自社オリジナルで行こう–変革進めるイトーキに聞く、DX人材育成の勘所

今回は「自社オリジナルで行こう–変革進めるイトーキに聞く、DX人材育成の勘所」についてご紹介します。

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 1890年に伊藤喜商店として創業したオフィス家具メーカーのイトーキは近年、テクノロジーとデザインを掛け合わせたコンセプト「Tech×Design(テックバイデザイン)」のもと、円滑なハイブリッドワークを実現するオフィス家具や、従業員のデータを基にオフィスを改善するソリューションの提供に取り組んでいる。

 イトーキは、データ統合基盤「ITOKI OFFICE A/BI」の開発を進めており、2024年初頭の提供を予定している。同基盤は、社員の心身のコンディションに関するデータや、位置情報を基にしたオフィスの利用データを「Google Cloud」上で統合・可視化することで、顧客企業がオフィスの在り方や働き方の改善につなげることを図る。同社はIT企業出身の人材を経営層に招聘(しょうへい)することにも注力しており、2022年には日本オラクルで副社長を務めていた湊宏司氏を社長に招いた。

 大胆な事業変革を進める中、イトーキは2023年8月、動画配信やワークショップで構成されるDX人材育成プログラム「DX学びの場」を社員向けに提供開始した。ITOKI OFFICE A/BIの開発を担当するスマートオフィス商品開発本部 ソリューション開発統括部 ソリューション開発部の藤田浩彰氏に事業変革の背景を聞くとともに、DX学びの場を運営するDX推進本部 デジタルソリューション企画統括部 デジタル企画推進チームの小笠原豊氏と植田真理氏にプログラム提供の意図や得られた気付きを話してもらった。

 従来のオフィス家具メーカーから変貌を遂げようとするイトーキの原動力について聞くと、藤田氏は「『社会からの要請』が大きい。お客さまが求めるものが変わり始めており、当社としてはいち早く応えたいという思いがある」とした上で「オフィスの意義は、今も昔も『生産性の向上』に尽きる。建築工法の進化で大規模な建物を建てられるようになってからは、社員を一箇所に集めることで業務の効率化を図っていた。今は社員のポジティブな気持ちを引き出したり、アイデアの交換を促したりすることが注目されているが、そうした動きも結局は生産性向上のためといえる。われわれはその手段として、オフィスにITを取り入れている」と語った。

 イトーキは2022年以降、DX人材育成の取り組みを進めている。DX推進本部はIT企業による連続講演企画「トップランナーウェビナー」、AIベンダーによる体験型講座「AIワークショップ」などを開催するとともに、人事部門はDX領域に強い外部プログラムを追加したeラーニングを提供している。こうした施策を経て両部門は、DX学びの場の提供に至った。DX推進本部内の「デジタル企画推進チーム」がコンテンツの企画・制作を担当し、小笠原氏がチームリーダー、植田氏がメンバーを務めている。

 複数の人材育成施策を行う中、改めてDX学びの場を提供した背景について、植田氏は「トップランナーウェビナーやAIワークショップをスポット的に展開していたが、『やはり社員の学びを体系化する必要がある』と感じた」と説明する。

 DX学びの場では学びのステージを5つに分け、各段階に応じたコンテンツを順次提供している(図1)。同プログラムは、DXやITの基本を正しく理解し、当事者意識を持って捉える「知る」、ITスキルを実際に使えるようになる「使う」、データやツールを活用し、生産性の向上や働き方の改善につなげる「活用する」、新サービスや高付加価値を企画し、新規事業として実現する「創る」、特定の分野において高度かつ専門的な技術を持ち、製品やサービスの開発設計を行う「極める」――で構成される。

 現時点では「活用する」のステージまでを実施しており、「知る」「使う」では動画コンテンツを専用サイトで配信している。「知る」ではDXやデータリテラシーに関する基礎知識、「使う」では自社で導入しているコミュニケーションツールなどを使いこなせるよう、よくあるシチュエーションで役立つ機能を紹介している。

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