編集者の嗅覚を守りたい–戦略子会社トップに聞く、KADOKAWA出版事業のDX

今回は「編集者の嗅覚を守りたい–戦略子会社トップに聞く、KADOKAWA出版事業のDX」についてご紹介します。

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 1945年に出版社として創業したKADOKAWAグループは現在、出版、映像、ゲーム、Webサービス、教育などの事業を展開する総合エンターテインメント企業となっている。50社以上の企業で構成される同グループのDXを推進するのが、KADOKAWAの戦略子会社KADOKAWA Connected(KDX)だ。

 KDXは2019年、KADOKAWAグループ全体のDX推進に向け、KADOKAWAとドワンゴのエンジニアが集結して設立された。2023年4月時点で従業員数は約230人、エンジニアは約8割を占める。2022年度の売上高は57億円で、2020年度から2.5倍以上成長している。

 同社はKADOKAWAのDX戦略アーキテクト局と連携し、最も規模が大きい出版事業からDXを進めている。KADOKAWAグループの出版事業は約700人の従業員を擁し、売上高の55%を占めるという(2023年3月期)。

 KDX 代表取締役社長 最高経営責任者(CEO)の安本洋一氏は、2000~2004年に「週刊ザテレビジョン」の編集長を務めた人物。2013年には電子書籍ストア「BOOK☆WALKER」などを展開する子会社・ブックウォーカーの代表取締役社長に就任し、NTTドコモの雑誌読み放題サービス「dマガジン」の企画・立ち上げに従事した。出版事業を取り巻く環境変化を捉え、変革を主導してきた同氏に、編集業務のデジタル化、返品率と機会ロスの削減、業務変革や事業転換を通して守りたいものを聞いた。

 KADOKAWAグループがDXに乗り出した背景について、安本氏は「現在アニメーションをはじめとした日本のコンテンツは、世界中で消費されている。コンテンツの品質や制作スピードが高ければ高いほど商機は高まるので、われわれはそこに向き合っている」とした上で、「KADOKAWAグループの出版事業では、年間5000点以上のIP(知的財産)を生み出している。テクノロジーを活用してIPの生産効率や品質を上げられたら、絶対的な強みになると思った」と語る。

 例えばKDXは、編集者がコア業務に注力できるよう、ITツールを活用したノンコア業務の効率化に取り組んでいる。マスターデータの登録やJASRACへの権利申請など、編集部のノンコア業務は多岐にわたり、電子書籍の普及に伴い一層増えているという。これまでは各編集者にアシスタントを付ける体制が多く、アシスタントに依頼するノンコア業務の範囲は編集者個人や状況によって異なった。そこで2023年4月、編集部全体のノンコア業務を担う専門部署を設置。属人化していたノンコア業務を標準化し、「サービスメニュー」として提供を開始した。

 その上で、企画から出版までの業務フローを再構築し、データやプロセスのデジタル化を進めている。こうした取り組みにより、人件費が適正化されるほか、編集者一人当たりの年間業務時間が削減される見通しだ。「組織体制の見直しや業務の標準化を行わないと、ITツールの導入は難しい」と安本氏は述べる。

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