サーバーレスを適用する勘所–SOMPOシステムズが事例報告
今回は「サーバーレスを適用する勘所–SOMPOシステムズが事例報告」についてご紹介します。
関連ワード (クラウド等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
近年は、業務アプリケーションの稼働基盤としてサーバーレス環境を選択するケースが増えつつある。グーグル・クラウド・ジャパンが同社のコンテナーやサーバーレスに関する報道関係者向けの勉強会を開催し、ユーザー企業事例としてSOMPOシステムズが「Cloud Run」の活用状況を紹介した。
SOMPOシステムズは、損害保険事業などを手がけるSOMPOグループのIT企業として、グループ各社のIT環境を支えている。SOMPOグループはクラウドを積極的に採用しており、Google CloudやAmazon Web Services(AWS)、Microsoftの「Azure」などのマルチクラウド環境も進んでいる。
今回同社が紹介したのは、組織横断型のナレッジ共有システム「教えて! SOPMO」におけるCloud Runの利用だ。Cloud Runは、コンテナー型アプリケーション向けのフルマネージドのサーバーレス実行環境サービスとして、2019年に発表された。
教えて! SOPMOのシステムは、代理店向け掲示板システムやシステム操作のヘルプ、規定集やマニュアル、商品情報、よくある質問(FAQ)といった各所に分散しているコンテンツを組織横断で検索できる機能を提供している。本店と営業店、営業店と代理店との間で照会ができ、ユーザーが求めるコンテンツを自身で見つける「自己解決サイクル」と、日々寄せられる照会とその回答のデータを基に新規のFAQなどを作成していく「ナレッジサイクル」の2つの特徴を備えている。
損保システム第一本部 副本部長の武井信之氏によると、同システムの構成では、コンピューティング環境に「Google App Engine」(GAE)、データベースに「Cloud SQL」、一部コンポーネントに「Google Compute Engine」を採用する。Google Cloudをベースにしているが、各種要件から代理店向けアプリケーションはAzureで提供し、個人情報のマスキング処理などにAWSを使用するマルチクラウド環境になる。
コンテンツの横断検索処理は3台のGAEで実行している。社内ユーザーがコンテンツ検索のために文字列を入力すると、検索窓でシステムが検索内容の候補をユーザーに提示(サジェスト)する。この部分にCloud Runを使用しているとのことだ。例えば、ユーザーが「自動車保険で中断証明」と入力すると、この文字列をにく関連語句の候補をCloud Runが高速に処理して、ユーザーにサジェストといった具合だ。ここでは、ユーザーにサジェストする語句を自然言語解析しており、上述したナレッジサイクルの一環として、ユーザーが検索に使った文字列のログをバックエンドでバッチ処理し、サジェストの対象とした文字列を日々蓄積している。
武井氏によれば、Cloud Runはサジェスト機能のゲートウェイ部分に当たり、(1)リクエストパラメーターのバリデーションチェック、(2)各種ログの出力、(3)ビジネスロジックとなるサジェスト機能APIの呼び出し――の3つの役割を担う。
上述のように、サジェストの処理はGAEが担っているが、武井氏はここでCloud Runを組み合わせている主な理由として、(1)ユーザーにサジェストを提示する際の遅延を極小にすべくクライアントから直接アクセスできるようにすること、(2)代理店向けにも将来展開する上でファイアウォールによる外部からのアクセスの制御がボトルネックになる懸念があったこと、(3)リクエスト1件当たり数件のサジェストがあり全体では膨大なトランザクションが発生すること――を挙げている。
こうしたことから、GAEだけでサジェストの処理を完結させるのは難しく、軽量な処理に向きコスト面でも優位なCloud Runを活用することにしたという。また、「最近のGoogle Cloudのサービス展開を見ていると、その中心がGAEからCloud Runに移行しており、当社としても処理が軽量な部分でまずは習熟したいと考えた。『Google Kubernetes Engine』(GKE)ほどの機能を必要としない部分なので、GKEよりも敷居が低く学習コストも低いなどの点も判断した」(武井氏)とのことだ。
Cloud Runを使う利点として武井氏は、コンパイルからデプロイまでを実行してくれることや、ドメイン取得を含むウェブサーバー導入が自動化されていることなどの使いやすさに加え、自動的にリソースを拡張するオートスケールが可能な利便性、コンテナーからデプロイできる移行の手軽さなどを挙げている。これらは、サーバーレス環境でよく語られるメリットだとしつつ、利用してみて実感できるものだとした。
今後については、GAEで利用しているアプリケーションを順次Cloud Runへ移行していくことを検討しているという。他方で、同社自身でも技術面の理解や習熟を重ねる必要性を感じているとし、GKEベースでの開発や、マルチリージョン構成を必要とするアプリケーションなどでは「Google Spanner」も組み合わせた活用を検討していきたいとする。
また、SOMPO システムズの内製化の取り組みでは、グーグル・クラウド・ジャパンの「Tech Acceleration Program」(TAP)も活用しているといい、武井氏は、保険契約者が所有する家財の評価額を算出するアプリケーション「かんたん家財評価ツール」の構築において成果が出ていると説明した。