Z世代・ミレニアル世代を引きつけるのは「不安に向き合う施策」–デロイト調査
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デロイト トーマツ グループは8月1日、Z世代とミレニアル世代を対象とした年次調査の最新版「Z・ミレニアル世代年次調査2022」の結果を発表した。同日開催された報道機関向け説明会では、これらの世代は現在の生活や先行き不透明な将来に不安を抱いている傾向にあり、企業はそうした不安を軽減する施策を拡充する必要があるとの見解が示された。
同調査は2021年11月~2022年1月、世界46カ国における約2万3220人(日本は801人)のZ世代とミレニアル世代を対象にウェブアンケート方式で実施された。調査では、1983~1994年生まれをミレニアル世代、1995~2003年生まれをZ世代としている。世代の内訳は、Z世代が1万4808人(同501人)、ミレニアル世代が8412人(同300人)となっている。
同調査では「現在の勤め先を選んだ理由」(5項目まで選択可)を聞いたところ、Z世代は全世界/日本共にワークライフバランスや組織のカルチャーといった「職場での過ごしやすさ」の割合が高く、全世界で見ると学習・能力開発の機会など「個人の成長機会」も25%前後を占める(図1)。ミレニアル世代の回答結果も全世界/日本共にZ世代と似ているが、職場での過ごしやすさや個人の成長機会を挙げる割合がより高い。「日本において『海外出張のチャンス』は従来重要な項目だったが、コロナ禍で低い位置にとどまっている」と同社はコメントした。
「勤務先にどれぐらいの期間とどまるか」という質問に対して「2年以内に離職する」と回答した割合は、コロナ禍で全世界/日本共に低下傾向があるが、日本のZ世代に関しては2020年は29%、21年は32%、2022年は40%と上昇が続いている。
5年以上の勤続を希望する群と2年以内の離職を望む群に職場の満足度を聞いたところ、日本で双方の満足度に差があった上位3項目は、Z世代が「従業員ファースト」「サステナビリティー」「上長の指導・成長機会」、ミレニアル世代が「帰属意識」「学習機会」「ストレスへのサポート」だった(図2)。「これらの項目は従業員を引き留めるために重要となり得る」と同社は推察している。
「自分には組織の中で変革を推進する力があると思う」と回答した割合は、全世界ではZ・ミレニアル世代共に52%だったのに対し、日本ではZ世代が22%、ミレニアル世代が34%だった。また全世界/日本の両世代において、変革推進への関与を実感している従業員は長期の勤続を希望する傾向があるという。
希望する勤務形態に関しては、全世界/日本の両世代でハイブリッドワークと回答した割合が最も高かった。一方、2年以内の離職を望むZ世代に現在の勤務形態を聞いたところ、全世界では出社、ハイブリッドワーク、リモートワークの順に割合が高かったが、日本ではハイブリッドワークの割合が最も低かった。「日本では柔軟な働き方が可能な従業員ほど離職意向が低いといえる」と同社は説明した。
同調査では従業員のロイヤリティーを左右する要因のほか、「個人的に最も関心があること」(3項目まで選択可)についても聞いた。その結果、全世界/日本の両世代とも「生活費」の割合が最も高く、全世界ではZ世代が29%、ミレニアル世代が36%、日本ではZ・ミレニアル世代共に30%だった。
また「世界が気候変動に対処する限界に達している」と回答した割合は、全世界ではZ世代が75%、ミレニアル世代が73%、日本では同58%、同60%だった。また環境負荷を軽減するための行動について、実施経験がある、あるいは将来的に実施する項目を聞いたところ、例えば「再生可能な容器の使用」については、全世界ではZ世代が56%、ミレニアル世代が57%だったのに対し、日本では同31%、同35%だった。このことから「環境への危機意識が世界的に共有されつつある一方、個人の行動実践に関しては日本では普及途上である」と同社は見ている。
今回の調査結果から、デロイト トーマツ グループは「Z・ミレニアル世代が経済性を重視し、企業の見定め方にも特徴があるのは、現在の生活や先行き不透明な将来への不安があるためだと考えられる。不安を軽減し、働く上での安心感につながる施策が、Z・ミレニアル世代に訴求力を持つ可能性が高い」と考察する。
そして同社は、Z・ミレニアル世代を引きつけ、引き留めるために有効な施策を仮説立てた。施策には、報酬の増額や個人の成長機会の提供といった「長期にわたる経済的安定の訴求」、サステナビリティーに関する取り組み強化・情報発信や企業としての持続性向上といった「働く場としてのレジリエンスの強化」、私生活の変化に対応できる福利厚生制度やハイブリッドワークといった「柔軟な働き方の提供」がある。
「最近は新卒社員の初任給を上げたりインフレ手当てを支給したりする動きが見られる。ただ金銭面での施策は短期的なものであり、より本質的に対処するには個人の成長機会を提供したり、長期のキャリアビジョンを提示したりすることも必要なのではないか」と同社は説明した。