NECと石坂産業、ローカル5GとAIを活用したスマートプラントで実証実験
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NECと石坂産業は、ローカル5G(特定エリアで使用する第5世代移動体通信システム)と人工知能(AI)を活用してスマートプラントの実現を目指す実証実験を、再資源化処理を行う石坂産業のプラントで実施した。実施期間は2022年10〜12月。実証にはインテルも参画した。
各社の役割は、NECがAIや遠隔・自律制御技術の導入、ローカル5G環境の構築、ローカル5Gによる大容量データ活用の提案と実証を担当し、石坂産業は廃棄物処理プロセスにおける知見の提供、実証実験のための処理プラントの提供を担った。またインテルは「Xeonプロセッサー」をはじめとしたさまざまなコア技術の提供、ローカル5G構築やAI実装の支援を行った。
NECと石坂産業は、スマートプラントの実現に向けて2020年7月に協業を開始している。今回の実証では、ローカル5Gの高速・大容量・低遅延の特徴を生かして、重機の稼働状況や廃棄物の処理量をリアルタイムに可視化し、作業効率の改善検討やリスクの把握を実施した。また重機の遠隔操縦により、作業の効率化・省人化に加え、過酷な現場から離れた安全・安心な作業環境の実現に向けて検証を行った。
プラント内の作業状況の可視化については、廃コンクリート処理プラント内に、Xeonプロセッサー搭載サーバーを活用したローカル5Gの仮想化無線ネットワーク(vRAN)環境を構築し、作業エリアと重機に設置したカメラやセンサーからリアルタイムにデータを収集した。また、インテルの「Coreプロセッサー」を搭載したPCを用いて、現場での作業状況の把握、作業データの数値化、作業安全性の確認に関する実証を行った。
プラント内の重機・ピット状況の可視化では、重機の動きやピットの状況をセンシングし、ディスプレイ上に再現して可視化した。リアルタイムに状況を判別することで、重機に無駄な動きがないか確認でき、改善ポイントの発見や業務効率化の検討につながったという。
また作業状況の可視化では、主要業務(ホッパーによる廃棄物の投入)と間接業務(粉砕や積替え)の割合、廃棄物を荷下ろししてから再資源化処理するまでの作業推移と廃棄物の一次処理にかかる時間を可視化した。これらにより、現場の目視でしか把握できなかった作業状況を定量化でき、1時間における廃棄物の投入量・投入平均回数や粉砕時間などを把握できた。
現場リスクの可視化では、プラント内の危険区域に接近した人物を映像解析AIで常時把握するとともに、重機のエンジンの状態をモニタリングした。管理者が遠隔で現場を確認できることで、接触事故のリスク低減とさらなる安全性の担保が可能となった。
重機の遠隔操縦では、混合廃棄物処理プラント内に、Xeon搭載サーバーと無線技術を活用して環境構築した。プラント内と重機に設置した8台のカメラ映像をCore搭載PCで処理し、NECのネットワーク予測・制御AIである適応遠隔操縦システムを活用して、安定した遠隔操縦を可能にした。
また粉じんが多く、ベルトコンベアーなどの機器が複雑に設置されたプラント内環境のローカル5G電波環境の情報も収集した。入り組んだ場所での無線状況を把握することで、さらなる利用エリアの拡大や新たな用途での効率化・省人化の実現に向けて、多くの知見を得られた。
廃棄物処理業界では人手不足が深刻な課題になっている。また石坂産業の再資源化プラントでは、重機と作業員が同じヤードで連携して作業する際の接触事故のリスク低減や、粉じんの多い労働環境の改善が課題となっている。
NECと石坂産業は、AmazonとGlobal Optimismが共同で立ち上げた、パリ協定の目標より10年早く2040年までのネットゼロカーボン達成を約束する「気候変動対策に関する誓約」(The Climate Pledge)に署名している。両社は、今後もスマートプラント化の促進に向けて、さまざまな実証を進めていくとともに、炭素排出量の削減に向けて共同作業を加速していく。