第51回:コロナ禍で増加した米国のひとり情シス

今回は「第51回:コロナ禍で増加した米国のひとり情シス」についてご紹介します。

関連ワード (「ひとり情シス」の本当のところ、運用管理等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 2019年に発生した新型コロナウイルス感染症は、感染者数5億1000万人、死亡者数623万人と世界中で猛威を奮いました。世界保健機関(WHO)がようやく「収束兆し」の見通しを発表しましたが、現在でも地域によっては人流が抑制されています。その一方で、コロナ禍でもビジネスを継続するため、リモートで仕事をする環境が求められました。テレワーク環境を構築するに当たり、どの会社でもIT担当者が奮闘したはずです。このようにコロナ禍でひとり情シスが多忙を極めたのは日本だけではありません。米国でも同じことが起きたようです。

 米国では、ひとり情シスを “One Man IT Department”(ひとり情報システム部) や “One man as an IT department”(IT部門としての一人だけの男)、“one-man IT shop”(IT個人商店) と呼ばれます。しかし、日本と比べて、米国ではひとり情シスがあまり一般的ではありません。その理由は、米国の中堅中小企業に複数のITスタッフが在籍していて、充実しているからではありません。まず米国は日本と異なり、古いシステムを長期間に渡って使いません。また日本よりもSaaSの種類がはるかに多いためシステムの内製化が不要で、発生する工数が多くありません。

 米国の情シスに相当する部門では、ヘルプデスクの業務が一般的で、ベンダーとの取次業務を主に行っています。システムを内製する際は、プログラミングのできるスタッフをより高い給与を払って新たに雇う必要があります。自分のジョブディスクリプション(職務記述書)に定義されていない場合は、仮にプログラミングのスキルがあったとしても、ヘルプデスク業務のスタッフが同じ給与で他の仕事を引き受けることはありません。

 ここが日本との大きな違いです。日本では、給与を抑えつつもいろいろできるスタッフを採用すると「良い人材が採れた」と考える風潮があります。しかしこれは、ITに関しては誤解による相互不信やトラブル、給与の不一致による転職などを生みやすいと言えます。

 米国はIT先進国ですが、中堅中小企業のテレワーク環境が充実しているというわけではありません。コロナ禍でも従業員の約85%がオフィスで働いていたと言われています。また、中堅中小企業の経営者の94%が対面でのやりとりが不可欠であると述べています。日本でも同じ考え方をする社長は多いでしょう。そのような中で外出禁止令が発令され、テレワーク環境の構築が喫緊の課題とされました。これもまた日本と同じです。

 米国でもネットの交流サイト(SNS)や掲示板で多くのひとり情シスが助けを求めていました。例えば、とある新任のひとり情シスからは「情シス1人当たりに何人の従業員を割り当てるのが妥当ですか? 会社の従業員数は55人で、CAD/CAM(Computer Aided Design/Computer Aided Manufacturing)もあります」という質問に対して、「情シスが1人なんて絶対にありえない!」「テクニカルサポートのできる若いスタッフを1人加えて、最低でも2人は必要」「CAD/CAMがあるなら、従業員55人でも情シスは3人必要でしょう」など、さまざまな回答が集まりましたがなかなか要領を得ません。

 会社のIT環境やユーザーのITリテラシーによっても対応が変わるので、確かに難しい問題だと思います。中には、「その仕事だと年3回のバケーションは取れないですね!」「Google検索は友達です!」「まずは一息入れてください。そして履歴書を作成して違う会社に応募してください!」「スタッフを追加採用できるにしても6 months of terror(恐怖の6カ月間)だ!」など、冗談とも言えない回答もありました。とはいえ、意外にも多くの人が、ひとり情シスの経験をアドバイスできるのだと感じました。

 米国の掲示板では「ひとり情シスにおすすめの本はありますか?」という質問がありました。多くの方から推薦されていた本は、オライリーでも出版されているThomas Limoncelli氏の書籍「エンジニアのための時間管理術」です。米国で2005年(日本は2006年)に発売された本ですが、いまだに米国の多くのひとり情シスが参考にしているようです。

 Limoncelli氏が考案した「サイクルシステム」を使って作業リストやスケジュール、さらに仕事とプライベート双方の長期的な目標を管理する方法が解説されています。長期的に行うプロジェクトと、すぐに行う必要がある割り込み作業の優先順位を整理することで、ストレスが少なく充実した1日を遅れると記されています。引用されている事例は古いですが、普遍的な要素も多く、上司とのコミュニケーションなどについてもノウハウが紹介されています。日本でも販売されているので、気になる方は手に取られてはいかがでしょうか。

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