パナソニックがサプライチェーンマネジメント事業の上場可能性を発表した理由
今回は「パナソニックがサプライチェーンマネジメント事業の上場可能性を発表した理由」についてご紹介します。
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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
パナソニックグループが、サプライチェーンマネジメント(SCM)の事業を統合し、株式を上場させる計画を明らかにした。法人向けビジネスを行うパナソニック コネクトの傘下でSCMソフトウェア専業のBlue Yonderを中心に、パナソニック コネクトの現場ソリューションカンパニーおよび技術研究開発本部の中から、Blue Yonderと密に連携する機能を組み合わせて、上場会社の組織を構成することになるという。
このことは、パナソニックホールディングスの2021年度連結業績発表の直前の時間帯となる2022年5月11日の午後4時30分からオンラインで行われた緊急会見で明かされた。パナソニック ホールディングスの楠見雄規グループCEO(最高経営責任者)や、パナソニック コネクトの樋口泰行CEOが出席した。
だが、発表内容はあくまでも「SCM事業の株式上場に向けた準備を開始」であり、上場の主体となる会社とその事業範囲の詳細が未定だったほか、上場予定時期や上場先の株式市場も国内外を含めて未定としている。さらに、検討の結果次第では、さらなる組織再編が必要になる場合があるといい、逆にSCM事業を上場しない結論に至る可能性もあるというなど幾つもの条件が伴う内容である。つまり、詳細が何も決まっていない段階での発表とも言えたのだ。
では、詳細が何も決まっていない内容をわざわざ経営トップが登場し、しかも“緊急”会見の形で発表した理由は何だろうか。その背景にはあるのは、ソフトウェアビジネスに対するパナソニックの危機感と緊張感だ。
パナソニックグループにとっては、これまでに経験がないスピードが求められるソフトウェアビジネスへの参入となる。業界のスピードに対応するために、体質改善が避けて通れない。
楠見氏は、「パナソニックグループが、スピード感を持ってやっていくことを世の中に示し、それをコミットする」と、今回の発表意図を語った。加えて、「もし、これでも世間のスピード感に合っていないなら、もっと加速しなくてはならない。そうした認識でいる」とも語った。
その危機感を人一倍強く持っているのが樋口氏である。樋口氏は、「SCMソフトウェア市場は成長市場であり、多額の資金が流入している状況。その結果、短期間に買収価格が上昇したり人材確保の難しくなったりする懸念がある。現時点から速く走らなければならない」と指摘した。
IT関連調査のGartnerによると、SCMソフトウェア市場では、2026年までに年平均成長率14.3%という高い伸びが予測されている。さらに、SCMソフトウェア分野でのクラウド比率は11%にとどまっており、顧客関係管理(CRM)の76%や人材資源管理(HCM)の78%に比べ、クラウド化が遅れているのは明らかだ。SCMは今後の市場成長が見込まれ、さらにクラウド化が見込まれる領域だけに、多くの企業が注目をしており、パナソニック コネクトは、2021年にこの分野へ243億ドル(約3兆1600億円)もの資金が流入したと試算している。
実際にパナソニックグループが買収したBlue Yonderの場合、2020年7月に20%の株式を取得した際の費用は8億1000万ドルだったが、2021年9月に残りの80%を取得した際には、70億8000万ドルにもなり、単純計算だが、わずか1年で2倍以上に値上がりしている。
樋口氏は、「Blue Yonderの事業に携わって感じたのは、業界の変化や進化が極めて速く、経営や意思決定のスピードも速いこと。言い換えれば、クラウド型のSaaSビジネスは、タイムリーに正しい意思決定を行えば大きく成長でき、企業価値を向上できる。それを強く実感している」とする。