銀河英雄伝説で学ぶセキュリティ–黎明篇「壮大なる攻防の世界」

今回は「銀河英雄伝説で学ぶセキュリティ–黎明篇「壮大なる攻防の世界」」についてご紹介します。

関連ワード (セキュリティ、企業セキュリティの歩き方等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 本連載「企業セキュリティの歩き方」では、セキュリティ業界を取り巻く現状や課題、問題点をひもときながら、サイバーセキュリティのスキルを向上させていくための視点やヒントを提示する。

 筆者は、これまでセキュリティと直接関わりのない人たちに、セキュリティに興味を持ってもらうため、定期的に著名なアニメやゲームなどを題材に、セキュリティの解説をしてきた。それを久しぶりに実施したい。今回から、小説やアニメーションで1980~90年代に当時の男子中高生の心をわしづかみにした「銀河英雄伝説」のエピソードなどを題材として、セキュリティについての考え方を述べていく。

 このような記事で少しでもセキュリティに対する理解の裾野が広がり、日本のセキュリティ意識が高まってほしいと考えている。最初は銀河英雄伝説をあまりよく知らない、その存在や概要は知っているがあまり鮮明に覚えていないという方のために、作品の概要や現実社会に与えた影響について述べる。

 銀河英雄伝説は、田中芳樹氏原作のSF小説だ。この小説版(原作)は、1982~1989年の7年間で全14巻(本伝10巻、外伝4巻、徳間書店刊)が刊行された。まずは、この作品の評価や時代背景を述べる。

 当時は、現在と異なり書籍が売れる時代だったこともあり、本作はかなりヒットしたが、その地位を不動のものとしたのは「傑作中の傑作」と評されることも多いアニメ版の存在であった。アニメ版は地上波テレビではなく、オリジナルビデオアニメーション(OVA)での販売だった。つまり、欲しい人が購入するという書籍に近いビジネスモデルだ。

 そのOVAは、21世紀になってからDVDやブルーレイディスクにも移植されたが、当時のメディアは、現在の若者などは見たこともないVHSビデオテープおよびレーザーディスクというもので、かなり時代を感じさせる。その構成は、本伝110話/外伝52話とOVAオリジナル3話となっており、1988~2000年に相次いで発売された。

 筆者は、中高生時代に銀河英雄伝説を3周ほど読み込んでおり、このアニメ版にも当然のようにハマった。筆者は購入できなかったが、このアニメ版の全巻、それもレーザーディスク版でそろえた人こそ、銀河英雄伝説のマニアの中でもかなり深部に到達できた人だと言える。

 アニメ版の内容は、まさに傑作と評価されるレベルであった。その理由は、原作小説の難解な世界観を非常に丁寧に再現して制作されていたからにほかならない。さらに、この作品は登場人物が多いことでも有名で、当時の声優界のスターが勢ぞろいだったこともあり、「銀河声優伝説」とも呼ばれていた。そのメンバーからも、「二度と実現不可能な作品」ともっぱら評判であり、銀河英雄伝説が傑作と言われるゆえんは、これらの複合的な魅力のおかげと言える。

 さらに、アニメ版は原作では想像するしかなかった宇宙空間での艦隊決戦を見事にビジュアル化することに成功した。特に戦闘シーンのBGMにクラシック音楽の名曲を使うアイデアは秀逸で、そのおかげもあって原作のイメージを損なわないアニメ化が成功した。この作品の人気の高さもあり、旧作の完成から20年を経ずに「銀河英雄伝説 Die Neue These」としてリバイバルされ、現在も制作が続いている。

 このように銀河英雄伝説は、原作小説とアニメとして、当時の男子中高生に絶大なる人気を誇った。「中二病(厨二病)」という言葉は、一説には、タレントの伊集院光氏がパーソナリティーを務めた深夜のラジオ番組で1999年頃に登場し、2000年代半ばにネットで広まったネットスラングだが、そのような病をもつ若者を日本中に出現させる大きなきっかけとなった。銀河英雄伝説は、その是非は置くとしても「中二病の黎明期」に圧倒的な貢献をしたことは確かだ。

 その当時、(筆者を含め)中二病に罹患していた人たちは、現実にはあり得ない“数万隻の艦隊の統率”に悩み、“宇宙空間での効率的な戦闘方法”を考察した。そして、なぜか二人称を「卿」という言葉で呼び、話が長いと「卿らの討議も、長いわりになかなか結論が出ないようだな」などとつぶやく。さらに、「中央突破・背面展開」「半包囲陣形」「砲火の一点集中」など、日常生活では絶対に使わない単語を多用する――そうではない方には全く意味不明だと思うが、そういう病なのだから仕方がない。

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