企業はコンポジットAIシステムを構築する–クアルトリクスのAI戦略プレジデント

今回は「企業はコンポジットAIシステムを構築する–クアルトリクスのAI戦略プレジデント」についてご紹介します。

関連ワード (ソフトウェア等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 Qualtricsは、生成AIに5億ドルを投じると表明。同社は、Microsoftに30年勤務しPCやモバイルと新しい技術の台頭を見てきたベテランのGuardeep Singh Pall氏をAI戦略プレジデントとして任命した。Pall氏は、Qualtricsが5月1~3日に開催した年次イベント「X4 Summit 2024」で、就任4日目にして初の基調講演のステージを踏んだ。同氏に、生成AIの現在や体験管理(Experience Management:XM)に与える影響などについて聞いた。

–Qualtrics初のAI戦略担当プレジデントとして、どのようなミッションや優先順位を立てているのでしょうか。

 (取材時点で)まだ現在のポストについて1週間も経っておらず、優先順位は今後の作業になります。ミッションは、AIがQualtricsの製品、市場、オペレーションなどをどのように変革できるのか、全体を見ることです。

 Qualtricsに入社を決めた理由は、AIで最も大切なのはデータであり、この会社には、人々の感情に関するデータがあるからです。これは非常にユニークな資産です。

 AIは全てを変える技術であり、製品はもちろんですが、Qualtrics社内でも活用します。ソフトウェア開発、市場戦略、サービス提供など、さまざまなところでスピード、品質、時間を改善していきます。

–顧客やパートナーはどのような変化や進化を期待できるのでしょうか。

 このイベントでは、従業員、顧客、リサーチの各XMで生成AIを活用した機能を発表しました。顧客は、既に生成AIのジャーニー(旅路)を始めることができ、われわれは一緒に歩みたいと思っています。遠くない将来、もっと規模が大きく、変革的なアイデアを披露できるでしょう。

 生成AIのジャーニーを進めるに当たって、われわれはフィードバックを得ながら改善していくのと同時に、顧客やパートナーに啓発する役割も果たしていきます。Qualtricsに限らずどのテクノロジーベンダーにも共通して、顧客から「(社内に)生成AIの専門家がどのぐらい必要か?」と言う質問を受けています。そこでQualtricsは、できるだけ容易に使える形で提供します。そのために、信頼できるパートナーでありたいと考えているのです。

–AIブームとともに著作権、セキュリティなどの議論も続いており、テクノロジー企業の責任が問われています。Qualtricsの責任あるAIへのアプローチを教えてください。

 信頼できるパートナーであり続けるということです。Qualtricsには、ほかにはない体験や感情のデータがあり、われわれは責任を持ってこのデータを扱っています。AIにより、データの適用範囲は広がっていきます。そこで信頼関係を継続できるような体制を技術的、組織的にしっかりと構築しなければなりません。

 Microsoft在籍時に「GPT」を初めて見せてもらった際に、最初にしたことの1つが、責任あるAIのためのチームの組成でした。このチームがバイアスなど30のカテゴリーをリストアップしました。

 AIの責任や信頼には、投資が必要です。サイバーセキュリティと同様に、製品戦略を進めながら、どうあるべきかを学習して改善していきます。

–生成AIは、技術とビジネスの両方でまだ早期の段階です。Microsoft時代にPC、コミュニケーション/コラボレーションなど、新しい技術の台頭と普及に携わってきましたが、生成AIの現状をどのように見ていますか。

 生成AIの進化は目覚ましいです。GPTファミリーが広がり始めたと思ったら、「Mistral」「Llama」と、次々にモデルが登場し、マルチモーダル化も始まっています。かつて見たことのないスピードで進展しています。

 その一方で、ほとんどの企業は、まだメリットを享受できていません。企業と生成AI技術の間に、中間レイヤーが必要です。Qualtricsのような企業が製品に生成AIを組み込むことで、顧客は急速に進化する技術からメリットを得ることができます。この中間レイヤーは重要です。

 技術としての生成AIは現在、大規模言語モデル(LLM)とチップなど、処理のためのハードウェアに大きなフォーカスが当たっています。しかしLLMは、インターネットで言えば光ネットワークで、コアのイネーブラーであり、その機能をフルに引き出すためにはたくさんのことが必要です。

 私の予想では、AIがもたらす最大の変化が体験です。ユーザー体験が変わります。インターネットとウェブブラウザー、モバイルとアプリケーションのようなことがAIでも起きます。体験はエージェントに変化していきます。

 将来的には、イネーブラーはLLMだけではなくなるでしょう。複数のAI技術を組み合わせる“コンポジットAIシステム”といって良いでしょう。「Transformer」ベースの言語モデル、「Reinforcement Learning」「CausalAI」なども入ってくるでしょう。用途に合わせて最適なAIを使うことができるシステムで、これがエージェントのイネーブラーになります。

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