銀河英雄伝説で考えるセキュリティ–将来の「帝国の双璧」が陥った罠とセキュリティ業界
今回は「銀河英雄伝説で考えるセキュリティ–将来の「帝国の双璧」が陥った罠とセキュリティ業界」についてご紹介します。
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本連載「企業セキュリティの歩き方」では、セキュリティ業界を取り巻く現状や課題、問題点をひもときながら、サイバーセキュリティのスキルを向上させていくための視点やヒントを提示する。
これまで「銀河英雄伝説」の世界観を元にサイバーセキュリティについて語って来た。前回は、中心人物ではないもののそれなりに存在感と知名度のあったアンドリュー・フォーク准将とその有名なせりふである「高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処」について述べた。今回はさらにマイナーな2人の人物、アルフレット・グリルパルツァーとブルーノ・フォン・クナップシュタインについての話だ。この名前を見て、すぐに「なるほど!」と思われた読者は、銀河英雄伝説のファンでも、かなりディープな領域に足を踏み入れてしまった人だろう。
なぜなら、この2人は物語の後半部分のたった1つのエピソード以外では、ほとんど登場しないからだ。しかも、話の中心は主人公以外では指折りの中心人物であるロイエンタールだ。そのロイエンタールの反乱と最期を扱ったものであるから、エピソード自体は小さくはないものの、その中でも先述の2人はまあまあの脇役だった。
結局この2人は、彼ら自身が起こしてしまった反乱事件によって、悲しい最期を迎えた。今回は、この2人の行動やその背景と、ここ数十年ほどのセキュリティ業界を比較しながら現状の課題や問題点をひもといていく。
この物語の主役であるラインハルト・フォン・ローエングラムは、物語の中で500年近い歴史を持つゴールデンバウム王朝を打倒し、新銀河帝国(ローエングラム王朝)を立ち上げた。人類が生きていける宇宙の全域という途方もない領土を持つ空前の大帝国にもかかわらず、この新帝国は、ラインハルトが帝国軍元帥となった時期からほんの数年で樹立された。
このような急激な組織の成長は、あたかも成り上がりの代表例として有名な「豊臣秀吉の天下統一」のようであり、しかも規模としては比較できないほどの差がある。そして、この覇業の過程で多くの腹心が軍功を挙げ、栄達して行った。例えば、帝国軍の双璧と言われたオスカー・フォン・ロイエンタール、ウォルフガング・ミッターマイヤーを筆頭に、ラインハルト配下の多くの将帥が、元帥や上級大将という高い地位に就くことになった。
また、帝国軍の双璧の2人に、パウル・フォン・オーベルシュタインを含めた三元帥がいた。さらに、新銀河帝国の樹立前に、旧王朝との内戦勝利後に暗殺、——正確には、ラインハルトの暗殺を、その身を盾にして防いだジークフリード・キルヒアイスなども存在した。
彼ら以外にも、「鉄壁ミュラー」の異名を持つナイトハルト・ミュラー、「黒色槍騎兵艦隊(シュワルツ・ランツェンレイター)」を率いる猛将フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルトなど、特徴のある十数人の制式艦隊司令官たちが、新銀河帝国の樹立時に、元帥に次ぐ上級大将となった。