トライアルHDが東証グロース上場–居抜き出店で成長、今後は新築出店加速
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九州地方を中心にスーパーセンターを展開するトライアルホールディングスは3月22日、東証グロース市場への新規上場を発表し、「トライアルホールディングス 東証グロース上場 戦略発表会」を開催した。
「スーパーセンター トライアル」では食料品や衣料品、住居関連商品などの生活必需品を取り扱い、アイテム数は約6~7万点、1店舗当たりの面積は約4000平方メートルに及ぶ。トライアルホールディングスは、店舗オペレーションのコスト削減とサプライチェーンの最適化により、商品を常に低価格で販売する戦略「Every Day Low Price」(EDLP)を実現している。
トライアルホールディングスのEDLP戦略をテクノロジー面で支えるのが、グループ企業のRetail AIだ。同社はセルフレジ機能を搭載した買い物カート「Skip Cart」、人や棚の動きを監視する「リテールAIカメラ」などを開発し、グループ内外に提供している。
トライアルホールディングスは2000年以降、23年連続で増収を実現している。2023年6月期は、売上高が6531億円、前年同期比の成長率が9.7%となっている。1992年に1号店の「ディスカウントストア トライアル南ヶ丘店」を出店し、2000年頃までは米Walmartをベンチマークとして国内におけるスーパーセンターの在り方を模索していたという。同社はITバブル崩壊に伴う居抜き出店を進め、2000年以降急速に成長した。
代表取締役社長の亀田晃一氏は「居抜き出店では、ドミナント出店(一定のエリアに集中的に出店して競合を圧倒する手法)や店舗サイズの標準化ができないので収益性は低かった。ただ投資効率は極めて高く、ここまで上場せずに成長していけた」と説明した。
トライアルホールディングスは2010年頃から新築出店を加速し、現在は全国で311店舗を展開している。主力形態のスーパーセンターに加え、地方都市に約8000平方メートルの「メガセンター トライアル」、都市部・小商圏に約1400平方メートルの「トライアルスマート」、約1000平方メートルまでの「TRIAL GO」を出店している。
同社の強みにはEDLP戦略とそれを支えるリテールテックのほか、一つの店舗で多様な商品を購買できる品ぞろえ「ワンストップショッピング」がある。2023年6月期の売上高構成比は、食品が73%、日用雑貨、家電、ペット用品などの非食品が27%となっている。加えて近年は、プライベートブランド商品の開発にも注力しており、「三元豚ロースカツ重」「ベーコンエッグおにぎり」「自社製おはぎ」などの商品が人気を博しているという。
Retail AI開発のSkip Cartを活用した買い物では、来店客が専用のプリペイドカードで会員情報を登録後、商品のバーコードをスキャンしてカートに入れる。センサーがスキャン漏れを検知するとアラートを発信し、専用の決済ゲートを通過するとレシートが自動で発行される。カート付属のタブレットでは商品の合計金額を表示するほか、顧客の購買情報などを基にクーポンやレコメンド情報を配信する。
Skip Cartの導入実績は208店舗・1万9401台、平均利用率は25.7%で繁盛店のピークタイムでは稼働率が80%を越える。同カートの導入により来店頻度は6.3%向上したといい、取締役の永田洋幸氏は「買い物は義務として行うことが多い中、われわれはスムーズな買い物体験の提供に努めている」と述べた。
1時間当たりの通過客数は、有人レジを100人とすると、セルフレジでは246人、Skip Cartでは419人に上る。「Skip Cartにより店舗と駐車場の回転率が上がる。売り上げが上がらないものを『DX』と呼んでいいのか。やはりトップラインが上がるものがDXである」と永田氏は強調した。
トライアルホールディングスは、約40億円に上る日本の流通小売業のロス「ムダ・ムラ・ムリ」の解消に取り組んでいる。例えばAIカメラで商品の欠品を検知して販売機会ロスを防止したり、売れ行きに応じて価格を自動で変更して廃棄ロスを削減したりしている。
同社は、Skip CartやAIカメラでデータを収集し、データ処理基盤「e3-SMART」、データ分析基盤「MD-Link」でデータを処理・分析している。分析結果をメーカーや卸売企業と共有し、その結果を基に店舗で新たな検証を行うサイクルを採っている。そのほか、自社の販売データと商圏/地図/統計情報を組み合わせた商圏分析ツール「Retail Map」を開発するとともに、全国のトライアル店舗で利用できる決済アプリケーション「SU-PAY」を消費者に提供している。
メーカーや卸売企業など業種を越えた連携を進めてきたトライアルホールディングスは最近、ITベンダーとの協業にも取り組んでいる。1月には、NTTとデジタルツインコンピューティングによるサプライチェーンマネジメント(DTC-SCM)の最適化に向けて連携協定を締結。NECとも顔認証技術の分野で協業し、トライアル店内の決済や施設の入場管理における活用を実証している。
東証グロース市場への上場で調達した資金は、新築出店やIoT機器・システムなどへの投資に活用することを計画している。上場について、亀田氏は「上場は一つの節目。資金面だけで見ると今のオーガニックな成長は続けられる。社内でも議論を重ねたが、上場することでいろいろなビジネスチャンスがあるだろう。お話しした通り、いろいろな取り組みが少しずつ形になってきている段階なので投資の機会も広がっている。今回の上場を契機に、さらに飛躍していきたい」とコメントした。
永田氏は「大きな節目ではあるが、またスタートラインに戻った感覚も正直ある。『トライアル』という名前の通り、いろいろなことに取り組んできたが、上場したことで今までとは別の形で成長していかなければならない。初心に返って、失敗もしながら一歩一歩成長していきたい」と意気込みを述べた。