NTT Comら、スマートグラスを活用した看護を実証–ケアの質向上と負担軽減の両立へ

今回は「NTT Comら、スマートグラスを活用した看護を実証–ケアの質向上と負担軽減の両立へ」についてご紹介します。

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 愛媛県四国中央市の石川記念会HITO病院(HITO病院)、遠隔医療システムを提供するスマートゲート、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は7月14日、スマートグラスを活用した未来型看護の実証実験を開始したと発表した。

 医療業界では少子高齢化に伴い人材不足が課題となっており、特に救急診療を行うHITO病院では24時間体制で人材を配置する必要がある。加えて、医師の時間外労働の上限を原則年960時間、月100時間未満とする「医師の時間外労働の上限規制」が2024年4月から適用され、医療従事者の働き方を見直す局面に来ているという。

 同院は2017年からIT活用に取り組んでおり、院外カルテやビジネスチャットツールを導入して、看護師らの時間外労働を約6000時間削減したり、脳卒中専用病室(SCU)で働く医師の週休3日制を実現したりしている。その中で、スマートグラスによる遠隔支援を訪問介護で試験的に実施したところ、ハンズフリーの利便性を実感し、看護全般での活用を目指すようになった。

 同日開催の説明会に登壇したHITO病院 理事長の石川賀代氏は、現状の課題として(1)気の抜けない見守りによる看護師の心理的負担、(2)加齢性難聴で音声によるコミュニケーションが難しい患者への対応、(3)ナースコールが複数鳴動した際の対応や優先順位付け、(4)ケア中は手がふさがり、スマートフォンを利用できない点――を挙げた。

 そこで同実証では(1)スマートグラスとネットワークカメラを活用した患者の遠隔見守り、(2)ハンズフリーによる現場コミュニケーションの高度化と医療サービスの質向上――を検証する。

 (1)では、スマートゲートの遠隔医療システム「スマートキュア」を通して病室に設置したネットワークカメラの映像をスマートグラス上に投影。これにより、看護師は遠隔で病室を巡回することが可能となり、きめ細やかな見守りや看護師の身体/心理的負担の軽減が期待される。

 加えて、通常のナースコールを進化させた機器「IoTボタン」を設置。看護師を必要とする際にボタンを押すとスマートグラスに通知を送るほか、患者への応対状況を可視化してケアの遅延や漏れを防ぐ。

 (2)では、ハンズフリーの特性を生かし、介助の手を止めることなく安全かつ正確に患者とコミュニケーションを取れるようにする。NTT Com 5G&IoTサービス部 5Gサービス部門 担当部長の久保田真司氏は「看護師はスマートグラスを装着していない時と同様に動くことができる」とアピールした。

 同実証では、HITO病院がソリューションの評価・分析、スマートゲートがスマートキュアとスマートグラスの連携、ソリューションの機能拡張、NTT Comが同実証の統括、ソリューションの横展開、ビジネスモデルの構築、通信環境の配備を担当する。

 スマートグラスの機種に関しては、実証では米国を拠点とするVUZIXの「Vuzix」を使用するが、将来的には機種に依存しない状態を目指している。NTT Comはスマートグラスにおけるビジネスパートナーを募集している。

 3者は2023年度内をめどに、スマートグラスを活用した未来型看護のサービス化を目指す。同実証ではHITO病院の一部病棟を対象とし、時間帯は夜勤時を中心とする。期間は1カ月ほどを予定しており、問題点を洗い出してサービス化につなげる意向だ。実証で利用するスマートグラスは4台だが、将来的には看護師1人1台の利用を想定している。

 3者は今回の取り組みをステップ1とし、2024~2025年のステップ2では、AIや画像認識などの先端技術を活用した機能拡充や全国医療機関への横展開、2026年以降のステップ3では地域間での情報連携やビッグデータの蓄積・活用による医療の質向上を目指している。
スマートグラスを装着して見える映像。遠隔からでも患者とコミュニケーションが取れる

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