デジタルプロセスを拡大、社外でのDXも支援–横河電機が進めるDX戦略の勘所
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横河電機は12月9日、自社のデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略を披露する「Yokogawa DX説明会」を開催した。2021年も同様に開催した。
同社の最高情報責任者(CIO)である常務執行役員 デジタル戦略本部長 兼 デジタルソリューション本部 DX-Platformセンター長 舩生幸宏氏は2022年を振り返りつつ、「(社内を指す)Internal DXと(社外を指す)External DXの強化を通じて、SX(サステナビリティトランスフォーメーション)の向上に貢献したい」と方向性を指し示した。
横河電機がDXへの取り組みを本格的に開始したのは2018年までさかのぼる。2018~2020年の中期経営計画「Transformation 2020」で重要事項の一つに掲げ、DXを活発に推進してきた。
2021年時点で10年後の顧客提供価値として「System of Systemsにおける価値創出」とのキーワードを掲げつつ、現場対応に直結する「IT/OTコンバージェンス」を強化ポイントの一つとしている。舩生氏は「この領域は多数のデジタル技術が加わり、競争構造が変化する」ことから2023年の方針を示した。
横河電機は「Accelerate Growth 2023」で現状を4領域に分割し、各領域の最適解を目指している。
例えば、1番目の「IA2IA/Smart manufacturing」の実行と存在価値の変革では、デジタル技術を活用して製造業の顧客がDXを目指すための自律化と道筋を示す「IA2IA(Industrial Automation to Industrial Autonomy)」の提唱を継続する。
4番目の「社内オペレーション最適化とマインドセットの変革」に対しては、「ビジネスがグローバル化している状況では、ビジネスプロセスもグローバルに最適化しなければならない」(舩生氏)と説明しつつ、社内でのDXを意味するInternal DXが重要だと説明した。
同社は2023年度までの目標として、2020年度のDX関連受注比率を約2%から4%以上へ、デジタルプロセス率を2020年度の40%程度から63%へ、ITインフラ環境負荷はDXへの取り組みを開始した2018年度から65%の軽減率を目指している。
クラウド化も2020年度の61%から64%、アジャイルアプローチで取り組むプロジェクト率も19%から35%へ、DX人材比率も20%程度から50%と、現実的な目標値を標榜してきた。その結果、2021年度時点でアジャイルプロジェクト率は54%を達成しているという。
2022年の横河電機で注目すべきは、顧客企業へ付加価値のあるデジタルサービスの開発や提供を目的とするExternal DXを加速させるため、2022年7月に「横河デジタル」を設立した点だ。
「DXビジネスの受注比率の向上は、プロジェクト件数も増やさなければならない。約1000人の人材を集中投入し、ビジネス拡大を目指している」(舩生氏)
2022年3月にはENEOSマテリアル(旧JSRエラストマー事業部門)と共同で、世界初のAIによる35日間の化学プラント自律制御に成功させたという。2022年5月には横河電機とNTTドコモ、奈良先端科学技術大学院大学が共同開発した自律制御AIで、5G(第5世代移動通信システム)経由のリモート制御実証実験に成功している。
2022年6月にはクラウドサービス「OpreX Asset Health lnsights」を、2022年8月にもクラウドサービス「OpreX IT/OT Security Operations Center」を開始した。2022年6月には経済産業省の「DX注目企業2022」に選定されている。
Internal DXの文脈において横河電機は、パートナー&プラットフォーム体験(PX)、従業員体験(EX)、顧客体験(CX)の3軸における改革を重視している。
例えば、CXは取引前からその後のサポートに至るまで顧客企業に価値を提供する「SoE統合プラットフォーム」を推進。端的に述べれば“ビジネスプロセスの標準化”だが、舩生氏は「顧客企業にカスタマージャーニーを定義し、我々の製品・サービスを提供しているが、以前は(提供過程が)バラバラだった」と説明し、統一化を通じて2025年度までに見込顧客数10%増、営業・マーケティング業務効率化10%以上の改善を目指している。
EXの観点では、自社基盤の統合基幹業務システム(ERP)を刷新する。同社の説明によれば、現在利用中のSAPで使用中のアドオンを見直し、顧客企業とパートナー企業、エンドトゥエンドの最適化を図るため、2024年度中の新システム稼働を目指しているという。