破壊的イノベーションとは–誤解されがちな定義、重要な理由、事例
今回は「破壊的イノベーションとは–誤解されがちな定義、重要な理由、事例」についてご紹介します。
関連ワード (インターネットの未来、特集・解説等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
破壊的イノベーション理論は、既存の大企業にとって警戒すべき概念だ。自社の最良の事業を過剰に強化することには危険が伴う。メインストリーム市場に製品を提供するのは良いことだが、自社の現行製品で十分に対応できていない市場を、創造的破壊者が新しいビジネスモデルによってターゲットにする可能性がある。
ハーバードビジネススクールの教授であるClayton Christensen氏は、画期的な著書「イノベーションのジレンマ」で1990年代に破壊的イノベーションという概念を提唱した。この理論はそれから数十年にわたって大きな支持を得ている。しかし、これはある面で自らの成功の犠牲者となった。「広く認知されているものの、理論の核となる概念は多くの人に誤解されており、基本的な考え方がよく誤用される」とThe Harvard Business Review(HBR)は指摘する。
破壊的イノベーションとは、起業家がローエンドの市場や新しい市場に参入し、既存のビジネスモデルとは異なるビジネスモデルをそれらの市場で作り出すプロセスだ。こうしたビジネスモデルがメインストリームになると、創造的破壊が起きる。
すなわち、新しい会社は、見過ごされてきた顧客ベースをターゲットにして、より良い製品をより低価格で提供しようと努める。当初、既存企業はこの脅威を真剣に受け止めないため、創造的破壊者となり得る企業は足場を固めることができる。次に創造的破壊者が狙うのは、既存企業のメインストリームの顧客だ。メインストリームによって大量に採用されるものを作り出せば、市場の創造的破壊に成功したことになる。
破壊的イノベーションの定義は容易ではなく、全員がすべての例に同意することはないだろう。典型的な破壊的イノベーションは、単純に大変動の状況だけを表すものではない。新しい企業が既存企業の事業を多少揺さぶったとしても、そのシーンが破壊的イノベーションの1つであるとは限らず、単なるブレークスルーという場合もある。この理論に力を持たせ、分析モデルや予測モデルとして使用するためには、正確な定義が必要だ。
Christensen氏は、たとえばUberは、自身の定義に照らせば破壊的イノベーターではない、と主張した。Uberは2つの要件を満たしていないという。設立がローエンド市場や新しい市場ではなく、メインストリーム市場で評価を確立してから、それまでサービスを提供されていなかった顧客を低料金のソリューションによって引き寄せ始めた。また、低料金や配車サービスアプリの開発は、既存のモデルを持続させるものであり、創造的破壊をもたらすものではない。
誰もがそうだと考えているわけではなく、Uberは実際には破壊的イノベーターだとする見解もみられる。この観点からみると、Uberはオンデマンドの配車サービスを提供することで、最初にローエンド市場で足場を固めた。同社はローエンド市場向けサービスである「UberX」を立ち上げたときにようやく、メインストリームへの進出が可能になった。
創造的破壊の定義には議論の余地があり、変化する状況にChristensen氏の理論が適用されていることを考えると、なおさら意見が分かれるだろう。
創造的破壊は、静止したものではない。製品やサービスが非主流の顧客向けからメインストリーム向けへと進化することだ。このように定義することが重要なのは、プロセスの実験的な性質が結果よりも重視されるようになるからだ。破壊的イノベーションは常に成功するわけではなく、成功した企業すべてが創造的破壊者であるとは限らない。このプロセスは、ターゲット業界にこれまで存在しなかった新しいビジネスモデルを構築し、初期の段階ではニッチな顧客ベースに訴求するものだ。
イノベーションの主要因ではない。HBRによると、「創造的破壊理論は具体的なイノベーションやビジネスの成功全般に関するすべてを説明するものではなく、それは今後も決して変わらない」という。ただし、どのビジネスが成功するかを予測するのに役立ち、さらなる研究のための確固たる基盤が得られる。この理論は27年間にわたって学術的な注目を集めてきた。