AIに早期参加しなければ米国大手と格差–オランダの「AI Coalition」とは
今回は「AIに早期参加しなければ米国大手と格差–オランダの「AI Coalition」とは」についてご紹介します。
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米OpenAIの「ChatGPT」が2022年秋に公開されて以来、世界は一気にAIの時代に突入した。AIは、社会に大きな影響を与えると言われる技術だが、具体像はつかみにくい。AIについて方針や規制を含む戦略立案が各地域で進みつつあるが、2019年に「NL AI Coalition」を立ち上げて動いていたのがオランダだ。
オランダのハーグで、AI Coalitionのマネージャー兼ストラテジストを務めるKees van der Klauw氏が、AI Coalitionの立ち上げの背景や目指すところについて説明した。
「AIのゲームに早期に参加しておかねばならない」――Van der Klauw氏は、こう口火を切る。2019年といえば、ChatGPTが登場する前だ。しかし、処理能力の改善やストレージコストの削減、利用できるデータの増加という3つの組み合わせにより、「20年以上前から、どこかの段階でAIが起爆することは容易に予想できた」(Van der Klauw氏)と、ChatGPTの登場は必然だったと続けた。
現在のAIは指数関数的な成長だからこそ、「やってくる」ことに気が付きにくい。ブームとして起爆した時には遅過ぎる。だからこそVan der Klauw氏は、早期にゲームに参加することが重要だと言う。
この流れに取り残される可能性が高いのは、人的にも経済的にも余裕のない中小企業だ。中小企業は、オランダ経済でも重要な役割を果たしている。「大手ハイテク企業は10年、20年、30年も前から準備をしている。中小企業は、AIが何かを理解していないところも多い。(AIに取り組むに当たって)認知の段階からスタートするところも少なくない」とVan der Klauw氏は指摘し、「このままでは、(AIを活用できる大企業とそれができない中小企業との間に)大きな格差が生まれる」と懸念する。そのような懸念がAI Coalitionの立ち上げを後押ししたそうだ。
AIの土壌もある。オランダには、16世紀に設立されたライデン大学をはじめ世界有数の教育機関があり、工学系も例外ではない。デルフト工科大学、アイントホーフェン工科大学などがあり、AIで人気のプログラミング言語「Python」の生みの親であるGuido van Rossum氏はハーグの出身だ。Van Rossum氏はアムステルダム大学で数学・コンピューター科学を学び、後にオランダ国立情報工学・数学研究所(CWI)に進んだ。Van der Klauw氏自身は、1980年代にデルフト工科大学でAIを学んでいた。
AI Coalitionは、そのような素地の上にオランダ中小企業産業・雇用主連盟、オランダ経済・気候政策省、オランダ応用科学研究機構(TNO)などの機関、Philips、Ahold Delhaize(小売)などの地元企業に加え、IBMなど国外企業も加わり、設立された。
AI Coalitionでは、企業に加えて、政府、研究・学術機関、社会の「4つのらせん」でAIの取り組みを進めていく。中でも最後の社会については、「人を巻き込むことなくして、『人間中心のAI』は実現しない」とVan der Klauw氏。「われわれにとってAIは、経済的なメリットをもたらす技術だけではない。政府のコントロールを可能にする技術でもない。一般の人々にも価値をもたらすAIを追求する」と話す。そのために、関与する人や機関が出会い、議論したり刺激を与えたりする場となるのが、AI Coalitionだという。