デル、第3世代「Xeon SP」搭載の新世代「PowerEdge」を発売–SDGsの取り組みも強調
今回は「デル、第3世代「Xeon SP」搭載の新世代「PowerEdge」を発売–SDGsの取り組みも強調」についてご紹介します。
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デル・テクノロジーズは5月19日、新世代のx86サーバー「Dell EMC PowerEdge」のうち、13日に販売を開始した第3世代インテルXeonスケーラブルプロセッサー(コード名:Ice Lake)搭載の5機種について、報道関係者向けにオンライン説明会を開催した。
PowerEdgeサーバーの新型17機種は3月18日に米本社から発表されており、うち第3世代AMD EPYCプロセッサー(コード名:Milan)搭載モデル(Dell EMC PowerEdge C6525、同R7525、同R6525、同R7515、同R6515)は同日発売(Dell EMC PowerEdge XE8545は3月29日)されており、今回のインテルプロセッサー搭載モデルの追加によってAMD/Intel両社の第3世代プロセッサーのラインアップがそろった形になる。
まず概要を説明した同社 執行役員 副社長の松本光吉氏は2020年12月に発表した同社のサーバー事業戦略を改めて振り返るとともに、近年、社会的な関心が高まっているトピックとして持続可能な開発目標(SDGs)とセキュリティに関する取り組みについて紹介した。
サーバー事業戦略では、新しい時代の5つの基本施策として(1)製品ポートフォリオ拡充、(2)消費モデル導入、(3)新価格施策、(4)顧客サポート強化、(5)販売エコシステム強化が打ち出された。同氏は現時点での成果として、特に(1)と(3)の結果として国内サーバー市場でのシェア拡大につながったとした上で、各取り組みがそれぞれ着実に進んでいるとした。
次いで同氏は、ITインフラストラクチャーに関わる喫緊の課題としてSDGsとセキュリティに関する同社の取り組みを紹介。同社ではSDGs関連の取り組みの中でも製品に直接関わる「Product Carbon Footprint」に関して、二酸化炭素排出量を削減する努力を続けているという。その一例として、同社ハイエンド製品の一つである「PowerEdge R840」(最大構成時)を1台、平均耐用年数である5年間運用した場合の二酸化炭素の換算排出量は自動車が4万5000kmを走行した場合に匹敵する値だと紹介。「こうした実態を把握して対応を取っていくための尺度として活用している」(松本氏)とした。
具体的な取り組みの成果として示されたのは「デル・テクノロジーズ製品 エネルギー強度(経済効率)」というグラフだ。エネルギー強度(Energy Intensity)と言っているが、実質的には同等性能を実現するために消費する電力量を示していると見ればいい。クライアント向けデバイスであるモニターとPCの削減率が目標値(2012会計年度比で80%削減)に達していないことから全体平均も約70%削減となっているが、エンタープライズ向け製品であるサーバー、ストレージ、ネットワークはいずれも目標を達成しており、着実に成果を上げていることが分かる。
この他、製品製造に関わる資源のリサイクルや海洋プラスチックを回収して梱包材や緩衝材などに再利用するなどの取り組みも行っている。なお、同社 執行役員 製品本部長の上原宏氏は「国内のユーザー企業の製品調達の際にもSDGsを意識した製品選定を行う動きが目立つようになってきている」と指摘しており、こうした取り組みが今後必須となることは間違いなさそうだ。最後に松本氏は新世代のPowerEdgeを「お客さまのイノベーションを支える『イノベーションエンジン』」と位置付けた。
続いて、同社 製品本部 シニア・プロダクトマネージャーの岡野家和氏が新世代PowerEdgeサーバーの製品解説を行った。同氏はまず、「アダプティブコンピュート」「自律型コンピュートインフラ」「プロアクティブレジリエンス」の3点を設計思想に挙げ、対応する設計上の工夫や特徴について説明した。
まず、アダプティブコンピュートに関しては、ワークロードに対応したさまざまなデザインバリエーションが提供される。エッジ/通信事業者向けに最適化された高耐久サーバーとなる「Dell EMC PowerEdgeXR11」「同XR12」(7月中旬に販売予定)や、人工知能/機械学習(AI/ML)向けにGPU搭載に最適化された「Dell EMC PowerEdge R750xa」「同XE8545」といった特徴的なデザインの機種のほか、一般的なラックマウントサーバーに関してもスケールアウト構成向けやクラウド/高密度実装向けなどが作り分けられている。
同社独自の取り組みとしては、例えばR750xaでは標準的な2UラックマウントサーバーでありながらダブルワイドGPUを4基搭載可能とする一方、第3世代AMD EPYCプロセッサー2基とNVIDIA HGX A100の組み合わせを特徴とするXE8545はあえて4Uサイズにした上で、NVIDIAとの協力に基づいてGPUへの供給電力量をカタログ仕様の400Wを上回る500W稼働として最大15%の性能向上を実現したという。さらに、同社独自のシステム管理プロセッサー「iDRAC9」ではGPUも監視対象となり、GPUごとの消費電力や温度のリアルタイム可視化が可能になっているため、GPUをフルに活用したいユーザーにとっては極めて魅力的なハードウェアに仕上がっている。
