行政のDXに必要なものは何か–宮坂学 東京都副知事に聞いてみた
今回は「行政のDXに必要なものは何か–宮坂学 東京都副知事に聞いてみた」についてご紹介します。
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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
日本の行政におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の進捗は? 課題は? 推進の決め手は? 東京都モデルの横展開は? これらの疑問について、東京都のDX推進の陣頭指揮を執る副知事の宮坂学氏に聞いてみた。
「行政のDXはおそらく世間の皆さんの想像をかなり下回っており、強い危機感を持っている」
宮坂氏は、東京都をはじめ日本の行政におけるDXの進捗について聞いた筆者の質問にこう答えた。「世間の皆さんの想像」レベルもそんなに高くないことを見越しての発言のようで、自らの足元を非常に厳しく見ているのが印象的だった(写真1)。
2022年9月15日掲載の本連載記事「東京都のDX推進は区市町村に浸透するか」がきっかけとなって、このほど宮坂氏に取材する機会を得たので、東京都をはじめとする日本の行政のDXについて同氏の基本的な考え方や手応えを聞いてみた。
ちなみに上記の記事は、東京都が9月9日、都内の区市町村を合わせた東京全体のDX推進を強化する方針や展開を打ち出した「東京のDX推進強化に向けた新たな展開」を発表したことを受けて書いたものだ。この発表では、都と区市町村を含めた東京全体のDXを効果的に進めるための新たな活動団体として「GovTech東京」を2023年に設立することも明らかにしている。
上記のように進捗についての厳しい見方を聞いたことを受け、行政のDXを進める上で最大の課題は何かと問うてみたところ、宮坂氏は次のように答えた。
「課題は数多くあるが、大局的な観点で言うと、デジタルによる利便性などのメリットをどうやって皆さんに説明し、使ってもらえるようにするのかが一番の課題だ。『馬を水辺に連れて行けても水を飲ますことはできない(You can take a horse to the water, but you can’t make him drink.)』という英国のことわざがあるが、今まさにそういう心境だ」
同氏が自らの心境を例えた英国のことわざは、「馬に水を飲ませてあげようと思って水辺まで連れていくことはできるが、水を飲むか飲まないか(喉が渇いているかどうか)は馬自身が決めることであり、人が無理やり飲ませることはできない」ことを表したものだ。つまり、「周りが機会を与えて支援することはできるが、最終的にそれを実行するかどうかは本人次第である」ことを意味している。
宮坂氏はこのことわざの解釈について、「多くの人たちがこれまでデジタルの必要性を感じてこなかった。ただ、デジタルの利便性などは一度知ってもらうと、もう後戻りできないものだと確信している。したがって、そのメリットをどうやって知ってもらい、試してもらうか。試してもらえば『水が飲みたくなる』と思うが、自らの意思でそう動いてもらうのは本当に難しいというのが実感だ」と説明した。
ただ、その意味では新型コロナウイルスの感染拡大が皮肉にもデジタルのメリットを広く知らしめた。宮坂氏は、「コロナについては不幸な出来事だが、一方で多くの人たちがデジタルの必要性を感じるようになった。DXを推進する立場としてはこの機会を逃さないようにしないといけない」との構えだ。