デル、2024年に世界で40年、日本で35年–社長10年目を迎える大塚氏に聞く展望
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大手ITベンダーの一角を成すデル・テクノロジーズは、2024年にグローバルで創業40年、日本進出35年の節目を迎え、代表取締役社長の大塚俊彦氏自身も旧EMCジャパンから通算で日本法人のトップとして10年目を迎える。そんな節目づくしの同氏に、2023年の動向と2024年の展望を聞いた。
–まず2023年を振り返って一番のトピックは何でしょうか。
マルチクラウドとAIの2つですね。従前より5つの重点領域としてマルチクラウド、AI/データ活用、エッジ、セキュリティ、働き方改革/Future of Workを推進していますが、やはり2023年に大きな変化が見られたのが、マルチクラウドとAIだと思います。
言うまでもなく生成AIは、登場から1年で激変し、お客さまの検討や適用がどんどん進んでいます。半年ほど前は「生成AIで何に取り組むべきか分からない」というお客さまが多かったのですが、今はその割合がとても小さくなり、大企業のお客さまでも生成AIのユースケースを蓄積しつつ、並行して生成AIを活用するための仕組みを整備しながら、概念実証(PoC)を行い、どのような効果を出していくのかを真剣に推進しています。生成AIを活用した変革のスピードが本格化した1年でした。2024年はより加速していくだろうと思います。
クラウドの状況は、キーワードで表現すれば「クラウドスマート」であり、この時代をいよいよ迎えていると感じます。われわれは数年前に「クラウドファースト」を提唱し、この間にパブリッククラウドへの移行がかなり進みましたが、一方で、欧米はもっと早い時期にその流れが起き、ここ数年はパブリッククラウドやプライベートクラウドもどう有効活用していくのかという議論に変化し、一部でパブリッククラウドからオンプレミスへの回帰も検討され始めるようになりました。日本でも「クラウドスマート」として、複数のパブリッククラウドやプライベートクラウド、われわれの立場では、これにエッジもコロケーションも含めますが、これらをいかに有効に、適材適所に活用していくのかという流れが生まれ、2024年はこれが大きく加速していくでしょう。
2023年にAIとマルチクラウドの領域でソリューションや製品をかなり拡充しました。AIでは、NVIDIAとのパートナーシップによる「Dell Validated Design for Generative AI with NVIDIA」をリリースし、AI/生成AIの処理に最適化したストレージ、コンサルティングを含むサービスでのAI活用のご支援など包括的なソリューション、サポート、サービスを拡充しています。クラウドでは「Ground-to-Cloud, Cloud-to-Ground(オンプレミスからクラウドへ、クラウドからオンプレミスへ)」のマルチクラウドソリューションを総称して「APEX」に取り組んでおり、ほぼ毎月のように新しいソリューションを提供して、お客さまへの支援を加速させています。
–AIのトレンドは、従前の機械学習/深層学習からの流れもありますが、生成AIが登場したことで顧客のAIの取り組みが本格化したのでしょうか。
以前からの流れと生成AIの登場の両方があると思います。やはり、生成AIの登場がお客さまでのAIの適用や活用を加速させているのは事実でしょう。AIの適用で期待するビジネス変革への効果でも、生産性を劇的に向上させることができる領域が大きく広がりますし、成果や信頼性なども高めたり、顧客接点を変革したりするなど、生成AIがもたらす価値は従来にも増して大きいものだと実感しています。
また、AIの話から企業としてデータの周辺環境の整備や管理をどうしていくべきかという課題も浮上しています。われわれは、例えば、ストレージでのAI対応を強化したり、GPUではお客さまのワークロードに合せたバリエーションとして、2023年12月にAMDのGPU搭載モデルもラインアップしたりしました。AIではパートナーシップが重要になります。NVIDIAやAMD、MetaやHugging Faceなどのほか、日本のAIをリードしている皆さんとも共創を進めているところです。
AIでは、OpenAIなどのサービスをクラウドで利用したり、企業が競争力確保のために社内の重要なデータを利用してプライベートな大規模言語モデル(LLM)を開発したりしていくマルチ、ハイブリッド(なスタイル)がキーワードになります。われわれがエンドユーザーに直接製品やサービスを提供するのはもちろん、AIをサービスとして提供するパートナーの皆さんとご一緒に支援していくパートナーシップが鍵になります。
–他方で、クラウドについては、使いこなすことが当たり前になったのでしょうか。
クラウド活用は、特に大手のお客さまで複数のパブリッククラウドを利用することが当たり前になってきました。また、オンプレミスにあるミッションクリティカルなシステムとクラウドの連携を最適なコストで最大の効果を得られるよう、われわれもマルチクラウドのフレームワークを提案しています。マルチクラウドやオンプレミスのデータ、アプリケーションのやりとりするを最適に行うための技術もさることながら、適材適所で組み合わせて、最大限のビジネスの成果を得ることが重要になります。
コストの最適化は当然のこと、ビジネスのパフォーマンスを最大化する、データの全社的な活用であれば、サイロではなくあらゆる環境全体で活用して収益化につなげる、開発者の生産性もマルチクラウドの最適な環境として市場のニーズへスピーディーに応えられるなど、企業の求めるビジネスの成果はさまざまです。われわれはそれらにお応えすべく、「最適に計画されたマルチクラウド」を定義し、先ほど触れた「クラウドスマート、スマートにクラウドを使う」という時代に差し掛かっていると考えています。