冷却/熱管理に関してもさまざまな独自技術が盛り込まれている。岡野氏は「冷却と熱管理のイノベーションは『システムベンダーとしての腕の見せ所』」だと語っている。同社の冷却/熱管理技術は「マルチベクター クーリング 2.0」と総称されているが、冷却ファンやヒートシンクといった関連モジュールの改善や筐体内部のエアフローを考え抜いたシステムボードレイアウト、iDRAC9などによるモニタリングや制御のスマート化など、さまざまな取り組みの組み合わせで構成されている。
例えば、最新のR650では前世代のR640では片側にまとめて配置されていた電源ユニットを2つに分割して左右両端に設置、全体の配置を左右対称にすることで均等なエアフローを実現しているという。さらに、冷却ファンを筐体前面側に配置し、冷却ファンの直後にプロセッサーとメモリーを配置することで熱源となる両パーツに効率良く冷気を当てる一方、それらを覆うシュラウドの外側にも冷気の流れを確保しており、プロセッサー/メモリーの後方に配置される電源ユニットや各種拡張ボードに対しても冷気が当たるような配慮がされている。
iDRAC9では「吸排気温度差の上限を設定」「PCIe吸気温度をカスタマイズ」「システムの排気温度の上限を指定」「PCIeへのエアフロー量を設定」といった詳細設定も可能なので、サーバー単体にとどまらず、マシンルーム内やデータセンター全体の冷却管理の高度化/効率化にも対応できる。iDRAC9が把握しているこうした詳細情報はAPIを通じて外部から参照可能なので、マシンルーム内の環境管理ツールと組み合わせることでファシリティー側の空調管理と連携させ、効率改善を図ることも可能だろう。同氏はこうした取り組みに関して、「クラウド事業者などの大規模ユーザーが運用する際の利便性も考慮されており、他社製品との差別化にもつながる」としている。
なお、iDRAC9はセキュリティ強化のためにも活用される。同社では「製品開発から納品までエンドツーエンドのサプライチェーンセキュリティ」を提供しており、シリコンレベルのルートオブトラストやファームウェア保護機能、独自のサプライヤーセキュリティ基準の策定/運用などを通じて製品の安全性/信頼性の担保に努めている。こうした取り組みの一環として同社から製品出荷後、ユーザーのところに納品されるまでの間に不正アクセスされていないことを証明する「Secured Component Verification」も提供している。これはiDRAC9の内部の改ざん不能な記憶領域に暗号化されたデジタル署名を出荷時に書き込んでおくことで実現される機能で、有償オプションとして提供される。
最後に、新世代PowerEdgeサーバーのビジネス拡大施策について、同社 執行役員 製品本部長の上原宏氏が説明した。まず、AI/MLの活用が拡がっていることを踏まえ、同社では国内(東京都内)にサーバーの検証/PoC施設を用意するほか、米本社にもリモートで利用できる大規模なクラスター環境を準備しており、国内ユーザーの利用も拡大している点を紹介。新世代サーバーにラインアップされたGPU搭載に特化したサーバーであるR750xa/XE8545などの検証/PoCなども支援していく態勢が整っているとした。
また、AI/ML処理のための専用アクセラレーターとして開発されたIPU(Intelligence Processing Unit)を搭載するアクセラレーターモジュールとしてGPARPHCOREが提供する「IPU-Machine M-2000」(1基で1ペタフロップスの演算性能を実現)を搭載するホストサーバーとして同社のPowerEdge R6525が唯一認定されていることも紹介され、AI/ML処理の分野で同社が独自の優位性を獲得していることが強調された。合わせて、AI/ML向けに優れた技術を有するパートナーとユーザー企業のマッチングを行うプログラムとして「Dell de AI~デル邂逅(であい)プログラム」も開始されることが発表された。
なお、松本氏は追加のコメントとして、国内メーカーの販売規模がグローバルベンダーと比べてかなり見劣りする状況になっていることを踏まえて「新技術の導入やユーザーニーズに応じた製品バリエーション拡大など、他品種少量生産が求められている状況であり、これまで以上にスケールがものを言う時代になってきている」と指摘。日本的な古い商習慣からの脱却も含めてグローバルなスケールメリットを生かした顧客価値の提供に努めるとしている。
一方で、最近ではサーバーハードウェアに関しても地政学的なリスクを無視できなくなっており、ユーザーから見て「安全な調達先」であり続けることに関して社会的にも責任が重くなってきている。こうした状況も踏まえて、同社は今後もよりよいハードウェア/安心安全なハードウェアの製造にプライドを持って取り組む姿勢を鮮明にしている。
同社でもas-a-Service型の提供モデルとして「APEX」を発表済だが、コンピューティングをサービスとして提供するならハードウェアはもはや問題ではない、という考え方はしていない。この点について上原氏は「レンタカーを借りる際にも車種を気にしない人はいない」とのたとえで説明する。
人によっては「走りさえすれば一番安いので問題ない」という人もいるだろうが、その場合でも「最も低コストな車種」を選んでいると考えられる。ITベンダーの集約が進み、ハードウェアを提供できる会社も絞られてきているが、同社はパーパス(目的)として「We create technologies that drive human progress.」(人類の進歩を促進するテクノロジーの想像)を掲げている通り、今後もITインフラを支えるためのハードウェア技術をないがしろにすることはないものと期待される。
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