた。

 「私は『Amazon Go』ストアと同じような機能を持つ空港を作りたい。乗客が自動車で施設に向かい、テクノロジーの出迎えを受けて、駐車スペースのアップグレードを提案される。それから空港内に入って、免税店で商品を選ぶと、自動的に代金が請求される」

 Roche氏はまた、5Gネットワークとアプリケーションの実装に関して、ガバナンスとセキュリティの懸念があることを指摘している。「GDPRを遵守し、適切な同意を得て、利用者がいつでもオプトアウトできるようにする必要がある。こうしたデータ主導のことをやるときは、セキュリティを設計段階から組み込まなければならない」

 5Gネットワークの潜在的な利点を社内で見つけ出そうとしている企業もあれば、5G対応スマートフォンの使用増加が顧客体験の改善につながる可能性に注目している企業もある。

 交通関連のサービスを提供するTrainlineでCTOを務めるMilena Nikolic氏は、欧州の電車およびバス旅行のワンストップショップであるTrainlineのアプリに関して、さまざまなテクノロジー主導のイノベーションを監督している。5Gはこれらの取り組みの一部ではあるが、ビジネスモデルの変革の重要な要素というよりも、消費者側の物事を実現する要素という側面が大きい。

 Nikolic氏によると、同社のアプリはデータを大量に使用するものではないという。Trainlineにとっての5Gの主な利点は、消費者がより高速なネットワークにアクセスして、必要なアプリの機能をどこからでも素早く利用できることだ。

 「顧客体験は私が何より胸を躍らせている部分だ」とNikolic氏。「消費者に毎日利用してほしい。旅行を手助けし、交通に混乱が生じた場合は注意を促して、代替ルートを示したい。当社がある段階で5G拡大のメリットを得られることは間違いない。最終的には、それがより高速なユーザー体験につながるだろう」

 このように、ハードウェアからアプリケーションまで、ITリーダーは5Gに対して多様なアプローチをとっている。専用インフラストラクチャーに投資しているテクノロジー責任者もいれば、高速ネットワークの利用者の増加によって自社のサービスを改善する方法を探しているリーダーもいる。

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