AWSから転身して半年、マイクロソフトのクラウド事業責任者は何を語ったか
今回は「AWSから転身して半年、マイクロソフトのクラウド事業責任者は何を語ったか」についてご紹介します。
関連ワード (松岡功の「今週の明言」、経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本マイクロソフト 執行役常務 クラウド&ソリューション事業本部長の岡嵜禎氏と、Salesforce Tableau事業担当 シニアバイスプレジデント 兼 ゼネラルマネージャーのPedro Arellano氏の発言を紹介する。
日本マイクロソフトは先頃、クラウド事業の最新動向について記者説明会を開いた。岡嵜氏の冒頭の発言はその会見の質疑応答で、同社のクラウドサービスにとって最も競合相手となるAmazon Web Services(AWS)のサービスと比べて「足りないところ」を聞いた筆者の質問に答えたものである。
会見全体の内容については速報記事をご覧いただくとして、ここでは岡嵜氏の発言に注目したい。
「Microsoft Cloud」のサービスは、図1に示すように6つの領域からなる。同氏は自らが率いるクラウド&ソリューション事業本部の役割として、「マイクロソフトクラウドのスペシャリストとして、お客さまが取り組むあらゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)テーマに対し、最適なソリューションをご提案する」ことだと説明した。
Microsoft Cloudについてはマーケティングの観点から「表現の仕方」が変化してきた背景がある。それについては、2022年10月21日掲載の本連載記事「マイクロソフトによる『Microsoft Cloud』の説明が新鮮に聞こえたのはなぜか」で解説したので参照していただきたい。
さて、本題。会見の質疑応答で、筆者は「日本マイクロソフトにジョインして半年になる岡嵜さんの目から見て、最も競合相手となるAWSのサービスと比べて、Microsoft Cloudの方が優れているところと足りないところを端的に挙げていただきたい」と聞いた。会見の場で競合相手との比較について質問するのはオーソドックスなことだが、今回の場合は「日本マイクロソフトにジョインして半年になる岡嵜さんの目から見て」というのがポイントだ。
なぜならば、同氏は日本マイクロソフトに2022年8月1日付けでジョインするまで、アマゾンウェブサービスジャパン(AWSジャパン)の幹部として会見などにも頻繁に登場し、同社の「顔」として活動していたからだ。外資系ベンダーの幹部人事では珍しいことではないが、クラウドサービスの「2強」の間でのキーパーソンの転身だけに大きな話題を呼んだ。同氏はまず「優れたところ」について次のように答えた。
「お客さまに多様な選択肢を提供するため、幅広いソリューションをそろえていることだ。6つのソリューション領域に対して、当社が長年にわたって培ってきたテクノロジーやノウハウを持つエキスパートが、お客さまのさまざまなニーズにお応えできる体制を整えている。さらに、当社自身がこれまで経験してきたトランスフォーメーションのノウハウもお役立ていただけると考えている」
一方、「足りないところ」については、「(優れたところで述べた)そうした強みをもっとお客さまにお伝えしていかないといけない。当社のクラウドをもっと知ってもらえるように尽力したい。もちろん、私たちとしてはそうした活動に注力しているつもりだ。だが、全てのお客さまに本当に理解していただけているか。まだまだ足りないところがあるのではないか。そうした姿勢で今後も臨んでいきたい」と語った。
「AWSと比べてどうこうではなく」といったスタンスの巧みな回答だが、それでもすなわち「プレゼンテーション力が足りない」との指摘は興味深いところだ。それが自らの役目ということだろう。
日本企業もこうしたトップシェアを争う競合間でのキーパーソンの異動がもっとダイナミックに起きてもいいのではないか。それが日本のビジネスやマネジメントの活気につながるはずだ。その意味でも岡嵜氏の手腕に注目していきたい。