「メーカーの都合に振り回されたくない」–新日本製薬が“第三者保守”を選択した理由

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 新日本製薬は2022年7月12日にサポート終了を迎えた「Microsoft SQL Server 2012」の扱いに苦慮していた。同社では中期経営計画「VISION2025」に従って、ITやデジタルを活用して安心安全でより使いやすいサービス環境を顧客に提供し、また業務の効率化・自動化を推進する中期情報化戦略を「攻めのDX戦略」と位置付けて、フロントエンドの電子商取引(EC)システムからバックエンドの基幹システムの再構築に注力している。

 新日本製薬は1992年に創業した化粧品や医薬品に代表されるヘルスケア製品の製造・販売を行う従業員483人(2021年9月末時点)の企業である。中期戦略を進めるに当たっては、2021年から5カ年のロードマップを制作していた。ところが、コールセンターや電子商取引(EC)サイトからの受注を物流部門につなげる基幹システムで使用していた「SQL Server 2012が2022年7月12日にサポート終了となり、それに伴うバージョンアップが必要になったことから、当初想定していなかった予算確保やロードマップ変更の必要性が生じていた。

 これは、同社が計画するシステム刷新と、メーカーが指定する更新の計画が合わず、経営計画や中期戦略に従ったロードマップにのっとることができないことを意味し、予算と期間の両面で大きな支障をもたらす可能性がある。

 新日本製薬では、数年前からスクラッチで開発した業務アプリケーションをパッケージシステムへ段階的に切り替え、要件に合わせてカスタマイズしながらバージョンアップの必要性に応じて対応してきた。しかし、「攻めのDX戦略」を優先的に実行していくことを考慮した場合、SQL Server 2012のバージョンアップは投資効率が悪く、結果として必ずしも必要のないIT投資であると考えた。

 新日本製薬 IT本部管掌 執行役員の佐藤敦氏は「本来は2年に1度など計画的な保守・更新が必要だが、ハードウェアからパッケージまでバラバラに更新時期が迫ってくる」と語り、リミニストリートが提供している「第三者保守サービス」を検討した。「リミニストリートのサービスを使うと、われわれのビジネス視点で更新計画を進められるのは実に大きい」(同氏)

 日本リミニストリート 代表取締役社長の脇阪順雄氏は「明確なITロードマップを持ちながら、(新日本製薬のように)ベンダーサポート期間を理由に、私共にシステムをお預けいただくお客さまもいれば、(別分野への投資のため)IT予算の抑制を理由にお預けいただくお客さまもいる。今回のようにシステム移行までの支援を任せてもらう間はわれわれがシステムの保守をサポートし、手の空いたエンジニアのリソースを新しい分野に充ててもらう」と自社の姿勢を説明した。

 佐藤氏は「メーカーのリリース予定と自分たちの更新計画が一致しないケースがある。われわれはメーカーの都合に振り回されたくないし、あくまで主たるビジネスに注力するのが重要だと考えている」と第三者保守サービスを採用した理由を述べた。

 また、「(バージョンアップで)新機能が追加されたとしても、使わなければ宝の持ち腐れになってしまう。(SQL Serverを)基幹システムに用いる場合、関連機能の改善や処理速度の向上は望ましいが、例えば人工知能(AI)関連の機能などは不要になる。こうした機能強化のための値上げや更新を強要するのは(メーカーに)再考してもらいたい」と率直な意見を述べた。

 脇阪氏は、「ITの予算や人材が潤沢であれば、われわれの出番はない。ただ、通常の企業は限られた予算と人材でシステムを管理しなければならず、苦渋の選択を強いられる。われわれは、本当に必要なところにエンジニアを投入してほしいと考えている」と自社の役割を明示した。

 リミニストリートは、SAPやOracle、Microsoft、Salesforceなど、さまざまなエンタープライズソフトウェアシステムの第三者保守サービスを提供している。佐藤氏によると、新日本製薬とリミニストリートの出会いは偶然だったというが、「ハードウェア保守を提供する企業は多かったものの、(SQL Serverをサポートする)第三者保守サービスは他に見当たらなかった」という。

 新日本製薬では他にも、ロボティックプロセスオートメーション(RPA)を活用した業務効率化やコスト削減、ローコードを活用した基幹システムの内製化、コールセンターの刷新、マーケティングオートメーション(MA)ツールと連携したEC基盤の強化、OMO(Online Merges with Offline)との統合などを攻めのDX戦略として進めている。

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