「プラットフォームのためのプラットフォーム」として生まれたKubernetes
今回は「「プラットフォームのためのプラットフォーム」として生まれたKubernetes」についてご紹介します。
関連ワード (マルチクラウドの意義とテクノロジー、特集・解説等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
「クラウド元年」と呼ばれた2010年から干支が一回りして早くも12年が過ぎました。恐らく「クラウドを利用していますか?」と尋ねると、多くの人たちは、「利用している」と回答されるでしょう。さまざまな技術系の調査レポートを見ても、近年クラウド利用は、チャレンジする対象ではなく、もはや選択肢の1つとして数えられるようになってきているように感じます。
その背景にある理由の1つは、SaaS 型のクラウドサービスが世の中に増え、それらを利用することが個人の活動として、また、企業活動としても当たり前になってきていることもあるのでしょう。「クラウドの利用は怖いものではない。安心して使えるものである」という考えが世の中に定着してきている現れだと思います。
ところで、クラウドを利用しているとしても、「マルチクラウド」としての利用かどうか尋ねた場合はどうでしょうか。なお、顧客管理業務や、オブザーバビリティー(可観測性)機能をSaaSとして利用しているようなケースはカウントしません。あくまでワークロードを動かすシステムプラットフォームとしてのクラウドという観点で、マルチクラウドを利用しているでしょうか。
このような問いかけをすると、恐らく利用できているという回答は減ってくるでしょう。この原因として考えられるのは、マルチクラウドの利用にリスクがあるというわけではなく、マルチクラウドの利用に対する「投資対効果が本当にあるのか」「どのくらいの価値を生み出すことができるのか」というビジネス的な判断があるように思えます。
では、マルチクラウド利用のメリットはどこにあるのでしょうか。多くの方たちは、次のように考えているのではないでしょうか。「冗長化によるリスク分散」や「クラウドロックインの回避」と……。
しかし、リスク分散は本当にマルチクラウドのメリットと言えるのでしょうか。シングルクラウドにおける可用性の構成を考えてみると、特定の地域(リージョン)における複数のデータセンターで構成される「アベイラビリティゾーン」というものがあります。アベイラビリティゾーンを跨いだ構成にする「マルチアベイラビリティゾーン構成」をとることで、局所的な可用性の構成では、データセンターの災害対策(DR)の構成を裏側で行ってくれていることになります。
このようなマルチアベイラビリティゾーンで救いきれない事象が、複数のデータセンターを含む特定地域に関わる大規模障害です。リージョンでの障害が発生してもサービスを継続できるようにするための可用性の構成がマルチリージョン構成というわけです。
マルチリージョン構成は、ワークロードの稼働する拠点が国や大陸を跨って構成されています。そのため、クラウドを利用してのDR環境や事業継続計画(BCP)を考慮する場合は、マルチリージョン構成を検討することが一般的です。マルチリージョン構成をとる場合は、稼働拠点がグローバルに分散していることもあり、DRの観点だけではなくユーザー体験(UX)の向上を図っているケースもあります。そのため、マルチクラウド構成を用いて回避を強いられるようなリスクとは、ある特定地域を全停止させるような大規模障害や全世界に影響を及ぼすようなネットワーク機器などのクラウドプラットフォーム自体の基幹系障害のようなケースが想定されます。
このようにリスク分散という観点では、ほとんどの障害時におけるサービス継続は、シングルクラウド内部で完結することが可能なのが実際です。それでは、マルチクラウド構成を考えるメリットがどこにあるのでしょうか。