従業員が「キャリアを選び取る」働き方へ–シスメックスが挑むジョブ型人事

今回は「従業員が「キャリアを選び取る」働き方へ–シスメックスが挑むジョブ型人事」についてご紹介します。

関連ワード (「働く」を変える、HRテックの今、特集・解説等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 神戸市に拠点を置き、臨床検査機器などを展開するシスメックスは2020年4月からジョブ型人事制度を実施し、システム基盤としてタレントマネジメントシステム「SAP SuccessFactors」と従業員エクスペリエンス管理ツール「Qualtrics EmployeeXM」を導入した。同社は世界190以上の国で事業を展開し、従業員数は9500人以上に上る。

 同社のジョブ型人事制度や両ツールの活用方法について、DX戦略推進本部 デジタル企画部の門田裕樹氏と人事本部 グローバル人事企画部 部長の田島功規氏に話を聞いた。

 人材を経営資源の一つと捉えているシスメックスは、自社や従業員の持続的な成長に向けて、ジョブ型人事制度を導入した。2020年4月の開始時は管理専門職を対象とし、2021年10月からは一般従業員にも適用している。同社は新等級として、Global Grade(GG)とLocal Grade(LG)を用意。一般従業員のLGは1から4まであり、リーダーポジションのLG4は管理専門職のLG5と同様にジョブディスクリプション(職務記述書)、LG3以下はチームごとにミッションディスクリプション(業務内容や必要なスキルをまとめたもの)を作成する。

 シスメックスのジョブ型人事制度では、職務の明確化や役割に応じた報酬に加え、柔軟性も持ち合わせているのが特徴だ。例えば、長期的な人材育成に向けて、適性がなかったら別のポジションへ異動したり、パフォーマンスを十分に発揮できなかったら役割を限定して再挑戦したりできる制度や風土を整えている。

 「当社は、研究開発から製造、販売、サービス/サポートまで一貫して行っており、関係会社も複数展開している。そのため、『社内転職』のような形で自分の特性やライフステージに合わせてポジションを選ぶことができる」と田島氏は説明する。

 システムの導入により同社は、情報を集約して経営や人事に関する意思決定や施策の効果測定を行うとともに、人事情報を一元管理・可視化してグループ人材を最大限活用することを目指している。同社はもともと人事システムを機能ごとに保有していたが自動連携できておらず、紙保管のデータもあり情報が散在していた。その結果、人事データを十分に活用できていなかったという。

 SAP SuccessFactorsについて門田氏は「人事だけでなく経営を支える基幹システムとして採用した」と述べる。幅広い機能が搭載されていることや、ヘルスケア/ライフサイエンス業界での実績があることが決め手になったそうだ。同社は、コア人事、給与計算、タレントマネジメントの機能を利用しており、グループ全体における同システムの導入状況は現時点で7割程度だという。

 SuccessFactorsを活用したタレントマネジメントは、人事評価、後継者管理、育成管理という流れで行われる(図1)。人事評価ではパフォーマンス管理(PM)/目標管理(GM)モジュールを活用し、各従業員が通年目標を設定して年度末に上司が評価する。

 後継者管理ではまずPMモジュールを用いて、従業員の現在のポジションに求められるスキルやコンピテンシー(優秀な人材に共通する行動特性)と本人の能力の隔たりを把握。次に、上司との1on1ミーティングや関連する部門の管理専門職層を交えたディスカッションを行い、現ポジションおける従業員の育成状況を確認する。そして後継者計画(SP)モジュールにより、各ポジションの後継者候補を設定する。「これまでは、部長の後継者に現課長を据えたら今度は課長の後継者に悩む、といったことがあった。後継者の全体像が見えるようになったのは大きい」と田島氏は効果を振り返る。

 育成管理ではキャリア開発計画(CDP)モジュールを使って、現在と登用先それぞれに必要なスキルやコンピテンシーに基づき、育成計画を練る。後継者候補には、ハードルの高い業務の割り当てやPMモジュールを活用した360度評価も行う。門田氏は「従業員のデータを一元管理することで、評価者の中にある暗黙知を形式知に変えられる」と実感している。

COMMENTS


Recommended

TITLE
CATEGORY
DATE
イトーキ、オンラインストアでARによる家具の試し置きを可能に
IT関連
2022-09-03 17:25
Googleの「Firebase Hosting」がNext.jsとAngular Universalによる動的Webサイトもサポート、コマンド一発でデプロイ。Firebase Summit 2022
BaaS
2022-10-25 15:53
ビールの醸造かすを生分解性フィルムに変えるMi Terroが1.7億円調達
IT関連
2022-03-07 15:25
Google、UIのモック画像を示すとAndroidネイティブなコードの自動生成や既存コードの修正をしてくれる機能、Google AI Studioで実験的公開
Google
2024-06-24 22:01
LastPassに再びハッキング被害–機密情報にアクセスできるマスターパスワードが窃取
IT関連
2023-03-03 13:27
ウォレットアプリのKyashが49億円のシリーズD調達、累計資金調達額約128億円に
IT関連
2022-03-18 21:16
音声合成AIで“声の広告”制作 ナレーターいらずで効率化 エイベックス子会社が提供
アプリ・Web
2021-01-16 13:49
映画「シン・ウルトラマン」特報公開 「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン。」
くらテク
2021-01-30 22:30
BLE対応「Arduino Nano 33 BLE」とセンサー搭載「Arduino Nano 33 BLE Sense」がスイッチサイエンスより発売開始
IT関連
2022-01-18 23:46
primeNumber、「trocco」にフリープランを追加–データ活用の一連の流れを体験可能
IT関連
2023-02-11 11:51
三菱オートリース、約350の紙業務をデジタル化へ
IT関連
2021-05-17 05:07
ウェブサイト多言語化「WOVN.io」に「高精度住所翻訳」機能–住所をローマ字表記化
IT関連
2023-08-18 02:26
開発者にフォーカスしたCRM実現へ–Nutanixの元CEOが立ち上げたDevRevが約55億円を調達
IT関連
2021-07-15 04:51
米SnapがインドでShareChatの動画アプリMojと提携しCamera KitのAR技術を展開
ネットサービス
2021-02-12 06:01