日本マイクロソフトが生成AIサービスの利用社数を公開し続ける理由
今回は「日本マイクロソフトが生成AIサービスの利用社数を公開し続ける理由」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、松岡功の「今週の明言」等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本マイクロソフト 代表取締役社長の津坂美樹氏と、Qlik EVP 兼 データ事業本部長のDrew Clarke氏の「明言」を紹介する。
日本マイクロソフトは12月13日、Microsoftが11月中旬に米国で開催した開発者向けイベント「Microsoft Ignite」での発表内容とともに日本での活動を紹介する「Microsoft Ignite Japan」を開催した。津坂氏の冒頭の発言はその基調講演で、同社の企業向け生成AIサービス「Azure OpenAI Service」を利用する企業が2300社以上に達していることを明らかにした。およそ2カ月で4倍と急増し、企業向け生成AI市場で大きく先行していることを強調した形だ。
基調講演の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは冒頭の発言に注目したい。
津坂氏は講演でまず、「デジタルトランスフォーメーション(DX)は今やAIトランスフォーメーションとも言える。特にこの1年、非常に注目された生成AIについて、当社がいち早く提供を始めたAzure OpenAI Serviceは今、ものすごい勢いで普及している」とした上で、冒頭の発言にあるように同サービスの利用社数が日本で2300社以上に達したことを明言し、図1を示しながら次のように話した。
「しかも図に示したように、幅広い業界で日本を代表する企業のお客さまにお使いいただけるようになってきている。Azure OpenAI Serviceの利用社数は9月末の段階で560社以上とお伝えしていたが、それからおよそ2カ月で2300社以上に急増した。当社の生成AIサービスが、お客さまのビジネス変革に活用されている動きがますます加速していることを日々実感している」
ちなみに、「日本で560社以上」という数字は、日本マイクロソフトが10月23日に開いた生成AIサービスに関する記者説明会で、執行役員常務 クラウド&AIソリューション事業本部長の岡嵜禎氏が明らかにした。その会見の内容については、10月24日掲載の記事「マイクロソフト、生成AIの国内導入は560社以上と報告–パートナー新施策も予告」、および会見での岡嵜氏の発言から同社の意図を探った11月2日掲載の本連載記事を参照されたい。
その本連載記事の最後にも記したが、同社が生成AIについてこうした発信に注力するのは、大きく先行している勢いを今後も維持し拡大していきたいからだ。
しかし、ここにきてグローバルでMicrosoftの対抗馬になるであろうGoogleやAmazon Web Services(AWS)が企業向け生成AIサービスについて本格的に取り組むようになってきた。また、本サイトでの筆者のもう一つの連載「一言もの申す」の12月21日掲載記事「『AI Alliance』は生成AIの第三勢力として存在感を発揮できるか」のような新たな動きも出てきた。さらに、国内でもNEC、NTT、富士通などの大手ベンダーがそれぞれ独自の生成AIサービスを提供し始めた。
生成AIは非常に重要で危険な技術なので、ユーザー視点で言えば、多様な選択肢があった方がいいと考える。しかし、市場競争なので、ある程度淘汰(とうた)される可能性はある。とはいえ、日本企業に生成AIが本格的に利用されるのはまさにこれからだ。果たして、Microsoftは先行し続けられるか。今後、利用社数を公開し続けるかどうか、注目したい。