「ひとの学びで、地域は進む」–ベネッセ、45自治体とリスキリングに関するネットワークを発足

今回は「「ひとの学びで、地域は進む」–ベネッセ、45自治体とリスキリングに関するネットワークを発足」についてご紹介します。

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 ベネッセコーポレーション(ベネッセ)は5月10日、全国45自治体と「全国自治体リスキリングネットワーク」を発足した。同日に行われたネットワーク発足のキックオフイベントには12自治体が参加し、取り組み事例の紹介を行った。

 同ネットワークは、自治体へのリスキリング支援と自治体間の情報交換を目的にしている。同社は、自治体間の交流を促進することで、全国の中小企業・自治体のDX推進や市民のリスキリング推進を目指すという。

 ベネッセは2020年12月から「Udemy Business」を活用した行政・自治体向けの人材育成プログラムを提供している。Udemy Businessは、ベネッセが業務提携を結ぶ米Udemyが運営するオンライン教育プラットフォーム。AI・機械学習(ML)やデータ分析など幅広い講座を展開している。2023年度においては、全国50以上の自治体が導入する予定だという。

 イベントに登壇した、ベネッセ 社会人教育事業本部 本部長(Udemy日本事業責任者)の飯田智紀氏は、将来的に日本の労働需給には大きなギャップが生じるとした。自治体では、デジタル化の遅れや地域産業の衰退、人材不足、非正規雇用の雇止めが起きるといった課題が挙げられ、デジタル人材の育成が急務である一方、「IT知識の差」や「DXのために何を学ぶべきか分からない」という声が自治体から寄せられているという。

 また、同社によると各自治体は似たような課題を持っているものの、課題の共有やDX人材育成の先進事例を知る機会がなく、自治体間で情報交換ができるプラットフォームが必要だったという。このような背景から、同社は自治体リスキリングネットワークを発足。自治体に特化したプラットフォームの運営を通して、全国の自治体や中小企業のDX推進、市民のリスキリング支援をより強化するという。

 具体的な活動としては、参加する自治体が集結し、リスキリングに対する意気込みや取り組みを宣言して周知したり、先進自治体や専門家がリスキリングの最新情報を提供するための場を設けたり、自治体間の連携促進と取り組み事例の知見を共有する場として、半期ごとにオンラインで共有会を開催したりする。

 同ネットワークへの参加は無料で、現時点では福島県須賀川市、埼玉県、群馬県前橋市、石川県加賀市、三重県桑名市、鳥取県、熊本県など、45自治体が参加している。

 飯田氏は、同ネットワーク発足に対して「『ひとの学びで、地域は進む』という思いでわれわれはこの事業を立ち上げた。既に45の自治体が参加表明をしているが、この輪を広げることで地域におけるリスキリングの加速を支援したい」と思いを語った。

 同イベントに登壇したジャパン・リスキリング・イニシアチブ 代表理事の後藤宗明氏は、リスキリングは組織が実施責任を持つ「業務」であり、従業員からすると「新しいことを学び、新しいスキルを身に付け実践し、新しい業務や職業に就くこと」だと定義した。

 一方、中小企業では、自主的な個人の「学び直し」とリスキリングが混同されている。本来リスキリングは就業時間内に行うべきであるものの、実際には業務時間外に行っており、従業員個人の自発的な学びに依存している状態にあるという。また、費用面においてもリカレント教育のような大学院の費用負担ができる人は限られており、中小企業がリスキリングを推進するには助成金が必要になる。そのために、自治体がリスキリング支援を行う必要性があると同氏は説いた。

 同ネットワークに参加し、企業と求職者に対するリスキリングを支援する鳥取県では、企業向けに「鳥取県オンライン学習受講促進事業」を展開している。これは、ベネッセが提供するUdemyを鳥取県が企業の代わりに契約し、県内企業に対して1~3のライセンスを交付する仕組みだ。

 対象となる企業は、新型コロナウイルス感染症からDXや業態転換を目指す県内企業で、同県に直接申し込むことで利用できる。2021~2022年度における受講実績は、32社188人が受講し、計486講座を受講した。また、学習時間の約65%がデジタル関連スキルの習得に利用しており、「システム開発関連講座」や「データサイエンス関連講座」「クラウドコンピューティング関連講座」などがあるという。

 同県では、求職者向けの事業も展開しており、就職やキャリアアップを目指す県内在住の人を対象にしている。中間団体としてサポート事業者を置き、ハローワークとの連携で求人があった人にUdemyの受講環境を提供するという。これにより、キャリアコンサルタント、学習支援、就職支援を一貫して支援できるとしている。

 同事業内容を説明した鳥取県商工労働部雇用人材局 産業人材課未来創造人材室 課長補佐の田中拓也氏は「この施策を進める中で、企業によって受講状況に大きな差が生じたり、求職者のニーズに応じた学習計画の立案が難しかったりと、課題が見えてきた」と話す。今後は、学べる環境づくりだけでなく、「何が学べるか」「なぜ学ぶか」といった動機やモチベーションづくりや「学ぶ組織、カルチャーづくり」が、オンライン学習受講促進事業を進めるための次のステップとして必要だと述べた。

 最後に、ベネッセ 社会人教育事業本部 事業開発課 課長の大宮千絵氏が、同ネットワーク設立に対する思いを語った。

 「自治体の皆さまとの対話を通して、DX推進が急務であること。一方で推進できる人材が不足しているという悩みを聞いてきた。自治体の皆さまの人材育成に取り組むことで、日々の業務や行政サービス、ひいては市民の皆さまの暮らしが良くなると思い、ベネッセとして取り組むべき社会課題であると考え、支援をしてきた。このリスキリングネットワークを生かし、先進事例などの情報交換を行うことで、ここからさらにリスキリングが進み、社会が良くなることを目指して支援を続けていきたいと思う」

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