第3回:流通サプライチェーンにおけるデジタル通貨の活用
今回は「第3回:流通サプライチェーンにおけるデジタル通貨の活用」についてご紹介します。
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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
第3回は、ブロックチェーンを適用した事例として、デジタル通貨フォーラムの小売り・流通分科会で行った実証実験を紹介する。
この実証実験では、小売り流通分科会に参加している複数企業で、流通サプライチェーンにおける企業間での受発注から支払いまでの一連の商取引の中で、ブロックチェーンを活用して商流と金流の連携をデジタルで完結させて一体化を図る取り組みを行った。
なお、デジタル通貨フォーラムとは、90社以上の企業・自治体などが集まり、日本におけるデジタル通貨の有用性の検討に取り組んでいるフォーラムである。ユースケースを検討する複数の分科会があり、小売り流通分科会はその中の一つである。
小売流通業界では、卸売(またはメーカー)と小売間の商取引業務の高度化、効率化を目指して、発注書、納品書、請求書などを企業間で電子的に交換するEDI(電子データ交換)が普及している。その一方、受発注システムは企業ごとに存在するために請求書の確認や支払い、支払い後の消込処理などの事務作業に人手が介在しており、担当者の負担となっている。
また業界の中で独立して発展してきた商慣習から資金移動のサイクルは長く、サプライヤーになるほど売掛金の回収が遅延して資金繰り悪化の要因となっている。店頭ではキャッシュレス決済の比率が増加し、売上債権を回収するまでの日数が増えている。
業界を取り巻く外部環境には、「電子帳簿保存法の改定」(2022年1月)、「インボイス制度の導入」(2023年10月)、「紙の約束手形の廃止」(2026年予定)などが挙げられ、法制度への対応としてもサプライチェーンにおけるデジタル化の推進が求められている。
実証実験では、小売・卸売の企業間におけるEDIデータ(流通BMS)を用いて、両社間の受発注から支払いまで一連の流れをデジタルで完結させて、主に資金決済業務における効率化の検証を行った。
具体的には、小売・卸売企業間の流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準、Business Message Standards)の受発注・入出荷に関するメッセージをブロックチェーンに格納し、全ての取引データの真正性を担保した上で共有させた。格納した取引データ内容から決済情報を作成し、あらかじめ発行しておいたデジタル通貨による決済・相手口座への送金を自動的に実行させた。
このように受発注から支払いまで一連の流れを自動化することで、担当者の負担となっている書類の照合・確認などの各種事務作業に対する業務負荷軽減の一定の評価を得た。
また、商流から金流を一体化することで受領(返品)時の都度払いを実現し、資金移動サイクルの短縮化が図れることも確認された。
実機検証の構成イメージと、実証実験に参加した企業の役割は以下の通りである。