小林製薬、DX方針解説–得意とする「時代を捉えた商品開発」にアクセル
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小林製薬は8月8日、自社のDX方針について説明会を開催した。同社は2023年1月、DX戦略の強化に向けて「CDOユニット」を新設し、社長直下に配置した。
CDO(最高デジタル責任者)ユニットのユニット長を務める石戸亮氏は、2006年にサイバーエージェントに入社後、CyberZの取締役やグーグルのインダストリーマネージャーなどを歴任。2021年から小林製薬のデジタル戦略アドバイザーとして、DX推進委員会の活動をリードするとともに、デジタルを活用した製品開発や経営戦略の立案に携わってきたという。同氏は現在、ユニット長のほか、自身が設立した石戸商事の最高経営責任者(CEO)とパイオニアの経営戦略本部 チーフ・デジタル・オフィサーも務めている。
石戸氏は小林製薬について「絶えざる創造と革新によって新しいものを求め続けてきた」と説明。2008年には創業事業の卸事業を売却し、製造販売事業に集中。M&Aなどを積極的に行い、ビジネスモデルを変革しながら成長を続けてきたという。1969年には、くみ取り式が主流だった家庭用トイレの水洗化に目を付け、水洗トイレ用の芳香洗浄剤「ブルーレット」を発売した。
小林製薬は現在、「環境変化による新たなニーズをいち早く捉え、あったらいいなをカタチにする」というブランドスローガンのもと、生理による不調を軽減する医薬品「命の母ホワイト」、認知機能を維持する機能性表示食品「健脳ヘルプ」など、社会課題に伴うニーズに対応する製品を数多く展開している。
近年のデジタル化を受けてヘルスケア業界では、顧客データを基にした製品開発や健康維持を支援するウェアラブルデバイスの普及などが見られる。こうした中、石戸氏は「小林製薬の特徴を生かしながら、さらなる変革を推進する」と強調。同社の特徴には、先述した環境変化をアイデアにする力のほか、「年間約5万7100件に上る全社員による提案」や「157ブランド・1017SKU(在庫管理上の最小品目数)に及ぶ多種多様な商品数」があるという。
小林製薬は、自社のブランドスローガンに基づく絵姿「あったらいいなDX」を作成(図1)。最終的なゴールとして「顧客/従業員体験(CX/EX)の向上」、そのための戦略として(1)あったらいいな開発のDX、(2)全社員でDX、(3)生産性向上――を掲げている。
同社は「DXロードマップ」を策定し、2017~2030年を「導入/実行期」「実践/調整期」「展開/創造期」「飛躍/ノーマル期」に分けている(図2)。ロードマップでは、戦略1~3に加え、IT企業による講演や心理的安全性の研修といった「風土改革」も並行して推進している。
同社のIT部門は2017年頃から、「守りのIT」だけでなく「攻めのIT」にも着手し、製造の自動化に取り組むとともに、最新技術を発表し合う「おもしろ技術大会」を毎年開催している。デジタル人材の育成も進んでおり、現在96人が市民開発を行えるほか、テクノロジーの情報交換を行う部活動「Tech部」には101人、作業の自動化に取り組む部活動「RPA部」には97人在籍している。
石戸氏は「これまでさまざまな取り組みをしてきたが、少しばらつきがあるので、調整して次のステージに行きたい」とし、「最終的には『DX』という言葉を使わないぐらい、当たり前にすることを目指している」と意気込みを語った。
(1)のあったらいいな開発のDXでは、データやAIを活用したアイデアの創出を目指す。これまでアイデアを創出する際、主な情報源は社員自身の経験や身近な物事・人物だったが、「新規性の高い困りごと」を見過ごしてしまうリスクがあった。そこで「あったらいいなAI」を構築し、中国や米国のグループ会社も含む社内提案や世界中のトレンド情報を読み込ませることで、従来では見過ごしていた困りごとに対応する製品アイデアの創出を図る。
その一環として小林製薬は8月、グループ会社を含む国内の全社員約3200人を対象に、Microsoftの「Azure OpenAI Service」を活用して社内AIチャットボット「kAIbot(カイボット)」を構築し、運用を開始した。同社は創立記念日の8月22日に「全社員アイデア大会」を毎年開催しており、2023年はkAIbotを用いて新製品のアイデアを考えることを予定している。
また、同社は基本的に使い切り型の製品を小売店などで提供しているが、顧客が自身のデータを登録して継続的に利用するデジタルサービスの開発にも取り組んでいる。IoTデバイス、ウェブサービスアプリケーション、検査診断、データといったテーマのもと、2023年7月時点で32件のアイデアを検討している。石戸氏は「まず1つ、成功事例を生み出す」と力を込めた。