マイクロソフト、持続可能性への取り組みを説明–多様なクラウドツール群も
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日本マイクロソフトは3月23日、サステナビリティー(持続可能性)の取り組みに関する記者説明会を開催した。米国本社では2017年7月から地球の未来に人工知能(AI)を活用するプログラム「AI for Earth」を推進し、2022年上半期から二酸化炭素の排出量を測定・管理するクラウドサービス「Microsoft Cloud for Sustainability」のグローバル展開も開始する。
説明会で日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 業務執行役員 金融イノベーション本部長の藤井達人氏は、Microsoft Cloud for Sustainabilityについて、各種領域を横断的にカバーするクラウドソリューションとし、「持続可能性に必要な機能を包括的に提供し、Microsoft Cloudの特徴だけではなく、サステナビリティーなクラウドである点を顧客に訴求したい」と述べた。
Microsoftは、2030年までに経済活動を通じた二酸化炭素排出量が吸収量を下回る「カーボンネガティブ」の実現や、2050年までに自社努力やパートナー企業の協力を得て、創業以来の排出量に相当する二酸化炭素の削減を目指しており、10億ドルを投資した気候変動対策基金設立などサステナビリティーへの取り組みを積極的に実施してきたという。
カーボン領域では、2020年代半ばまでに二酸化炭素の排出を「スコープ1(燃料の燃焼などによる直接排出)」および「スコープ2(発電などの間接排出)」でほぼゼロとし、2030年までに「スコープ3(事業活動による間接排出)」での半減、2050年までに約40年間で排出してきた量の二酸化炭素の削減に取り組む。
水資源に対しては、データセンターで利用する冷却用水の削減や再生水の利用などを推進する。廃棄物に対しては、Microsoft Azureのデータセンターから出るサーバーなどの廃棄物を再利用するサーキュラーセンター(循環センター)の設置や、プラスチックの廃棄軽減、Surfaceなどハードウェア製品の外装やパッケージの見直し――を通じて廃棄物ゼロを目指す。生態系についても、「2025年までにMicrosoftが使用するビルやデータセンターを上回る広さの土地を保護」(藤井氏)し、AI for Earthの一環である「Planetary Computer(プラネタリーコンピューター)」を提供するという。
Planetary Computerは、「地球環境の維持改善に必要とされるクラウドツールを開発するための基盤」(藤井氏)といい、Microsoft Azureを通じて遠隔探査データや気候データ、衛星画像を用いた土地データなどを利用でき、アプリケーション開発環境やホスティング環境が提供される。この説明会時点ではプレビュー段階だが、藤井氏によれば既に約4000人がサインアップし、試験的にアプリケーションを開発・運用しているという。
またMicrosoft Cloud for Sustainabilityは、脱炭素化に向けてテクノロジーを活用するため、顧客企業全体の二酸化炭素排出量などのデータを収集し、これを機械学習で分析して得られる洞察を提示するソリューションになる。クラウドでデータを利用するため、「リアルタイムに近い形のデータを保存できる。膨大なデータから自社が持続可能な事業運営に取り組むことができているのか、といったヒントを得られる。自社が設定した目標の達成状況を把握する仕組みも備え、次のアクションにつなげられる」と、藤井氏は説明した。
より身近な場所からサステナビリティー実現を目指す企業には、「Microsoft Emissions Impact Dashboard」も選択肢の一つになるようだ。これは、Microsoft AzureやMicrosoft 365などMicrosoftのサービス群に特化したダッシュボード機能のサービスになる。オンプレミスからMicrosoft Azureに移行した際の二酸化炭素の削減量の試算や、Power BIと連携した排出状況の可視化などができる。既にセブン銀行が「Microsoft Emissions Impact Dashboard for Azure」を利用して、二酸化炭素排出量の可視化・分析に取り組み始めたとのことだ。
Microsoftのサステナビリティーへの取り組みは、元Microsoft ResearchのLucas Joppa氏が2018年から中心となり進められてきた。日本マイクロソフトではサステナビリティー専任組織を設けていないが、全製品に対して環境に配慮する活動を会社全体で進めているとしている。