「業務ソフト×生成AI」で何が起きるのか–SAP CEOの会見から探る

今回は「「業務ソフト×生成AI」で何が起きるのか–SAP CEOの会見から探る」についてご紹介します。

関連ワード (CIO/経営、松岡功の一言もの申す等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 業務ソフトウェアベンダーが、自社の製品・サービスにジェネレーティブAI(以下、生成AI)を組み込む動きが活発化している。これによって、何が起きるのか。SAPの最高経営責任者(CEO)を務めるChristian Klein(クリスチャン・クライン)氏の来日会見での話から、ユーザーメリット、ベンダーによる市場競争のポイントについて考察したい。

 SAPジャパンは10月2日、Klein氏の来日を機に東京・大手町の同社本社で記者会見を開いた。その内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは業務ソフトウェアと生成AIを組み合わせることによって、ユーザー企業にどんなメリットがあるのか、そして業務ソフトウェアベンダーによる市場競争のポイントについて考えてみたい(写真1)。

 SAPはAIについて、業務ソフトウェアにAIを生かす「SAP Business AI」戦略を2023年5月に発表し、SAP内部での体制整備と共にパートナーエコシステムの構築に注力している。そのパートナーエコシステムにおける日本での動きについては、SAPジャパンが9月19日に記者説明会を開いて最新の状況を説明した。その際、パートナー企業として、日本マイクロソフト、日本IBM、グーグル・クラウド・ジャパン、DataRobot Japanの4社も会見に登壇し、それぞれに具体的な生成AIの連携形態について説明した。

 実はそれを受け、本サイトにおいて結果的に誤報となった筆者の執筆記事があったので、この場を借りて訂正したい。それは、本稿とは別のもう1つの連載「今週の明言」で2023年9月29日掲載の「SAPが独自に生成AIサービスを出すことは今のところ予定にない」と、SAPジャパン幹部の発言を基に執筆した記事のことだ。

 この中で、取材した時点では、既に生成AIを提供しているパートナー企業と競合するようなSAP独自の生成AIサービスを「出すつもりはないか」と会見の質疑応答で聞いたところ、上記のように「予定にない」との回答だったが、実際にはその直後、SAPは新サービス「Joule(ジュール)」を発表した。

 会見の質疑応答で質問されたとしても発表前のサービスについて答える必要はないので、新サービスの動きを察知できなかった筆者の取材不足である。おわび申し上げたい。ただ、もやもやした思いがあったので、Klein氏に「SAPが独自の生成AIを出したことで、SAP Business AIのパートナー企業が提供している生成AIと競合することはないのか」と会見で聞いてみた。すると、同氏は次のように答えた。

 「JouleもSAP Business AIのポートフォリオの1つで、SAPの業務ソフトウェアに組み込んで提供する形になる。パートナー企業とは、JouleのベースにもなるSAPの『ファウンデーショナルデータモデル』とパートナー企業の大規模言語モデル(LLM)を連携させて、両社の業務ソフトウェアで有効活用したり、システムの拡張を図ったりできるようにする。これにより、お客さまから見れば、SAPとノンSAPの組み合わせによるさまざまな分野の高品質なソリューションを利用していただけるようになる。SAP Business AIはこうしたオープンなエコシステムの構築を目指している」

 どうやら、Jouleがパートナー企業の生成AIと競合するのではないかという捉え方にズレがあるようだ。その意味では、JouleはSAPの「業務ソフトウェアの機能強化」と捉えた方が分かりやすいかもしれない。

 さて、つい筆者の「おわびと訂正」が長くなってしまったが、本題の「業務ソフト×生成AI」がもたらすユーザーメリットと、ベンダーによる市場競争のポイントを挙げていこう。

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