「ポストSIビジネス」でIT部門の自立化を支援するPwCコンサルティングの取り組み

今回は「「ポストSIビジネス」でIT部門の自立化を支援するPwCコンサルティングの取り組み」についてご紹介します。

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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 日本の伝統的なシステムインテグレーション(SI)ビジネスが縮小傾向にある。ユーザーの要望に応えるだけの受け身の姿勢では、投資に見合った効果を十分に引き出せないからだ。実際、日本企業の生産性は一向に上がらないし、世界をリードするようなプロダクトやサービス、ビジネスを創り出せない状況が続いている。そうした中、経営者はデジタル変革(DX)への意識を高める一方、ITベンダーやシステムインテグレーター(SIer)に頼り過ぎた事業部門やIT部門がその期待に応えられるだろうか。

 PwCコンサルティング 専務執行役 パートナーでコンサルティングサービス&プラットフォームを担当する桂憲司氏は「自らの足で歩けるようになること」と語り、DXを推進するシステムの企画から構築までをユーザー自身の手で行えるようになることを説く。また、IT部門がSIerやITベンダーに全て丸投げという状況から脱せるよう、同社では、自立化を伴走しながら支援する方法論やプログラムを用意する。

 これをテクノロジーとビジネスの両面から支援するのが、全社員6割超の約2500人が所属するコンサルティングサービス&プラットフォームになる。この10年で陣容が約10倍に拡大するほど需要が高まっており、サイバーセキュリティやデータ分析、ブロックチェーン、量子コンピューティング、人工知能(AI)などのテクノロジーコンサルタント、SAPなどの導入支援ソリューションコンサルタント、業務改革やサプライチェーン、人事、リスク管理などのビジネスコンサルタントを配置する。

 PwCグループの業種別サービスや会計監査などの専門組織、グローバルネットワークとも連携する。テクノロジー部門はテクノロジーだけ、ビジネス部門はビジネスだけを支援するのではなく、チームとなってユーザーの目標実現に取り組む。

 PwCは、その方法論を「BXT」(Business eXperience Technology)と呼ぶ。これまでに蓄積された「ビジネスについてのナレッジと経験」と「テクノロジーの知見」「エクスペリエンス創出のアイデア」を融合した上で、顧客体験を軸にビジネスを再編し、デジタルテクノロジーによってイノベーションの実現を支援するというもの。

 別の言い方をすると、ビジネスとテクノロジーの観点から目標に向かってプロトタイプ作りを繰り返し、イノベーションを創出していく。PwCコンサルティング 執行役員 パートナーの矢澤嘉治氏によると、BXTには「ビジネスに対するインサイトを持っていること」と「デジタル領域をキャッチアップしていること」「少し先の未来を創り上げること」の3軸があるという。

 例えば、「不良品を半分に削減する」という目標があるとする。現場はAIで画像を解析して不良品を見つけようとするが、「画像解析で不良品を発見しても、不良品そのものが減るわけではない」(矢澤氏)。なので、PwCではまず削減のためのモデルを用意し、ユーザーに体験しながら実現のイメージを持ってもらう。さらにデザイン思考の専門家らがアイデアを引き出し、プロトタイプ、ビジネスモデルの作成へと進めていく。

 少し未来の工場を模型で作り、人やモノの流れなどから「ああしたらいい、こうしたらいい」と製造工程を改善していく。PwCのビジネス部門やテクノロジー部門がそれぞれに突き詰めていくのではなく融合した形で支援し、ユーザー自身が企画や業務要件、提案依頼書(RFP)、システム要件を作成していけるようにする。

 そうしたことを実現させるため、5年ほど前に東京・大手町に開設したのがエクスペリエンスセンターだ。業務改革や新規事業などのデザインやアイデアを引き出し、そこから実現可能な未来を描く。例えば、メーカーなら工場の模型を作ってセンサーから集めた人や物の動きなどのデータを収集・分析し、課題解決策を実装していく。それをアジャイルのように繰り返し、デジタルを駆使した未来の向上を実現していくわけだ。

 システムを近代化したら、その先はIT部門が引き継ぐ。「なぜこうなっているのか」と近代的なシステムの考え方などを理解し、新規事業の立ち上げによる業務フローの変更、データの整合性など、ITベンダーらに頼らずに済むようにする。プロジェクト管理や人材育成などの力も備えられるように支援する。

 将来を担う若手もプロジェクトに入ってもらう。「デジタルは会社の命運を賭けるもの。だからこそ、若手を出してもらう」(桂氏)。若手メンバーが業務とテクノロジーの両方から、なぜそうなったのかを理解できるまで伴走する。データを活用して自分で課題を解決できるようにする。そうしたユーザー部門やIT部門の自立が、間違いなくSIerに構造転換を迫る。

 そこで、SIerはコンサルティングの強化に乗り出すだろうが、自分で考えて行動するIT部門らは伴走型の一歩先を行くサービスを求めるようになるはずだ。従来型SIビジネスの延長線に未来は開けそうにない。

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