デジタルインテグレーターのスパイスファクトリーがアジャイル開発にこだわる理由
今回は「デジタルインテグレーターのスパイスファクトリーがアジャイル開発にこだわる理由」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、デジタル岡目八目等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
「UI/UX(ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス)が重要になる」と語るのは、企業のDXを全方位から支援する“デジタルインテグレーター”を標ぼうするスパイスファクトリーで代表取締役CEOを務める高木広之介氏。デジタルを駆使したビジネスモデルを創り出す上で、システム利用者の「心地良さ」「使いやすさ」が大事だと説く。従来のシステムインテグレーションのように成果物を作るのではなく、利用者に利便性などの価値を提供するということだ。同社がアジャイル開発にこだわる理由はそこにある。
同社は2016年3月の創業で、デジタルビジネスのアイデア創出やUI/UX設計、ウェブマーケティングなどのコンサルティングからシステム開発までを請け負う。伝統的なウォーターフォール型ではなく、アジャイル型の開発手法を取り入れる。発注時点で仕様をはっきりと決めるのではなく、「(開発)後期になっても要件変更を歓迎」する柔軟さが求められるからだという。
アジャイル開発を可能にするため、同社はデザイン、開発、広告、マーケティングなどの機能を備え、デザイナーとエンジニア、開発進行を管理するディレクターなど100人超を配置する。ユーザー企業が「デザインはこの会社、開発はあの会社」と別々に発注する必要をなくし、あらゆる方向からの要求に応えられるのを特徴にしている。
高木氏は、アジャイル開発について「ウォーターフォール開発とは価値観が全然違う」と説明する。両手法ではマインドや重視することが異なるため、何十年もウォーターフォール開発をやってきたエンジニアがアジャイル開発に参画するのは難しいという。「(これまで)正しいと思っていたことを捨てなければできない」(同氏)からだ。
例えば、プロジェクト会議で上司や声の大きい人だけが発言し、若手は聞くだけで黙っている。これは「アジャイル開発ではやってはいけないこと」だと高木氏は語る。年齢や性別に関係なく、プロジェクトに参加する全員が専門家として互いを尊重し、一致団結して推進するのがアジャイル開発の進め方になる。
システムに求められる要件も異なる。高木氏によれば、アジャイル開発で構築するシステムの多くは、基幹システムのような絶対に止まらないものではなく、売上向上などの成果を出すもので、さらに「心地よさ」などのユーザー体験も重要になる。
こうしたデジタルシステムの構築に正解はない。つまり、作るべきものがはっきりとしないので、ワークショップを開いたりユーザーに聞いたりして、「この機能なら利用者に受け入れられるだろう」「こんな画面にしたら実装数が増えて、コストが高くなる」などとユーザー、デザイナー、開発者が議論しながら詳細を詰めていく。「この機能を作ってくれ」と言われたものを作るのではなく、「どんな機能がベストなのか」を考えるということだ。
そうした仕様の定まらないシステムは、ウォーターフォール開発と相性が悪いと誰にでも分かるだろう。しかし、高木氏は「誤解してはいけないのは、(アジャイル開発が)仕様書を作らず、行き当たりばったりで作業を進めているわけではないこと」だと指摘する。「とりあえずあっちの方に行ってみる」といった無計画なやり方ではなく、例えば、2週間先までの予定を決めて作業を進め、問題があれば軌道修正し、また次の2週間でやるべきことを決めるといった具合だ。
アジャイル型のシステム開発では、発注者と受注者が単なる契約関係ではなく、一体となったチームを編成する。ユーザーは発注者というよりもプロダクトオーナーとして、誰にどう役立つのか、世の中をどう良くするのか、何を大事にするのかなどの目的を明確にする。