6年ぶりに来日したベニオフ セールスフォースCEOはAIについて何を語ったか
今回は「6年ぶりに来日したベニオフ セールスフォースCEOはAIについて何を語ったか」についてご紹介します。
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本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、Salesforce 会長 兼 CEOのMarc Benioff氏と、伊藤忠テクノソリューションズ 技術戦略室 先端技術開発部長の田中久智氏の「明言」を紹介する。
米Salesforceの日本法人セールスフォース・ジャパンは11月28~29日、年次イベント「Salesforce World Your Tokyo」を都内ホテルで開催した。冒頭の発言は、6年ぶりに来日して28日の基調講演に登壇したSalesforce 会長 兼 最高経営責任者(CEO)のMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏が、同社が提供するAIプラットフォームの特長について述べたものである。
以下、Benioff氏によるスピーチから、筆者が印象深く感じた内容を取り上げたい。
「Salesforceはこれまで25年にわたり、真の顧客データ基盤を目指してイノベーションを起こし続けてきた」
同氏は図1を示しながら、こう話した上で、「私たちは今、これまでで最も大きなテクノロジーのイノベーションを迎えている。そのテクノロジーとはAIだ」と強調した。
そして、「AIはこれから私たちにどのようなイノベーションをもたらすか」と投げかけて、図2を示した。
「この図に示すように、AIは企業にとって、カスタマーサクセス、雇用、生産性、成長、戦略といったあらゆる局面で、新たな変革の機会をもたらすだろう」
こう述べた同氏は、特に同社がこれまでリードしてきた顧客関係管理(CRM)分野で重要な要素であるカスタマーエクスペリエンス(CX:顧客体験)を、AIがさらなる高みへ導いてくれると強調した。
また、同氏は「私たちはおよそ10年前からAIの活用に取り組んできた」と述べた上で、「企業にとってのAI革命の波は4つある」として次のように説明した。
「第1波は『予測AI』だ。これについては、私たちのサービスにもさまざまな形で組み込んできた。そして今、大きな波となって活用が広がりつつあるのが、第2波の『生成AI』だ。生成AIによってハイレベルなインテリジェンスをどんどん生み出せるようになった。私たちのサービスにも積極的に組み入れている。さらにこれからは、第3波として『自律型エージェント』、その先に第4波として『汎用人工知能』が登場するだろう」
一方で、同氏は「AIにはまだまだ課題もある。ハルシネーション(もっともらしいウソ)に代表される信頼性だ。私たちは信頼性を非常に重視している。(9月に発表した)『Einstein 1 platform』は、信頼できるAIの生産性向上と開発のためのプラットフォームだ」と、「信頼できるAI」が重要であることを強調した。冒頭の発言は、このコメントから抜粋したものである。
最後に、Salesforceの業績について印象に残った発言を紹介しておく。Benioff氏は同社の2024年1月期の売上高の見込みについて「348億ドル」との数字を明らかにした。現在、同社の売り上げ規模は、ソフトウェアベンダーとしてMicrosoft、Oracle、SAPに続く第4位だが、この数字によってSAPを抜いて第3位になる可能性がある。
また、日本法人の売上高の見込みを「2000億円以上」とし、「日本で第2位のソフトウェアベンダーになる」と明言した。日本のソフトウェアベンダーの売上高では、日本マイクロソフトが2023年6月期で1兆円を超えてダントツだ。日本オラクルも2023年5月期で2269億円となったが、ハードウェアを除けば、約2100億円だ。もし、セールスフォース・ジャパンがこれを超える数字になるならば第2位となる。ちなみに、同社の2023年1月期の売上高は1973億円。Benioff氏がこのタイミングで「日本で第2位」を明言したことからすると、確固たる自信があるのだろう。果たして、結果はどうか。注目したい。