「IIJのSI事業はアプリ開発にも乗り出すのか」との質問に鈴木会長は何と答えたか

今回は「「IIJのSI事業はアプリ開発にも乗り出すのか」との質問に鈴木会長は何と答えたか」についてご紹介します。

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 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、IIJ 代表取締役会長の鈴木幸一氏と、デル・テクノロジーズ ストレージプラットフォームソリューション事業本部 システム本部 ディレクターの森山輝彦氏の発言を紹介する。

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は先頃、2022年度(2023年3月期)の決算と2023年度(2024年3月期)の業績見通しについて発表した。鈴木氏の冒頭の発言はその発表会見の質疑応答で、これまでネットワークインフラに関連する案件を軸としてきたシステムインテグレーション(SI)事業において、「今後、アプリケーションの開発にも乗り出す考えはあるか」と聞いた筆者の質問に答えたものである。

 IIJの2022年度の連結業績は、売上高が前年度比11.7%増、営業利益が同15.6%増と、いずれも二桁成長の増収増益だった。2023年度も、売上高が同13.2%増、営業利益が同15.7%増と、引き続き二桁成長の増収増益を見込んでいる(図1)。

 鈴木氏と共に会見に臨んだ同社 代表取締役社長の勝栄二郎氏はこの業績推移について、「2022年度は前年度より引き続き高需要が継続し、大型案件も複数獲得できて売上高が伸びた。2023年度も高需要が続き、二桁成長の増収によって利益も拡大すると見込んでいる」と手ごたえを感じている様子だ。

 今回の決算で筆者が注目したのは、SI事業が特に好調に推移していることだ。同社の発表によると、「SI分野では、ネットワーク構築を中心とした需要が活況でシステム構築の売上高は前年度比21.4%増となり、受注額および受注残高はそれぞれ14.6%増、10.8%増となった。システム運用保守は、構築案件より生じる継続的なシステム運用の増収に加えて、マルチクラウド需要の高まりによるクラウド関連サービスの増収などもあり、売上高は前年度比13.4%増となり、受注額および受注残高はそれぞれ22.0%増、14.3%増となった」とのこと。とりわけ、21.4%増というシステム構築の売上高の伸びは、他のシステムインテグレーター(SIer)と比べても高い水準だ(図2)。

 IIJといえば、ネットワークサービス、クラウド、そして最近ではモバイル分野でも話題に上ることが多くなったが、ネットワークインフラに関連するSIを手掛けることで法人向け事業を拡大してきた。そうした中で、筆者は「IIJが企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するコンサルティングに力を入れ始めた」との一部報道を見かけた。だとすると、同社は好調なSI事業のさらなる拡大に向けて、業務などのアプリケーション開発にも乗り出したのではないか。この点について、同社を創業してこれまで経営に携わってきた鈴木氏にぜひ確かめてみたいと思い、今回の会見の質疑応答で聞いてみた。すると、同氏は次のように答えた。

 「日本のSIerはアプリケーションを開発することで成長してきた。一方、IIJのSI事業はネットワークインフラを軸に独自のサービスを構築して提供するスタイルでこれまでやってきており、基本的に方向性が違っている。業務などのアプリケーション開発を行っていくためには、エンジニアによるマンパワーが相当必要になる。従って、IIJとしてそうした領域に乗り出すことは考えていない。当社のSIとして今後力を入れていきたいのは、ネットワークとマルチクラウドに関するインテグレーションだ。この分野ではコンサルティングも積極的に手掛けていきたいと考えている」

 独自のインテグレーターとしての矜持を感じたコメントだった。IIJはこのほどKDDIと資本業務提携し、IIJの発行済み株式総数の10%分をKDDIがNTTから買い付けて出資することを発表した。こうした動きの背景にも、IIJのSI事業への高評価があるのかもしれない。

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